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うんちくオジサンとして生活し続けるために、データベースを整備している話。あと、触れてはならないあの界隈について。

うんちくオジサンとして生計を立てている。


雑多な本を読み、一生使わない謎の知識を大量に蓄え、それを喋ったり書いたりする。普通の人なら明らかに趣味でしかないこの営みを、僕は仕事にした。好きだったからだ。

好きなものを仕事にすることの弊害はよく叫ばれる。「アニメが好きだからアニメーターになったのに、激務で身体を壊してアニメが見られなくなった」みたいな話を聞くことは珍しくない。好きなものを仕事にした結果、好きなものがひとつ失われる。そういうことは往々にしてある。

僕はといえば、幸いにしてまだ好きなものが好きなままだ。一生このまま走り抜けられるんじゃないかと思う。うんちくをインプットするのもアウトプットするのも好きで、うんちくオジサンは僕の天職だと思う。


一方、仕事にしてしまった弊害もある。出すうんちくが枯渇していることだ。インプットよりもアウトプットの方が早くなってしまうと、「これ以上出すものがない」という問題に直面する。

あまり売れていなかった時期は、アウトプットをそれほど求められなかったから、問題は生じなかった。だけど、なまじそこそこ売れっ子になってしまった昨今、喋るうんちくは完全に枯渇している。そもそも僕は平均して週に4本の動画に出演し、週に2本原稿を書き、週に1回イベントに出演している。その他インタビュー取材やゲスト出演などもやるので、完全にアウトプット過多だ。どこかで使ったような話を使い回すことも増えた。

更に深刻なのは、技術の向上である。妙に喋る技術が向上してしまったため、喋ることが少なくなっているという問題を小手先で何とかカバーできてしまう。内容と技術はキレイな逆相関を描くだろう。

一見、技術の向上によってカバーできているのなら悪くないようにも思えるが、これは良くない。小手先の技術だけでなんとか凌いでいるクリエイターはダサい。きちんと本質的に新しいものを作らなければいけない。

そういうことで、最近の僕は多少ムリしてでも読書時間を確保することにした。以前はあれほどまでにこだわっていた即レスの手を緩めて、無限に舞い込んでくるメッセージを無視して、集中して本を読む時間を確保することにした。


うんちくデータベースの整備

しかし、それだけでは足りない。同時進行で、「過去に読んだ本のメモ」も整理したい。書き散らした読書メモは人に話せる形に整理されていないから、ちゃんと整理して、いつでも話せる形にするべきだ。

そういえば先日、僕らがやっている「ゆるコンピュータ科学ラジオ」で、情報の整理について扱った。「コンピュータ科学が教える最強の情報整理術」なんてサムネをふざけて作った。

この回のテーマは「データベース」だ。基礎的なデータベース設計理論をもとにして、情報の整理について話す回。雑然としたメモはデータベースと呼べない。情報は表にまとめるのが基本である。そしてそれを実現しやすい優れたツールが、Notionなのだ、と。(この回はNotionの広告案件である)

そんなことを偉そうに喋っている僕が、自分のメモは雑然とした形で放置していたのだ。これはよくない。己が背中を見せる形でやった方がいい。


そういうワケで、僕はNotionを使って「うんちくデータベース」の整備に乗り出した。これだ。

まだ整備中だが、過去に読んだ本の中で「おもろいな~」と思ったうんちくを、出典付きで並べてみた。また、「テクノロジー」とか「来世ハック」とかタグをつけることで必要に応じて絞り込み検索がしやすくなっている。(「来世ハック」は「来世でしか使えそうにないライフハック」である。僕はこういうのを収集するのが好きだ)

「使用状況」というカラムも用意して、使用後に非表示にするように設定すれば、同じうんちくを何度も喋るオジサンにならずに済む。

さらに、「法律・来世ハック・アダルト」といった複数条件の絞り込み検索もできる。その結果出てくるのは「激似AVは”激似”と明示していれば法的に問題ない可能性が高い」といったうんちくだ。さらに追加情報で「沢尻エリカそっくりの人が出てくる”エリカ様”というアダルトビデオがあるが、これは本人であることを誤認させるのでアウト。”激似!エリカ様”であれば問題なかったのに」というのも出てくる。便利である。

法的に問題があり、発売中止になった『エリカ様』


そういうワケで、このデータベースが十分に完成すれば、「うんちくバー」開業の可能性もある。こういうサービスだ。

「マスター、経済に関するうんちくで、マフィアが登場して、とびっきり夢があるヤツを頼む」

「そうですねぇ…。ではこちらはいかがですか? ”ロシアの財閥が誕生した理由”」

「おっ、良さそうだね。それをひとつくれ」

「かしこまりました。”オリガルヒ”という言葉は聞いたことがあるでしょうか?」

「聞いたことないね」

「ざっくり言うと、ロシアとかの新興の財閥を意味する言葉です。超富裕層なので、ロシアンジョークなどではたいてい悪者にされています」

「はいはい。アメリカンジョークにおける”弁護士”みたいなものね。だいたい金に汚くて悪者にされるもんね」

「そうです。急速に成り上がった人、というイメージですね」

「でも不思議だね。財閥ってそんな一朝一夕で完成するものじゃないだろうに」

「そうなんです。財閥みたいなレベルの富って普通は一代で築き上げるものじゃないんですが、ロシアのオリガルヒはそれをやってのけた。ポイントは何だったと思いますか?」

「うーん、さっぱり分からない。

「正解は、国営企業の民営化です」

「あー、ソ連の時代は国営だった巨大企業が民営化されるタイミングがあったのか」

「そうです。察しがいいですね。そのタイミングに合わせて成り上がったのがオリガルヒです」

「なるほど。でもそれだけじゃ大したうんちくじゃないよね」

「おっしゃるとおり、すごいのはここからです。ロシアの閣僚は、国営企業の民営化に伴って、国営企業の株と引き換えられる小切手を国民全員に配りました」

「へえ~。すごい。経済を盛り上げるためってこと?」

「恐らくそうだと思います」

「おもしろい施策だね。国民は来るべき自由主義経済に夢を見ることができる」

「そう思いますよね。実際にはそうはならなかったんです。当時のロシアは深刻なモノ不足で、みんな明日のパンを買う金がなかったので、この小切手は投げ売りされてしまいました」

「ツラい!意味ない!」

「そうです。額面1万ルーブルの小切手なのに、10ルーブルとかで投げ売りされていたようです」

「なんでそんなことに!?」

「民衆の考えとしては、”いつ換金できるかも分からない小切手なんか持ってるより、明日のパンが欲しい”って感じだったようです」

「うわあ、切ない話だ。”貧乏な者はもっと貧乏に”っていうマタイ効果を感じる」

「で、そんな投げ売りされた小切手をかき集めて成り上がったのが、オリガルヒです」

「すごい話だな~~!」

「新興財閥が突然誕生した理由は、未曾有の株バーゲンセールのおかげだった、というワケですね」

「おもしろい!」

「なお、出典は『ロシアンジョーク』(学研新書)のKindle位置1451です」

「出典も明示されててエラい!」


とまあこんなサービスだ。書いておいてなんだが、誰が必要とするんだこれ

とはいえ実現したらちょっとおもしろいので、データベースを強化した暁にはこういう1日バーをやりたい。ひとつ300円でうんちくを売りまくりたいものだ。

「うんちくバーテンダー」をやれる日が来るのを目標に、僕はこれから数ヶ月、空き時間を見つけては粛々とうんちくデータベースを整備し続けようと思う。


センシティブすぎて使えないうんちく

データを整理する過程で必ず直面する難題が、「どんな情報が必要で、どんな情報が不要なのか?」という取捨選択である。この問題に答えを出さないと、データベースは設計できない。

僕は今回うんちくを整理しながら、「センシティブすぎて普通には使えないもの」をどうしようか悩んだ。そして、結局それは「センシティブ」タグをつけて、データベースに表示しておくのをやめた。つまり、あえて検索しない限りは目に入らないようにした。あらゆるうんちくを一覧する目的ならすべてを表示する設定にしてもよかったけれど、やめておいた。「常に目を通し続け、自分の身体に刷り込んでおくもの」にしたいと思ったから、センシティブで使えない情報が入るのは避けたかったのだ。

だけど、整理していると「センシティブだが結構おもしろい」というものがたくさんあって、「何だかもったいないなぁ」と思った。だから、おまけにここで書いてみよう。このマガジンは、センシティブな話ができる数少ない場所だから。


ということで、ここからは本当に表に出したくないので、以下有料になる。センシティブなうんちくを紹介しながら、関連する「ものすごく困った人」のTwitterアカウントの話も実名付きで出るので、気になる方はぜひ課金して読んでいただきたい。単品購入(300円)もできるが、定期購読(500円/月)がオススメだ。いつ入っても当月に書かれた記事は全部読める。11月は4本更新なので、バラバラに買うより2.4倍オトク。


それでは早速始めよう。無料部分ではとても触れられない、あの界隈の話を……。


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