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「人的資本経営」とは「人に投資される企業になる」ということ

「人的資本経営」の文脈で、これからは人材をコスト(資源)としてではなく、投資対象としてとらえて「人に投資する」ことが大事だと言われます。
自分はこの表現にとこか違和感を感じていました。
それが大学院の授業で、「資本とは何か」を改めて学び、考えるうちにこの自分の違和感がどこから来ているものなのか、少し見えてきました。

いまさらのように「人に投資する」と言われますが、「人への投資」なんてずっと以前から企業は取り組んできたことだと思うのです。
例えば、それが一律的な教育プログラムの実施であったとしても、人に投資してきたのは事実です。ただ、ただ、少し見方を変えてみれば、それは「投資」とは言えなくなる、ということじゃないでしょうか。

そもそも、企業は社員に能力、スキルを高めてもらうことを通じて、事業を成功させ成長させていきます。テクノロジーや資源の調達と同じような視点でなされてきたように思います。ここでのキーワードは「調達」です。事業に必要な資源を調達する。調達行為は企業の生産活動に欠かせない行為ですし、原材料を完成品にするために加工するのと同じく、「人」にも必要なスキルや能力を身に着けさせるのは当然必要な活動でしょう。
「これを人的資本経営だ」と考えているとしたら、いままでと何も変わらないのに、いまさらなぜ「人的資本経営が重要だ」なんて言われなきゃいかんだ?、と疑問が湧くのも無理はありません。

そこでちょっと視点を変えてみてみましょう。
スキルや能力、もっと言うと仕事に臨むスタンスなども、一人ひとりの社員(人)に宿っています。こうした「人的資本」を拠出、つまり企業に出資してくれている存在が社員であるというとらえ方をしてみてはどうでしょうか?
企業は、社員に、その社員が持っている「資本」を提供してもらっているのであって、「人的資本」の所有者ではない。
株式を通じて出資してくれている株主と同じ立ち位置に立っているととらえると、「人的資本経営」のとらえ方が変わってきます。

株主と同じように「人的資本」を提供する存在が「社員」であるならば、株主に引き続き出資を継続してもらうのと同様に、社員にも引き続き会社の仕事を担うことを約束してもらう必要があります。
株主にも個人株主から機関投資家まで様々な株主がいます。その株主が出資を継続するか出資を引き揚げる(売却する)か、その理由は様々でしょう(多様性)。同様に、社員が引き続きその会社に貢献するために「自分という資本」の提供継続を意思決定する、つまりは会社や組織を選択する理由や動機は一律ではないと考えます。
だから、会社は個を大切にし、多様な個という視点で接する必要が出てくる。

この視点の切り替えがなければ、いつまでも「人的資源経営」が続きます。
社員は「自らの人的資本」を会社に出資してくれている出資者であるというとらえ方をすることで初めて「人的資本経営」が実現していくと思うのです。

出資先として魅力的な企業、組織であり続けること

これが「人的資本経営」の根幹をなすものだと思うと、私は「人に投資する」というよりは、「人に投資される組織になる」(※ここでの人は社員を主に指します)ということが「人的資本経営」の最重要な課題だと思えてならないのです。

さて、「人に投資される組織になる」ためにはどのようなアクションが必要になるのでしょうか。そこも引き続き考えていきたいと思います。


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