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別れの晩餐

3月は別れの季節でもありますね
職場でも辞めていく人がチラホラ

先日、定年退職する男性と
仕事終わりに食事へ行った

自分がこの仕事を始めて2年
あまり関わることのなかった
思いも寄らない人からの誘いだったので
とても驚いてしまった

誰か他の人も誘いましょうか?
と聞いたら2人で行こうと言われた
とても真っ直ぐな眼差しだった

仕事場の近くの台湾料理店へ向かった
その人は無口で真面目な性格だったので
お店へ行く道中、自分の心の中では
会話が弾むのか心配だった
気まずい空気になってしまったら
なんだか申し訳ないと不安だった

店内のテーブル席に通されると
いつも会社で見ている人が
少し派手な台湾料理店の
目の前の席に座っている姿が
とても不思議な感じに思えた

心配していた会話は途切れることはなかった
無理に話題を広げる努力をしなくても
会話はどんどん転がり弾んでいった
飾ることなく楽しい時間が続き
不安はワクワク感に変化していった

その人は人の話を引き出すのが上手く
職場の人には何となく秘密にしていた
・読書が好きなこと
・映画が好きなこと
・音楽をやっていること
・ボクシングを始めたことなどを
不覚にも抵抗なくスラスラと話してしまった

ほとんど仕事の話にはならず
心地良い雑談が連なっていった
几帳面で真面目そうなこのタイプの人と
相性が合うことに驚いてしまった

もしかしたら、この人は
今回の食事をする前から
自分に対してフィーリングが合うと
思ってくれてたのかもしれない

だから食事に誘ってくれたのかもしれない
そんな過信をしてしまうほど
とても楽しい時間が加速していった

また、これが最初で最後の
食事会になるかもしれないという
そんな結末をお互い感知していたので
開放的な会話になったんだとも思う


✳︎


定年で辞めず、今の仕事を続けていく
そんな選択肢もあったらしいですが
現状維持に飽きてしまったらしい

正確には飽きたというより
この場から離れてみて
何か新しいことに挑戦したかったらしい

辞めてからの未来の計画のことを語っている
その男性の前向きな姿勢や表情は
若々しくカッコいいなと憧れてしまった

現状の不平不満や
過去の栄光を語るより
心身共にいつまでも若く
未来に向かって突き進める

そんな人間でいたいなと思わせてくれる
とても濃密な90分間の2人だけの送別会でした

終わりは始まりの合図ですね
すべての挑戦者に幸運を!


それではまたCiao!



【後記】


台湾料理店を出て
たぶん会うのは最後になるだろうと
そう思ったので帰り際に
なぜ今回、自分をご飯に誘ったのか?
という疑問をぶつけてみた

すると
「君が、わからなかったから」
という返答が返ってきた

色々と聞きたい事はあったけど
野暮な質問は避けて
「俺。わかりましたか?」
と聞いてみた

「もっとわからなくなったよ」
と笑顔で言って風のように去って行った

その姿が潔いなと感心してしまった

その儚くも堂々とした背中に
未来の自分自身を感じてしまった

そんな別れの晩餐でした。

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