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森林学の国際修士プログラムEuroforester

マルメのシンボルTurning Torsoを北側から

僕が現在所属しているプログラムはSUFONAMAといいます。これはEU圏内で森林学の研究プログラムを持っている5つの大学(ゲッティンゲン、コペンハーゲン、パドヴァ、バンゴール、スウェーデン農科)が連合して提供しているプログラム。1年目はゲッティンゲン、コペンハーゲン、パドヴァ大学のどれか、2年目は1年目以外の4つの大学のどれかに在学することが義務付けられています。SUFONAMAは1学年あたり15名前後の定員。それが各大学に分散して所属することになるため、それぞれの大学ではSUFONAMA用のプログラムが用意されているわけではなくて、それぞれの大学が単独で提供している修士プログラムに2学期間参加する(間借り?)形になります。

※著者注:これは昔の情報でした。2024年現在では、1年目は全員コペンハーゲン大学、2年目は他の4つの大学のどれか、になっているようです。
https://sufonama-em.eu/programme-structure/

ただ、これは決して特別なことではなくて、日本でもよくあるように交換留学で1学期・2学期だけ別の大学で学ぶ形。ただし、交換留学だと元の所属大学が当然あるのですが、SUFONAMAの場合は、SUFONAMAのプログラムに所属するという形になり、特定の1つの大学にすべての学生が所属するということにはなりません。プログラムの説明をするときに、この点がとてもややこしい。

さて、スウェーデンのSLUで僕が単位を取得するために取っている授業は、EuroforesterというSLU Alnarpが独自で企画運営しているプログラムが提供しているものです。このプログラムの特徴は、バルト海沿岸およびロシアからの学生が多い(具体的には、ロシア・エストニア・ラトビア・リトアニア・ウクライナ・ポーランド出身の学生)ということ。純粋にEuroforesterに所属している学生は9割方これらの国からの学生。それ以外に交換留学で来ている学生も10名ぐらいいます。アメリカ、ドイツ、フィンランド等々。そこに、私含め、SUFONAMAからの3名も入っています。

これまで東欧・ロシアの友人はごく少数だったのですが、急に厚みができました。将来に向けて楽しみです。ほとんどの学生が流暢な英語を話すことに驚きました。後、ロシア語を話せる学生も多い。ドイツにいたときには、英語に次ぐ外国語はスペイン語だったのですが。

野外演習の一コマ

授業内容の詳細については別途、記事を書きますが、日本やドイツとシラバスの構成そのものが全く異なります。私はこの学期で30単位を取得する必要があり、そのために2つのモジュールと呼ばれる授業を取ります。スウェーデンでは、それぞれのモジュールが一か月半で集中して教えられる形になっていて、例えば月曜日は経済学、火曜日は遺伝学と政治学、水曜日は授業が3つ・・・といった構成にはなってません。月曜日から金曜日まで毎日該当するモジュールの講義や演習に振り当てられています。聞くところによるとイタリアの大学院(Padova大学の大学院)も同じ構成なのだそう。

さらに、課題が結構な分量あります。例えば今週は、2つの短いレポートの提出が義務付けられていて、さらに月曜日までには二人一組で10枚程度の長文レポートの提出が要求されています。来週はその内容のプレゼンと質疑応答もあります。そういった課題の間を縫って、通常の授業が組まれています。前回紹介したIKEAのように、外部の講師のレクチャーも時々あります。

学生と先生たちとの距離がとても近い環境にあり、先生方もあれこれとサポートをしてくれるのでついていけないことはないのですが、なかなか大変。さらに合間を縫って、博士課程への進学の準備と修士論文の構成を考えるという仕事もあります。

当地もすっかり秋の様相。下の写真は雨降りの翌朝の通学路。


オリジナル記事公開日:2012年9月30日


追記(2024年5月):何がつらいといえば、Euroforesterのプログラムに参加して仲良くなった友人たちが紛争の両側に分かれてしまったこと。バルト三国の友人たちは当時からロシアに対して複雑な思いを持っていることは薄々感じてましたが、まさか、ウクライナにロシアが侵攻するとは。その後、ゲッティンゲンに博士課程で戻ってから知り合ったロシア人の友人はとても優秀な女性だったけど、その段階(2013年)ですでに母国であるロシアに見切りをつけてドイツで暮らすとはっきり言ってたけど、その予兆はだいぶ前からあったということでしょう。気候変動問題と世界中で同時多発的に発生している紛争の事実からは(この2つは連動しているともいえますが)、完全に別の世の中になってしまった感じです。

追記2(2024年5月):本記事の公開後、気になって学費を調べてみました。私の当時はEU圏外の学生は年間8000ユーロだったように記憶してますが、今は年間15000ユーロに値上げされてました。円の価値も5割ぐらい安くなっちゃってますから、以前よりも自費留学のハードルは上がってしまってます。とはいえ、米国留学と比べればまだまだお得(?)かも。ちなみにEU圏内の学生は学費タダです。
https://sufonama-em.eu/application/tuition-fees-and-scholarships/

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