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【保存版】評価制度の設計方法①

弊社はこれまでに、100社以上の人事評価制度に関するコンサルティングを行ってきました。

その中で得られた知見から、多くの企業で生じている「何をすれば良いか分からない状態」を解消するため、特にスタートアップ企業など、まだ従業員数の多くない企業様に向けて、実際に運用可能な一般的な人事制度(等級制度・評価制度・報酬制度)をスピーディ(3ヶ月程度)に設計する方法を解説してきました。※詳しくはこちらの記事をご覧ください⇩


今回は、これまでの記事のみでは説明しきれなかった一般的な人事制度の3つの要素のうち『評価制度』についてより深く、詳細に、設計方法を数回に分けてご紹介できればと思います。

また、手順をただご紹介するだけでは、痒い所に手が届かない状態かと思われますので、各社ご支援していく中でよくお伺いされる内容とその回答についても合わせてご共有させていただきます!


(次回記事)
・成果評価について
・行動評価について

評価制度の流れ

評価される対象については各社異なると思われますが、一般的なものとして今回は「成果」と「行動」で設計していきます。
そのため、これから作成していく評価制度の全体的な流れとしては、以下の3ステップとなります

  1.  成果評価

  2.  行動評価

  3.  1と2を踏まえた総合評価

図で示すと以下の通りです。

1つ目が、成果評価についてです。期初に設定した目標の達成度を参考に評価を決定していきます。

2つ目が、行動評価です。事前にコンピテンシー(職務・役割において望まれる行動)やバリュー(会社が定義する重要な模範行動)の基準を設定し、その基準を基に評価をおこないます。
※1と2は並行して実施する想定です。

3つ目が、総合評価です。成果評価と行動評価の評価結果の両方を加味して最終的な評価を決定し、基本給に反映させます。

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これら3つの評価方法の作成手順と、よくご質問いただく内容について説明していきます。作成手順ですが、運用時の順番とは異なり、下記のステップで行います。

 ③総合評価→①成果評価→②行動評価

総合評価から作成する理由ですが、総合評価に行動評価を含めるかどうか(あるいは成果評価を含めるかどうか)についても選択肢としてございます。そのため、ご選択によっては①または②の作成が不要となるため、③より作成していきます。

それでは、さっそくご説明していきます。


総合評価について

 まずは成果評価と行動評価の評価結果をどのように総合評価結果に落とし込むかを考えます。選択肢としては、「左:2つの評価点を加重平均し、点数をそのまま総合評価に反映させる方法」と「右:2つの評価点はあくまで参考値とし、上長等が最終的な総合評価を決定する方法」の2つあります。

一般的に、客観的な評価とする(温情評価を防ぐ)ために左側を選ばれることが多いですが、客観性が高まると同時に、目標値等を厳しく設定してしまうと厳しい評価結果となる可能性があります。(また同時に、その逆のケースとなる可能性もあります)

一方で、右側を選ばれる場合、頑張りや意欲など定性的な側面も一定考慮できますが、温情評価や評価者によって評価基準のズレが生じる可能性があります。

どちらも一長一短のため、結局のところ、どちらを選ばれるのが良いのかご質問いただきます。そちらへの回答としては、各社様のご状況にもよりますが「左側:デジタル評価」を推奨しています。

一番の理由としては、被評価者の納得度のためです。
右側の方法ですと、評価者による基準のブレは少なからず生じてしまいます。規模が小さい会社様であれば全体を把握しやすく、認識の統一も図りやすいですが、規模が大きくなるにつれて難しくなっていきます。その結果、被評価者の納得度が低くなり、不満が募っていく可能性が高まります。

では、左側のデメリットについてどうするか、ですが、
『人事制度は運用の中でアップデートしていくもの』ですので、評価制度(目標)についてもアップデートをしていき、適切な難易度となるよう調整していく方法が良いかと思います。

具体的には、導入当初はデジタル評価としつつもイレギュラーな内容は一定上長の判断を可能とし、徐々にイレギュラーにも対応可能な目標や評価軸になるよう調整することで、評価者の恣意性が入らない完全なデジタル評価へシフトしていくのが良いかと思います。

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次に、評価軸ごとのウェイト(重み付け)を検討していきます。
成果評価と行動評価のそれぞれの評価結果を重み付けして算出するかを考えます。

ウェイトが高い方が、給与により大きく還元されますので、必然的に従業員の関心も高まります。また、比重のかけ方により何を重視して頑張って欲しいのか、という社員の方へのメッセージにもなるため、メッセージ性も考慮して作成されることをオススメいたします。

等級レベルによって、求めたいメッセージも異なると思いますので、
下記の通り、等級ごとにウェイトを分けて設定する方法が一般的です。

①は、等級が高まるほど行動評価のウェイトが高くなるように設定
②は、等級が高まるほど成果評価のウェイトが高くなるように設定
③は、等級ごとに変化を付けず、常にどちらか(あるいは両方)を重視するよう設定しています

※上記の表の数値はあくまで参考のため、各社様のご判断になります。あるいはどちらか一方のみ評価する(100%:0%)といった設定も可能です。

ここは各社様の込めたいメッセージによるところが大きいため、一概に推奨案を述べることは難しいですが、等級が低い人については与えられる業務機会もせまく成果に繋げることは難しいという観点から行動評価の割合を高くし、等級が高まるほど成果を意識して欲しいといったメッセージから、成果評価の割合を高くしていく②のパターンを設定されることが多いです。

ぜひ、どういったメッセージとしたいのかを検討した上でご判断いただければと思います。

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最後に、評価の段階数を検討します。
こちらについては、3つ選択肢があります。

判断基準としては、①奇数個とするのか、偶数個とするのか、②どの程度細分化するのかによって上記の選択肢のうち、どれにするのかを検討します。

①奇数個とするのか、偶数個とするのか
 奇数個と偶数個の大きな違いとしては、中間を設けるかどうかという点になります。

中間を設定されない場合(偶数個とする場合)、「できた/できなかった」について、メリハリを持って評価を行うことができますが、通常評価(普通)の際には、上の評価に振り分けやすくなるため、評価が上振れる可能性があります。一方で、奇数個の場合、悩んだらとりあえず中間値に、といったように中心化傾向が生じる可能性があります。

偶数個とし、中間を設けず敢えて評価者の負担を増やすことで、評価に対する真剣さを求められる会社様もいらっしゃいますが、メリハリがはっきりしている分、被評価者の精神的な負担も大きくなるため、多くの場合、まずは中間ありの奇数個で設定し、中心化傾向が見られる場合には、偶数個への移行を検討するなど、対策を検討される方法をお勧めいたします。

②どの程度細分化するのか
 最低でも3、最大でも6段階程度とし、あまり増やさないことをお勧めいたします。というのも、階層を増やすほど、各段階との差分が不明瞭になり、評価者が判断しにくくなるためです。

 仮に7段階として、下記の通り設定した場合、
 【SS:特によくできた、S:十分よくできた、A:よくできた、B:一定できた、C:一部できなかった、D:できなかった、E:全くできなかった】
SSとSの違いは何か?といった定義が難しくなります。
(実際にご支援している中でも、社内の声として、SSとSの違いが分からず評価しにくいといった声も耳にします。)

一方で、3段階にまで絞ってしまうと、できた人(期待を満たした人)がすべて一律に評価されてしまうため、5段階程度とされることをお勧めしています。

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以上が評価制度の全体像と総合評価の作成手順(検討ポイント)の説明でした。次回は、成果評価と行動評価の設計方法についてご説明していきます。

ここまでお読みいただきありがとうございました!
それではまた次回、成果評価と行動評価についても、よろしくお願いいたします。


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