写真との出会いは標高3000m final
エピソード1はこちら↓
一瞬で辺りが明るくなり、目を細めた。
パッと明かりがついたそのシーンに一瞬にして心を奪われた。
日が出る前、周りに雲があることは分かっていたけど、それがどこまでも続いていることは太陽の光が教えてくれた。
光は一面に広がっている雲の凹凸まで浮かび上がらせて、それはまさに雲の海だった。
「すげぇ…」
景色に完全に圧倒された。
この壮大さに自分…というか、すべての存在が小さく感じた。
そして、何でもありなんだと思った。
何か起きても、それはこの世界の中でごくごく小さいことだから、大したことにはならない。
なぜか、そんなことを感じた。
この景色を携帯のカメラに何枚か収めたけど、日光が強すぎて変に映るし、撮影をするために画面越しで見るよりも、肉眼で見たほうがずっと美しかった。
携帯で撮るのは諦めて、ただひたすらに自分のレンズを通して、その景色を見つめていた。
カシャカシャッカシャカシャッ
横でシャッターを切る音が聞こえた。
「ええの撮れたで。ここまで条件良いのはなかなかないで。ええ時に来たなぁ!」
といって、おじさんは撮った写真をモニターに映してくれた。
僕がまっすぐ何かを見ていて、その後ろには絶景が広がっていた。
表情からもその目線の先のものに虜になっているのが伺える。
自分が写っている写真を良いと思うことは少なかったけど、その写真はとても良いと思った。
今見ている最高の景色と感動している自分がいる。
自然の美しさと感情がその一枚には収まっている。
写真は自分が思っている以上の価値と可能性を秘めていると思った。
「これ、後で送ってもらえますか?」
「当たり前や。ええ写真撮らしてもらって、ありがとう!」
撮るのが好きな人が写真を撮り、感謝する。良い写真を撮ってもらい、嬉しくなって感謝する。
これほどのWin-Winが成立することがあるだろうか。
自分も素晴らしい景色と感情を残すことができて、それが自己満足だけじゃなく、誰かのためにもなったら、どれだけ良いことだろう。
「おじさん、一眼レフのこと、いろいろ教えてくれません?」
真顔でカメラのモニターを見ていたけど、パッと笑顔になった。
「ええよ。」
Fin
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