見出し画像

「流れに従って生きる」ーCホーム編ーACT43:ローコスト住宅の研究

 Cホームでやった多くの仕事のなかで、私にとって役に立ったことは、ローコスト住宅の研究でした。
 

「1棟600万円の借家」や「坪29.8万円の家」が飛び交う岩手県の環境もあり、営業マンからの強い要望で、「ローコスト住宅の商品化」と「ローコストのカラクリ追求」に、随分、時間を使わせていただきました。
 
 
その甲斐あって、本当に1棟600万円くらいの借家を商品化できましたし、坪30万円前半くらいまでの表示価格を実現できました。
 
 
ある程度、価格表示にカラクリも使うのですが、表向きはりっぱなローコスト住宅の完成でした。
 

 ただ、その現場の合理化や、設計のルールなどをまとめる過程で、心配なことも出てきて、上司に次のような相談もしました。

 
「本当に、ローコスト路線で進むんですか・・? 『ローコスト借家』と『ローコスト住宅』を営業マンに売らせたら、二度と坪50万円台のお客様は来なくなりますよ。
1棟あたりの利益額は多くないので、薄利多売で常に数を追いかける家づくりになりますよ。」・・と。
 
 
 

Cホームのおかしな営業成績グラフ


 そのときのCホームの営業成績グラフは不思議でした。

 
社長の方針だったのですが、 『売り上げ金額(契約金額)』 だけで、営業成績の順位を決める方式でした。
 

『契約時の粗利益のグラフ』 の必要性を言ったのですが、聞き入れてもらえず・・、
 
いくら値引きしても、いくら赤字の契約をしても、売り上げ金額の多い営業マンは表彰の対象になるのでした。
 

実際に成績上位の営業マンのほとんどが、スタート粗利率10%を切っている契約が多い状況でした。

  
だんだん営業マンの値引き癖は、暴走し始めていました。


 
 当然といえば当然です。値引きしないでしぶとく交渉している営業マンより、さっさと値引きして赤字でも数多く契約した営業マンがほめられるのですから・・。

そういう現場は、現場施工中のロスなどを考えると、実質最終粗利5%前後であり、設計・工務・営業の人件費を計算すると、実は赤字物件だらけだったのです。

もちろん、現場も荒れます。

 既にそういう『売り上げ金額の競争』に会社が走っている状態だったので、社長と営業マンは、このローコスト住宅の影響を深く考えずに、即決で飛びつきました。



条件無視のローコスト営業で暴走


 
 「借家は3棟で1セットが条件で1棟600万円。外部給排水は別途」・・と言う条件も、
 
体制やパンフレットを作る前に、いけいけどんどん状態で営業マンを走らせる結果となり、
 

アホな営業マンにいたっては「3棟で出来るなら1棟でも出来る!」など意味不明なことを言って、勝手に1棟のみ600万円で契約してくる者まで現れて収拾つかない状態になっていきました。
 

今、考えれば、尻に火がついて会社に余裕がなかったのかもしれません。
 

 その年、Cホームは年間100棟を超えるのは確実な勢いを見せました。
 

 しかし、半分以上は借家です。借家3棟で住宅1棟分の利益しかでないので、100棟とは表面上の話でした。
 

 さらに、人間とは値引き癖がつくと、どこまでも値引くようになり、借家も住宅も勝手に営業マンが値引く 「バナナの叩き売り」状態になっていきました。
 
会社の世間的な評価は良かったようですが、私にはお先真っ暗に感じました。
 


 社長の方針で、会社の目標である社是は創業時から
「5年後に株式上場・持ち株価格が5倍」
ということでした。
 

 
会社の目標(社是)に
「いい家をつくる」
という感じの文言がなかったのです。

 株式上場に会社を救うマジックがあるのか分かりませんでしたが、私には、そんなウルトラCのような経営はできないとだけ強く感じました。


Cホーム卒業の「流れ」が始まる


 
 私が、開発室に配属させられたとき、社長から「年間100棟を超えるようにしてくれ」と言われたので、結果的には約束は果たしました。


そのため、そろそろ潮時かな・・と思い始めることになっていくのです。

 
そんなタイミングで・・
私のまわりに、次の不思議な「流れ」が徐々に巻き起こり始めるのです。





事実は小説よりも奇なり。


お天道様は見ています。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?