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昨今話題のカスタマーサクセス生産性とどう向き合うか

本noteはCS HACK Advent Calendar 2023および株式会社IVRy 紅組 Advent Calendar 2023へダブルエントリーしています。
現在株式会社IVRyでは紅白に分かれてAdvent CalendarのPV数を競い合っています。株式会社IVry 白組 Advent Calendar 2023もぜひご覧ください。


はじめに

こんにちは。IVRyでカスタマーサクセス(以下、サクセス)の立ち上げを行っている山田と申します。なんだかんだでサクセス歴は6年程に突入し、改めてサクセスの奥ゆかしさを感じながらカオスな毎日を奔走しています。
僕のプロフィール詳細は以下の記事をご覧ください。

さて、サクセスが日本でも広く浸透したことで、具体的な手法に特化した議論に加えて近年はサクセスへの投資目安についての議論も増えてきたと感じています。

サクセス活動は直接的な投資対効果が見えにくいという前提はあるものの、SaaS各社が当たり前のようにサクセス活動を行うようになったからこそ、その投資に対する一定の評価基準が必要になってきたのだと考えています。

僕は今まさにIVRyでサクセス組織の立ち上げを行っていますが、達成すべきKGIをNRRと置いた時にどのような組織構造や人員配置で臨むのか中長期の構想を練っていて、そもそもなぜ生産性と向き合うのか/中長期構想の実現手段はどうすべきかという問いに直面しています。

そういった背景から筆を執っているため、本noteを読むと「生産性の高いサクセス組織を目指すぞ!」という気持ちがきっと伝播するはずです。

サクセスで良くある会話

以下はスタートアップのサクセス界隈において良く見られるであろう会話の一例です。

代表:「最近採用活動が順調そうですけど、サクセスってどこまで人数増やす予定なんですか?」
CS責任者:「(一人当たりでさばける案件数がOnboardingはxx件、Adoptionはxx件、Renewalやオペレーションはxx件だとすると)ざっと計算して1年後にxx人は必要ですね!」
代表:「それって今の生産性を基準にアグレッシブに積み上げてるんだと思うんですけど、競合や海外事例をベンチマークしたら理想はどうなってるのがいいんですか?」
CS責任者:モゴモゴ
代表:「ついでにその理想をいつまでにどうやって目指すのかも教えて欲しいです!」
CS責任者:ボフゥ(吐血)

もちろん多くの方々はこういった論点に対して常日頃から考えを練っていらっしゃると思うのですが、僕は前職のfreeeで駆け出しサクセスマネージャーだった頃に当時のCOOから爽やかに指摘をされて視座の低さを痛感したことを記憶しています。

一般論として語られるサクセスの生産性

「サクセス一人当たりの保有ARRは1億円を目指せ!」という話をちらほら見かけます。日本でここまでの生産性を実現している実例を僕はあまり聞いたことがありませんが、海外のSaaS企業では一般論としてこの水準が語られているのだと考えています。

分母となるサクセスの人員数をどこまでカウントするかによっても前提は大きく変わってしまいますが、保有ARRが1億円であれば単純計算でサクセスの売上原価率(人件費+α)は10%程度のイメージになるものと想像しています。当然、サクセス組織の平均年収次第でパーセンテージは変動します。

ただしこれはあくまでサクセス組織が理想的な生産性を実現した場合です。一人当たりの保有ARRが5,000万円に半減すればサクセスコストの売上原価率は20%となりますし、保有ARRが2,500万円ともなれば売上原価率は40%まで跳ね上がります。
日本の上場SaaSにおける売上原価率が約30%(SaaS企業の指標ランキング・業界水準データ より引用)と捉えれば、最低限クリアすべきサクセスの生産性も見えてきそうです。


また、仮に自社のARPAが10万円とすれば保有ARR1億円は社数にして1,000社/人、ARPAが1,000万円とすれば社数にして10社/人となります。

担当社数1,000社というのは事業上のターゲット企業がSMB以下のケースが想定されますが、ハイタッチ担当でこの社数は到底さばけるわけがなく、ロー/テックによるスケーラブルな施策担当を配置することでハイタッチの負担を薄めていく必要があります。

一方で社数10社の場合はターゲット企業がMID/エンタープライズ以上となることが想定されますが、ハイタッチ担当がギリギリさばけるかどうかの水準となり、コンテンツやデリバリー体制の共通化といった対応は必要であるもののスケーラブルな施策や顧客対応の型化はあまり求められない組織になっていくことが考えられます。

顧客セグメンテーションとリソース配分整理の例

そもそもなぜサクセスは生産性と向き合うのか

当然のことながらどの組織においても生産性との向き合いは必須です。しかし僕はサクセスという役割だからこそ生産性にはとことん向き合うべきだと考えています。
顧客をサクセスに導くためには当然コストが必要となるわけで、その対価を払っているのはまた顧客です。社としてより少ないコストで顧客のアウトカムを最大化することこそがプロフェッショナルとしてのサクセス意識だと考えています。

また、近年良く語られる「サクセスに営業力は必要か」という問いにも近いことが言えると考えていて、プロダクト開発の原資である対価を追加でいただくための機会をやすやすと見過ごしていては、中長期で捉えた顧客のサクセスに対して責任を果たせていないと考えています。その大事な機会を最も感度高く拾えるポジションにいるのがサクセスです。

一般的に新規獲得よりも生産性が高いと言われる既存獲得も牽引していくことで、最小限のコスト投下で自社のARRを伸長させることができます。スタートアップにおける調達観点はもちろんのこと、プロダクト開発を加速させて顧客の将来的なアウトカムを最速で最大化させる結果に繋がります。

また、KGIとしてのChurnとExpansion両面からNRRを伸ばすことが可能な組織を創ることでサクセスの生産性を更に向上させ、結果として売上原価率(≒アウトカム最大化のためのサクセスコスト)を改善することができます。
サクセスはこの好循環な投資ループを生み出す起点となるべきであると考えています。

そのためThe MODELのファネルで見たマーケ/IS/Salesと同様に、サクセスも一人当たり生産性は当然に語られるべきです。

この意識はCS責任者だけが持てば良いというわけでなく、メンバーの一人一人が常に顧客の将来的なアウトカムを最速で最大化させることを意識していくべきだと考えています。

生産性を上げるために考慮すべきこと

生産性改善の前にまずはサクセスとして効果が高いと思われる施策を1つずつ固め、活動の全体像を定義していくことがスタートです。
効果検証ができていない施策に対して初めからコストをかけて作業の効率化を行ったとて、検証結果としてNO GOの判断が出れば意味がなかったことになります。

生産性改善に着手するまでのおおまかなフローの例
1. 現状の生産性を把握する
2. 目指すべき生産性とKGI、達成時期を定める
3. 顧客セグメントを整理し、それぞれへのリソース投資方針を決める
4. 仮設ベースで施策を展開する
5. 先行指標で施策を細かく振り返り、サクセス活動の全体像を定義していく
6. CS-Opsを立ち上げてオペレーションを磨く(生産性改善)
 - 業務を型化する
 - コンテンツの品質を上げる
 - CJMとタッチポイントの設計を見直す
 - サクセスツールを導入する
 - データを可視化する etc…

おわりに

ここまで偉そうに生産性について語りましたが、僕が所属するIVRyはサクセス組織を立ち上げてまだ5ヶ月も経過していません。生産性にこだわるにはまだまだ早く、今は生産性を犠牲にしてでもNRRを伸ばすべきフェーズです。

目指すべきKGIや生産性を実現するための道のりは絶賛策定中でトライ&エラーの毎日です。そんな刺激的な環境で一緒にサクセス組織を創っていきたい方を募集しています!

少しでも興味があればまずはカジュアルにお話するところから始めましょう!

最後までお読みいただきありがとうございました。

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