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人的資源経営と人的資産経営に人的資本経営

『人的資源経営、人的資産経営、人的資本経営』
この3つの間の関係や相違点について、皆さんはどのようにお考えでしょうか?

人的資源経営は「ヒト」を資源としてみている、P/L上の費用として把握している考え方。なので、フローで調達して使い切ってしまったら、もう在庫はありません。再び調達しなければならなくなります。
人手が余っている状況ならいざ知らず、少子高齢化が進む日本においては、使い切っておしまいとするような人材マネジメントは最早通用しない時代であることは明らかでしょう。

次に、人的資産経営です。こちらは「ヒト」を資産としてみているので、B/Sで捉える考え方で人的資本経営とも近いと言ってもいいかもしれません。しかし、私は人的資本経営と人的資産経営は異なるものだと捉えています。
「ヒト」を資産として捉えるならば、それはB/S上の資産と見ようということだと思います。そして、そのように捉えるならば、負債・資本の部側にも計上されるものがなければB/Sは成立しませんよね?

となると、この人的資産の元手となる資本は誰が提供しているのか?ということを考えたくなります。私は、この自己資本の出資者は誰かというと、社員の皆さんに他ならないと考えています。つまり、人的資本の持ち主は、社員であって、会社ではない、という認識です。

ところで、資本には「配当」と株価上昇によるキャピタルゲインが期待されます。ということは、会社は人的資本の出し手である社員に対して「配当」しなければなりませんが、その「配当」とは何を還元することで実現するのかを問われるという考え方も出来ます。
そのように考えていくと人的資本経営には、自己資本の出し手である社員が引き続きその自らの資本(自分)を会社に出資することを決定する理由が存在している必要が出てきます。私はそれがエンゲージメントが必要な理由なのだと最近考えています。このような視点からエンゲージメントを意識して経営することが必要なのだとも私は考えています。
その上で、貸借対照表の左側の資産形成が成り立っていくのだと思います。この資産と資本を結びつけるものとして、社員と会社(組織)エンゲージメントが重要な理由があると考えます。この自己資本の出し手がもしもその資本を引き上げたら、、、そうです、人的資産経営も成り立ちません。

さらにもう一つ。この資本と資産を結ぶエンゲージメントは互いに選び選ばれる関係であるということも強調したいところです。人的資本経営においては、従来のような従属させるかのような帰属意識を強制しているようでは長期的に互いにコミットしているエンゲージメント関係は続かなくなります。
帰属意識に変えて最近は「ビロンギング」という言葉も使われ始めています。互いに選ぶからこそのエンゲージメントで、社員はそのときに「ビロンギング」を感じているはず。ビロンギングは社員が感じるものであって、会社が強制できるものではありません。社員の主体的な、自律的な選択の結果、ビロンギングの感情が生まれてくる。ビロンギングは社員が自律的に考え、主体的に選択し行動することで生まれてくる感情とも考えると、ますます人的資本の出資者である社員の視点から人的資本経営を捉え直してみることが重要になってくるのではないでしょうか。

さて、資本の提供者への「配当」についてです。「配当」の具体的な形を考えるとき、人的資本の出資者である社員が働く「場」としてある組織を選択する理由は何か?を考えてみるとよいのかもしれません。そこに、会社や組織が人的資本家である社員に対する「配当」の具体的な形のヒントがあるはずです。そのヒントもまたエンゲージメントサーベイの分析から得られるのではないかと考えます。

ところで、人的資本経営というのは米国のような社会システムとしてジョブ型の雇用関係が成立している国々でも必要な考え方なのでしょうか。
私は米国の労働市場については全く知見がありませんが、社会そのものがジョブ型で動いている場合、人的資本の出し手は他人資本(負債)としても調達可能なんでしょうか?そうなるとここにはまた別のメカニズムが必要なのかもしれません。

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