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シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇 ありがとう、全ての・・・

【ネタばれ感想です!!!!!!】

もう一度言いますがネタばれ感想です。このnoteをご覧いただいて本当にうれしいのですが、映画を観るご予定の方はお読みにならないことをおすすめします。

さて。

物議を醸した「Q」から8年余り。ようやく公開されたエヴァ最新作。観終わって2時間後にこれを書いている。

公開から1週間経っているが、ずっと情報をシャットダウンしてきたので世間の評価はまだよく分からない。しかし自分としては大いに満足した。

いや、満足した、という言葉は少し違うかもしれない。何というのだろう。すうっと、心が軽くなったような、実にサワヤカな後味だ。

この映画は、キャッチコピーに「さらば、全てのエヴァンゲリオン」とあるように、25年の長きに渡り、愛され、時に非難されてきたエヴァンゲリオンシリーズに終止符を打つものである。

あくまで位置づけとしては「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」シリーズの最終話ではあるが、それだけではない。

最初のテレビシリーズ「新世紀エヴァンゲリオン」、その劇場版「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生」、「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」、そしてリブート版である「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」すべてをその中に包含し、それぞれの結論へと導いている。平たく言えば「ケリをつけている」。そこが見事だ。

特に、あの放送事故スレスレのテレビシリーズ最終話や、著しく評判の悪かった「Q」などを観たときの「なんで?」という疑問符にきちんと答えている姿勢が、実に清々しいのである。

そして、この映画がケリをつけているのは、エヴァだけではないのかもしれない。庵野秀明総監督らがDAICON FILMや「ナウシカ」「マクロス」などの制作現場、GAINAX、スタジオカラーで歩んできた、その道のりの全て、そしていわゆる「オタク文化」を共に支えてきた無数の人々の思いに対しても、実にきれいに答えてくれているのだ。

アニメ・特撮といったジャンルは、「ポップカルチャー」「クールジャパン」ともてはやされるようになった。しかし、今なお「サブカルチャー」という言葉があるように、決してメインストリームではない。ジブリ作品だけが、何やら免罪符を受けて「名誉メインストリーム」扱いをされている。

「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に」には、その苦悩が色濃くにじんでいた。だから、というわけではないが、ラストシーンでアスカが最後に言うセリフは「気持ち悪い」だった。

今回の「シン・エヴァ」でも、そのラストシーンとほぼ同じ場面がある。しかし今回、アスカは「気持ち悪い」なんて言わない。主役であるシンジはもちろん、レイも、カヲルくんも、みんなそれぞれに自分なりの結論を見つけて、憑き物が落ちたような表情になっている。

あれ?これどっかで観たような・・・そう、あの物議をかもしたテレビ版最終回だ。あのときは「ふざけんなこの最終回!」と思ったものだが、シン・エヴァを観終わったあと、まさに「おめでとう!」と拍手したい気持ちでいっぱいなのだ。

つまり、シン・エヴァは最初のテレビシリーズにつながっている。だから「𝄇」なのだろう。

庵野秀明はもはやサブカルチャーの人ではない。立派なエスタブリッシュメントだ。しかし今回の作品で彼は、エヴァに対し、アニメ・特撮に対し、それらを愛好するすべての「オタク」たちに対し、「あなたたちはもうメインストリームなんですよ」などと言っているわけではない。サブカルチャーと言われるなら、それでもいいじゃないか。そのまま、ありのまま存在すればいい。そんな視線が感じられる。

「ここにいてもいいんだ」

である。

これまでのエヴァはいつも肩に力が入っていた。それに比べシン・エヴァはある意味肩の力がいい感じで抜けていて、とても余裕があり、その眼差しは柔らかい。それを映画のテーマになぞらえて「庵野たちも、俺たちも、大人になったのだ」と受け取る人も多いだろうが、個人的には「大人になった」の一言で片づけるのにはちょっと抵抗がある。少なくとも、庵野秀明氏や、クリエイティブに携わる人々は、壮絶な戦いがを長年にわたり繰り広げてきた。その結果にたどり着いた境地であるなら、それは「悟り」とか「達観」といったレベルのものである。

そしてシンジが作った「新世紀」。それは今まであったことをなかったことにしたわけではない。これまでのことをすべて踏まえた上での新しい世界だ。そこに、もはやいい歳になっているファンにとっての希望があり、救いがある。

こうして考えると、この映画はコアなファン向けのもの、あるいは80年代以降のオタク文化創生の物語をずっと共に見てきた世代にこそ刺さる映画であり、万人受けするものではないかもしれない。そこは評価が分かれるところではあろうが、もともとエヴァの醍醐味は謎解きや社会的メッセージではなく、巨大ロボットが暴れまわる爽快感や、作戦室の緊張感が醸し出すカタルシスだ。それは今回の映画でも過去最高のレベルで実現されているし、前半の「第3村」のシーンは、アニメの表現力をまた一段階広げた素晴らしいものだった。「エヴァファンのための映画」だけで終わらせるのは惜しい。

「子の成長」「親子の対話」という物語に収斂しているのは意外性がなく拍子抜けだ、という声も予想される。だがこれも、少し視点を変えてみると様々なドラマが見え隠れしており、エヴァらしく一筋縄ではいかない構成になっている。たとえば、あのさわやかなラストシーンも、「エヴァの物語は、もともとゲンドウのことを好きだったマリが、シンジを我が物にするなでの話だった」といううがった見方をすることができる。

専門家によるさまざまな批評、コアなファンによる多くの考察が今後もなされるだろうが、とにかく自分として心から「ありがとう」と言いたい快作である。

おまけ

観ていて、自分がテンション爆上がりしたのはこの2点。

・最大の見せ場で流れるBGMが「惑星大戦争」のテーマ曲。

・クライマックスで流れる歌が「さよならジュピター」の主題歌。

どちらも世間的には微妙な評価の作品だが、自分としては大好きな映画。やっぱりコアなオタクのための作品じゃねーか、と言われても仕方ないか・・・

エヴァンゲリオン公式サイト

https://www.evangelion.co.jp/


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