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カスタマーサクセス はじめての組織運営 〜年契約と藤の花の香りを添えて〜

こんにちは、山田です。

日常生活に多くの制約をもたらしているコロナ禍において、劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」が歴代最速で興行収入300億円を突破した事に衝撃を受けました。

斯く言う私も感染には配慮しつつ息子と一緒に2度映画館に足を運びました。その後漫画を全巻一気読みしたにも関わらずシーズン2のアニメ放送を楽しみにしています。

今回はそんな世間を賑わせている"鬼滅"をプロダクトに見立てながらカスタマーサクセス(以下、CS)の組織運営の始め方をまとめます。

これからCS組織をつくる方にとって一つのヒントになれば幸いです。

(このnoteはCS HACK Advent Calendar 2020 の記事として書いています。)

【注意】
・ネタバレには配慮しますが保証はいたしません。ただし万が一ネタバレしても鬼滅の面白さは保証いたします。
・鬼滅への愛や理解度を議論するものではなく、CS組織運営の具体的アプローチやプロセスに視点を置いて読んでください。


CSのミッション・ビジョンを決める

まずはミッションの策定が必要ですが、これはどんなプロダクトにおいても共通して "顧客をサクセスに導き、Life Time Valueを最大化すること" だと考えています。

顧客がサクセスしてもLTVが最大化しなければそのプロダクトを継続的に提供していくことはできません。そのためサクセスを前提にした売上成長への貢献はCSに課された重要なミッションと捉えています。
いかに多くの鬼滅コンテンツに触れてもらい(クロスセル促進)、末長く幸せな鬼滅ライフを送ってもらうこと(LT伸長)がミッションです。

ビジョンは3年後を見据えて以下とします。

劇場版「鬼滅の刃」無惨の奇襲編(仮)が興行収入歴代一位を更新し、無惨と共に人々のコロナ禍の煩いを裁ち切る🤺


サクセス状態とスコアを定義する

次に文字通りサクセスしている状態を定義する必要があります。
顧客をどのような状態まで連れていくかを決めるという意味合いです。

大前提としてサクセス顧客の管理を行う上ではあらゆる顧客データを取得できる状態を実現する必要があります。
綺麗に取得できずとも加工さえできる状態にあればなんとかなります。

今回は何らかの鬼滅プラットフォームが存在し、顧客のアクティビティが取得できる前提で話を進めます。
その上で以下の通りサクセスの判定基準を設定します。

サクセスユーザー = 鬼滅に心を燃やしているユーザー🔥

-判定基準-
①なんらかのコンテンツにアクセスしている頻度
②推しキャラクターの存在有無
③お知らせ情報の閲覧率
④コンテンツ網羅率

今回判定基準においた要素にchurn相関があるとすると、これらをうまいこと組み合わせてサクセスレベルを定義します。

ex)
レベル1:なんらかのコンテンツに週に××回アクセスしている
レベル2:お知らせ情報の閲覧率が××%以上
レベル3:コンテンツ網羅率が××%以上
レベル4:推しキャラクターが存在する
レベル5:推しキャラクターが鬼舞辻無惨である
※各条件をand条件で満たしていく事で次のレベルに進む

当然サクセスレベルが上がるにつれてchurn rateが下がっていくべきですので、churn相関を見ながら適切なレベル定義を行う必要があります。
目指すべき状態がないと迷子になってしまいます。最初は仮説ベースでもいいので定義を決めてしまい、走りながら情報を蓄積してブラッシュアップしてく事が重要です。

また判定基準の方法論として、推しキャラクターの判定については「アクセスコンテンツの一定割合以上に関連する特定キャラクターが存在する」等の条件で判定できそうです。

churn確率の高いレベル1〜3を導入や活用フォローの対象、サクセスレベルの高いレベル4以上はMQC(Marketing Qualify Customer)として管理する等、レベル別のアプローチ方針を決めると活動しやすくなります。

note用スライド (2)


契約形態による目標設定の違いを理解する

サクセスが活動するうえでの目標設計はプロダクトプラン体系によっても変わってくると思いますが、ここでは契約期間からくる目標設定の違いについて取り上げます。

月契約であれば毎月のNet Revenue Retention(NRR)をKGIとして、expansion rateとchurn rateに分解した目標管理を行う事が主流だと思います。当然そこからexpansion MRRとchurn MRRへの落とし込み、これら数値目標を達成するための担当者のアクティビティ目標やNPSといった中間KPIへの分解も行います。

年契約や複数年契約といった長期の契約形態となるとLTは自然と伸長していきますが、サクセス活動と結果指標とのタイムラグが大きく出る事になります。

例えば年契約であれば契約から1年間かけてサクセス活動を行なった結果として1年後のNRRが変動します。
組織を運営する上でも3ヶ月や半年といった評価サイクルと期間的なギャップが生じるため、1年後のNRRを評価に反映することは難しくアクティビティや中間KPIで評価指標を設けるしかありません。
加えて1年後のNRRの見立てが立たないケースが多く、数値管理という点で事業運営上の大きな課題となります。


年契約の鬼滅CSをどう運営するか

1年後のNRR目標の達成確度を向上させ、評価サイクルとの期間的ギャップを解消する指標として "期待NRRモデル" を提唱します。サクセスレベルを上げていく活動にフォーカスする中で、その時点で期待される1年後のNRRが可視化される指標です。

期待NRRの変化を見る事でサクセス活動としての短期的なインパクトの可視化や、目標とするNRRに対する進捗度合いを明らかにすることができます。

以下に期待NRRモデルの計算例を示しますが、目標NRRへ近づくためにはどのレベルに滞留しているユーザーへのタッチを行うべきかを明らかにする事ができます。
このケースでいくと導入・活用フォローの対象であるレベル1〜3のうち、レベル2からレベル3へのレベルアップ、及び先ほどMQCとして定義したレベル4,5へのexpansionが大きなインパクトに繋がりそうです。

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レベル2から3への移行はコンテンツの認知度を高める必要がありますので、SNSやPF上で幅広いコンテンツをアピールしていくことになります。
一方MQC層に対してはキャラクター単位のキャンペーンを打つ事で推しによるexpansionを促します。

このような活動の成果として期待NRRが上昇していくのですが、下図のように1年後に125%というNRR目標を立てた場合、そこに到達するための理想的なNRR進捗を定めておく事で現時点での進捗把握が可能です。
理想的なNRRの進捗を定めるにはNRR125%を達成している顧客の情報から平均的な曲線に落とし込む事が良いと考えています。

■目標から大きくビハインドしている例

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また、期待NRRモデルはあくまでも現時点で想定される期待値です。
当然各レベルの想定NRRがブレる事はありますので、その場合はブレた要因がなんだったのかを明らかにしてブレ幅のリスク管理をしていけば良いと考えています。


最後に

いずれにしてもまずは足元でデータ数を増やしていく事が重要になりますので、こういった可視化したい管理指標を見据えながらデータ基盤を整えていく必要があります。

最後になりますが先日行った鬼滅・最終選別の聖地、あしかがフラワーパークの藤の花イルミネーションを載せておきます💐
鬼は香りを嫌がって藤の花の近くには寄り付かないそうですが、コロナの特効薬も早く安定供給が始まる事を願っています。

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それでは皆さま、良いお年を。



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