映画鑑賞#3『オッペンハイマー』
Day:2024/5/3
Theatre:OSシネマズミント神戸
GW真っ只中の5月3日、オッペンハイマー、観てきました。
公開日が3月末でもう終わりが近かったのか、午前中の一枠しかなくて、まぁなんにしても7割くらい席が埋まっておりました。
原爆を発明した科学者であるオッペンハイマーの伝記映画であること、ほんとうにそれだけの情報だけを持って朝からミント神戸へ。
10:30からとかだったのかな?
終了予定時間が13:30とかになっていたので、
3時間もあるんかーこりゃトイレももちろんやけど、ニコチン入れとかないとしんどいでーーー
ミント神戸9階が映画館で、8階の飲食店フロアに喫煙所があることを知っていたのでチケットを発券してから登ってきたエレベーターに乗って8階へ。
しかし押しても押しても8階のランプが光らない。
ミント神戸、11時からなんです。
映画館だけ先に開いてるというパターン。
つまり朝イチの映画には喫煙所がないんです。
なんたる罠。
オッペンハイマー終わりの8階の喫煙所がぱんぱんだったことは言うまでもありません。
やめましょうタバコ。
ネタバレ含みますー
伝記映画歴代1位記録
さてオッペンハイマー、面白かったです!3時間があっという間。
とはいえ途中睡魔と戦いまくってたんだけど、それは映画の良し悪し関係なく個人的な体調による睡魔でして。
後から調べて知ったことだけど、『オッペンハイマー』は伝記映画として『ボベミアンラプソディ』を超える歴代一位の興行収入を記録しているらしい。
映画ってどーなってんの?サブスクとかめちゃくちゃ普及してるのに、なんでどんどんどんどん興行収入更新していくのかしら。
音楽の売り上げ枚数なんていつから更新されてないのか。
アメリカ及び世界各国では2023年の夏に公開されたらしく、日本では原爆を落とされた8月に公開するのはあまりにもアレなので半年遅れの公開となった、ということらしい。
まず世界的に原爆に対してQueen以上に関心を持っていることに驚き。
日本は残念ながら世界で1番原爆に関心のある国だと思うんだけど、世界中の人もちゃんと関心を持っているのね。形はどうあれ。
それを言えばQueenに異常に関心があるのも日本だけど。笑
それでまぁ、観終わって思ったことは説明通りこの映画は戦争映画でも原爆映画でもなくオッペンハイマーという物理学者の伝記映画である、ということ。
その上で僕は面白かった。
観終わってレビューを覗いてみると、とにかく「原爆の惨劇」についてちゃんと描かれていない!!!という意見が多かった。
もしもこれが原爆のドキュメンタリーなら、それは至極真っ当な意見で、世界中にリアルな惨劇を伝えるべきだとは思うけど、
これはオッペンハイマーのドキュメンタリーなんです。
オッペンハイマーはリアルには知らないんです、広島と長崎の惨劇を。
それでも罪悪感と苦しみは描かれていたし、同じ過ちを繰り返してはならない、と水爆実験を止める姿勢を描かれていたし。
僕らとは頭の出来が違いすぎる天才物理学者の人生を観る、という点で十分満足感のある映画だった。
そもそも僕に「愛国心」とか「日本人としての自覚」みたいなものが無さすぎるのもあるんです。
原爆を作って落としたのは人間で、落とされたのも人間、って考え方の人間なので。
飛びまくる時間軸と
白黒とカラー
『オッペンハイマー』は大きく2つの時間軸を行ったり来たりして展開されていく。
戦時中、オッペンハイマーがマンハッタン計画の原爆プロジェクトの責任者として開発実験に勤しむパート。
と
戦後、水爆反対派として政治活動するもソ連のスパイの疑いをかけられ尋問されるパート。
大きくはこの2つに分けられるわけだけど、戦時中は戦時中で、戦後は戦後で時間が飛びまくり、もっと前の戦前のイギリス留学時代からドイツ留学時代もあったりで、それも順不同で飛びまくるのでなかなか理解するのが難しい。
19○○年 New York
みたいなのその都度表示されるタイプの映画ならなんとかついていけるんだけど、それもなくて、かなり難しかった。結構後から復習して理解したことが多い感じ。
さらにその中で白黒で描かれるパートとカラーで描かれるパートがあって、それも戦時中が白黒で戦後がカラーってわけでもなくて。
最初はその逆で、戦時中がカラーで戦後が白黒で変わった演出やなー、と思ってたんだけど、途中からそういう単純な理屈でもないらしいことがわかってきたり。
後から解説を読むと、「原爆についてのセクションがカラー」で「水爆についてのセクションが白黒」ってことのよう。
戦時中戦後で分かれてる、って読みは惜しかったんだけど、そういうことらしい。
それを踏まえてもう一回観たいところ。
ロバートダウニーJrと
マットデイモン
悪役、というかドキュメンタリーだから悪役もクソもないんだけど、オッペンハイマーと敵対する存在としてストローズという男が出てくるんだけど。
ストローズは戦後のアメリカ原子力委員会の委員長で、水爆を巡ってオッペンハイマーと敵対するんだけど、そのストローズ役がアイアンマンのロバートダウニーJrで。
最初どっかで見たことある顔やなーと思ってたのが途中で気づいてびっくり。
あれってもちろん老けメイクしてるんですよね??あんなジジイになってんのかロバートダウニーJr、ってびっくりしすぎて途中映画の内容入ってこんくなったんやけど。
あとマンハッタン計画の指揮をとった将校の役がマット・デイモンだったり、知ってる顔が出てきたのは嬉しかったですね。オーシャンズ11くらいしか観たことないけど。
この将校がいい役なんです。
しかしストローズは嫌なやつで情け無いやつでしたねー。
映画冒頭は戦後、オッペンハイマーがストローズの手引きでプリストン研究所の所長に就任するところから始まります。
そこにはアインシュタインがいて、オッペンハイマーとアインシュタインは池の畔で一言二言言葉を交わします。
この会話の内容は最後に明らかになるんだけど、その直後アインシュタインはすごい剣幕でストローズを無視して去っていくわけです。
この小さな出来事によって、オッペンハイマーがアインシュタインに何か俺について悪いことを吹き込んだんじゃないか、という勘違いを生むことになるんです。
これは史実なんですかね、ストローズは実際にそういう証言をしたんでしょうか。
なんにしてもこのしょうもない勘違いからオッペンハイマーとストローズの因縁は始まり、水爆反対派と水爆推進派に分かれて争っていくわけで。
オッペンハイマーには理念があるんです、自分が開発した原爆であんなことになったんだから水爆の開発を絶対止めないといけない、という。
ストローズは、
オッペンハイマーむかつく!お前に罪悪感なんてないやろ!やのに水爆反対するってことはソ連のスパイやな!!尋問尋問!追放追放!
ってな感じで。
ロバートダウニーJr好きなので、複雑でございました。笑
恐ろしすぎるトリニティ実験
ちょっと衝撃でしたねトリニティ実験。
1945年7月、ニューメキシコで行なわれた核爆弾の実験で、これに成功して翌月に日本に2発落とすことになる。
映画は冒頭から結構爆発音とかドンドンなってて、その度にビクついていたもんだから、トリニティ実験はめっちゃ緊張感ある前振りもあって、すんごい爆発音に備えてたんです。
そしたらここで無音演出。白い閃光と無音。やられましたねー。
まぁそれはいいとして、衝撃だったのは、
「核爆弾を爆発させた結果として大気に引火して地球が破壊される可能性」がわずかながらあるかもしれない、とオッペンハイマーが危惧していたこと。
嘘やろ、とんでもないことやるやん。映画によると最後までその可能性を排除できないまま実験を行なっていたわけで。
マンハッタン計画がいかに強行突破だったのか、そうまでしてやる必要があったのか。
オッペンハイマーはトリニティ実験に成功した結果、
「こんな危ないもの撃てるわけがない」
という判断がアメリカと世界から起こると考えていたようで。
つまりはトリニティ実験で終わりだと。ソ連もどこの国も核実験から手を引いて、戦争が終わると。
でもそれでも撃つのが人間で、さらにその1000倍の威力といわれる水爆まで生み出すのが人間なんだけど。
作った科学者より使った政治家に罪がある、というようなことは劇中でも言われていたが、ほんとうにそう思う。
なんだろう、ほんとうに知識と更なる発明を追い求めて、世界のことなんて知らない、誰がどう使うかなんて知らない、それより実験だ!
みたいな科学者根性みたいな感じでは全くなくて、マッドサイエンシストみたいな感じでもなくて。
ただ才能ある科学者が国から仕事の指示を受け、それで戦争が終わるならと作って、まさか落とすなんて思わなくて、みたいな。
アインシュタインの言葉
なんかやっぱりアインシュタインって特別ですね。映画を作る側も特別視してるからだろうけど、僕もやっぱり特別視していて、彼の言葉はめちゃくちゃパワーが強いんです。少ない台詞ですけど。
オッペンハイマーは原爆の父と呼ばれるけど、元を正せばアインシュタインの特殊相対性理論が原爆を導いたと言われていて。
アインシュタインは量子論を「神はサイコロを振らない」と嫌っていたしマンハッタン計画にも参加してないんだけど。
それでもアインシュタインの発見が量子力学の一端を担ってたり、マンハッタン計画に繋がってたりするわけで。E=mc2が全ての始まりだとか。
オッペンハイマーとアインシュタインの池の畔での会話が、この映画のオチになるんでしょうか。
考えさせられる会話でしたけど、僕にはオッペンハイマーがアインシュタインを共犯者にしたように思いましたね。
トリニティ実験の前にオッペンハイマーはアインシュタインに「大気に引火して世界を破壊する可能性」について不安になり尋ねていて。
結果的にトリニティ実験は無事?成功に終わって、危惧していたようなことにはならなかったわけだけど、
日本に2発放って、戦争は終わったけどソ連は核実験を辞めず冷戦状態に入り、
今度は互いに水爆というさらなる兵器の開発に着手しはじめているわけで。
この現状に形は違えど
「世界を破壊してしまった」
とオッペンハイマーは嘆くわけで。
そんな天才科学者の罪悪感と苦悩を分かち合えるのがアインシュタインだったわけで、
それが映画冒頭1947年プリストン研究所の池の畔でのオッペンハイマーとアインシュタインの立ち話になるわけで、これが映画のオチになるわけです。
アインシュタインは
「賞賛は自分のためじゃなくみんなのためのもの、それはそれで置いておいて、罪悪感とは付き合っていけばいい。」
と諭します。
それに対してオッペンハイマーは
トリニティ前に「大気に引火して世界を破壊する可能性」を尋ねたことを引き合いに出して、
「結果的に我々は世界を破壊してしまった」
と言い放つわけです。
え、「我々」なん。と思いました。
もちろんアインシュタインはアインシュタインで自分の罪悪感と生涯付き合っていくわけだけど、めっちゃ共犯者にしようとするやんオッペンハイマー。あん時お前が止めへんから、みたいな?
そりゃあんな険しい暗い顔でストローズ無視して歩いていくわな。
ほんでそれがストローズの勘違いを生んで因縁へと繋がっていくわけで。
可哀想だったんですアインシュタイン。
オッペンハイマーの名誉挽回ドキュメンタリー
オッペンハイマーは原爆の開発に成功して、戦争を終わらした男としてアメリカで英雄的扱いを受けます。
しかし戦後罪悪感から水爆実験反対派として活動するも、ソ連のスパイ容疑をかけられて1954年に公職追放されます。
映画でも出てきますが、弟夫婦が共産党員だったり、親友が共産党員だったりしたことをつつかれての追放。
ただ本当にスパイだと思ってる人はいなかったみたいで、ただ単に水爆反対派として邪魔だった、みたいなことなんでしょう。
終戦後すぐにトルーマン大統領に招かれた際に、罪悪感について述べて、
トルーマンが「あの弱虫を2度とここに入れるな」と言い放ったシーンも印象的でした。
アメリカとしてはオッペンハイマーが罪悪感を感じ贖罪しようとする姿勢が邪魔でしかなかった、ということです。
オッペンハイマー67年に死亡。
2022年に米エネルギー省のグランホルム長官が、1954年のオッペンハイマー公職追放処分は「偏見に基づく不公正な手続きであった」として取り消しを発表。
ほんで2023年にこの映画が公開。
アメリカで歴史的に教科書的にどんな扱いだったんですかね。本当にスパイだったと信じられてたんでしょうか?
よくわからんけど、この映画はとにかくオッペンハイマーの名誉挽回ドキュメンタリーだった、というわけです。
原作とされている本は2005年刊行なので、少なくともオッペンハイマー悪くないやろ、っていう考えはもっと前からあったのは確か。
というか追放の54年当時ですら、そんなことは暗黙の了解でみんなわかっていたことなのかも。
まぁなんにせよ天才物理学者の人生として、興味深く面白い映画でございました。
「原爆を落とされたこと」とか「戦争について」はまたそれはそれで勉強したり考えたりしないといけないなーとは思いますが、
この映画はオッペンハイマーという1人の男の伝記です。
それを踏まえて興味のある方はぜひ!オススメですーーー
※あとオッペンハイマーの女癖の悪さ、みたいなんもかなり描かれてましたけど、その辺は個人的にはどーでもよかったです。映画てセックスシーンないと成り立たんのかいな、って思いますね。まぁでもドキュメンタリーだからその辺も忠実に、てとこでしょうか。
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