小説【ツイン・プログラミング】その7「ニコの学業成績」
登場人物紹介
・沢渡ニコ:実は算数や数学、英語が苦手で、国語や社会が得意。一方でプログラミングは大好きで自分で開発したいという意欲がある。
・沢渡キラ:姉のニコと違って全分野の成績が良好。しかし体育や図工が苦手で、その点で姉のことをむしろ尊敬している面も。
わたしたちはいつも2人揃って学校へ行く。
お隣のおばさんが、挨拶してくる。
「おはよう、ニコちゃん、キラちゃん。今日もお揃いのピンクのおリボンつけて、可愛くてよく似合ってるわよ」
「おばさんおはよう。わたしたち同じ見た目だから同じリボンでも髪型は変えないと、と思って違うふうにしてるんだけどね」
そういうわたしはポニーテール、隣のキラは耳の上まで上げたツーサイドアップ。学校でも結構評判が良かったので、長い間この髪にしている。
「けれど、中学にあがったらこんなツインテールのような髪型はちょっと子供っぽいから変えるかもしれないですけれど」
キラがおばさんに言った。初耳だ、そんなこと考えていたなんて知らなかった。わたしはキラに言った。
「なんで、キラ? その髪型よく似合ってるよ。しばらくそのままでいようよ」
「わたしもイメージチェンジしてみたいんです」
「ほらほら、2人とも、こんなところで会議していると学校に遅れちゃうよ」
おばさんにうながされて、学校に二人で向かう。
生まれた時から12年間、2人は同じ環境に育った。
もちろんちょっとした個性や違いはあるけれど。髪型以外にも。
例えば、学校の成績。
わたしは実は算数や理科や英語が苦手なのだ。いつも通知表で「もう少し」か「がんばろう」のハンコを押されてしまう。
それにひきかえ、キラは、ほとんどの科目で「よくできる」という評価をもらう。体育と図工は例外だけど。
学校のみんなにもよく言われる。顔が同じなのに対照的な部分があるために「すぐどっちがどっちかわかるよ」って。
でもそれは多分ウソ。髪を解いたら両親だってどちらか見分けがつかないのに。着ている服でも、わたしの方がゴクサイシキの明るい色でキラの方はライムグリーンやペパーミントブルーのような落ち着いた色が多いから、それで判別することが多いだけだ。
まあそんなことはどうでもいいのだけれど、どっちがどっちかわからなくてみんなを混乱させるよりマシだろう。
でも学業成績でも正反対だったりする。わたしは跳び箱8段は軽く飛べるけれど、キラは4段すら危うい。100メートル走のタイムだって相当わたしの方が速い。図工だって先生の言われたものを作るのも何のその、キラはいつも手間取ってしまう。
でもその反対に、お勉強はキラの方が上。算数の平均の意味がわかったのは6年生になってからだし、今やっている図形の面積と体積の求めかただってさっぱりわからない。英単語だって覚えるのは苦手だし、理科も暗記中心で何も頭に入らないことが多い。
そんなわたしたちだけど、プログラミングを自分流に作る資格はあるよね。
だって、それならお互い足りない部分をおぎない合えばいいんだから!
そう思って、今はキラのサーバー構築ができるのを待ちながら、自分でも得意分野を伸ばそうとしている。
でも、せめて。
プログラミングをやるなら、算数くらいは得意になった方がいいかな……
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