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5年ぶりに会社を作った。理念は「利益を最大化するが、利益を最大化しない」。

久しぶりに会社を作った。5年ぶり2回目。

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登記手続きは5年前にもやったことがあるので、経験値が蓄積されているはずなのだが……何ひとつ思い出せず、結局ずぶの素人として右往左往しながら登記を終えた。

公証役場が異常にこじんまりしていることも、法務局の廊下が薄暗いことも、登記申請書に貼る印紙は別のフロアで事前に買わなければいけないことも、何もかも忘れていた。

ノウハウは常に失われ、役人の言いなりになって行動する。記憶容量が無限だったらいいのに。いや、百歩譲って記憶容量は無限でなくてもいいから、USBメモリに移せればいいのに。5年前の記憶を保存しておいて、改めてロードしたかった。


記憶をUSBメモリに移すことを考えながら、登記手続きを終えた。ひどくあっさり、新しい会社ができた。

前回の月額会員制村作りサービス起業は完膚なきまでの失敗に終わったので、今回は転ばないようにしたい。

とはいえ、特に失敗しようがない気もしている。「新しい事業を始めるぞ!」みたいな夢追い系の法人設立ではなく、単に税務的な都合で法人を作っただけだから。大人は夢のない理由で会社を作るものだ。

今回の会社の消費税の免税期間が終わったら、また新しく作るような気がする。永遠に終わらない夢のない会社設立のループ。この世界は夢のない法人にあふれている。「夢のない個人」はなんとなく悲しいけれど、「夢のない法人」は邪悪な匂いがして嫌いじゃない。


理念:利益を最大化するが、利益を最大化しない

ひとり法人である。株式を100%僕が持ち、役員は僕だけ。従業員なし。

したがって、会社の理念みたいなものは必要ない。ビジョンだのミッションだの、しゃらくさいことを言わなくていい。

起業セミナーでは「ビジョンとミッションを策定しましょう」みたいなことを教わるが、ビジョンとミッションを考えているヒマがあるなら1円でも多く売上を立てた方がいい。立派なビジョンを掲げてすぐ倒産する会社を死ぬほど見てきた。ビジョンだけがあって売上がない会社をビジョナリー・カンパニーとは呼ばない。それはビジョナリーな虚無である。

売上がある会社にビジョンを注入するのは簡単だが、ビジョンがある会社に売上を注入するのは困難を極める。ビジョンを考えているヒマがあるなら売上をかき集めてきた方がいいと思う。以上、かつてビジョンをひたすら考えてビジョナリーな虚無を生み出し、失敗した僕の経験則である。


そういうワケで、今回の法人には特にビジョンみたいなものはないのだけれど、設立手続きをしながら漠然と考えることはたくさんあった。

あらゆる役所の手続きは、なんとなくエモい。転出届を出すときはどうしてもその土地の思い出を反芻してしまうし、転入届を出す時は新生活の楽しさに思いを馳せてしまう。

大学を卒業して個人事業主開業届を出したとき、「もう後戻りはできないな」と感じて手が震えたのを憶えている。今になって思えば、そんな紙切れ1枚出したところで人生の何が変わるわけでもないのだけれど。

今回もそうだ。紙切れを出したところで何も変わらない。でも、やっぱりエモいので、会社の定款に契印を押しながら、「これから会社を作って、どうするんだろう」と無意識に考えていた。


契印を押しながら、たどり着いた答えはこれだ。利益を最大化するが、利益を最大化しない。禅問答みたいだね。弊社の理念は禅問答です


以下、そんな話をしよう。禅問答ではなく、理念の話を。

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