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現代にも読まれて欲しい昭和初期の講義録

先週、戦中から戦後の教育者として高名であった森信三先生の「続修身教授録」を読みました。「続」とあるように本編としての「修身教授録」があります。こちらは当社の今年の人間学講座のテキストだったこともあり読んだところ、心に大変響く本でしたので、本編に続けて続編を読んでみました。
 
本書は、森信三先生が「修身」の授業でお話しされたことを伝えている講義録です。
「修身」とは現代の道徳に相当する科目で、森信三先生は学校の先生を目指す学生に対して修身を教えていました。有名な哲学者である西田幾多郎先生の教え子でもある森先生は、その人生経験と学びにもとづきながら、生き方や価値観を学生たちにつたえています。
 
本書で一番印象的だったのは、人生の中ではさまざまな事情から不本意な環境に置かれても、そこに置かれた人の気持ち、行動により、成し遂げられることは大きく変わってくるということを、先生は何度も何度も、言葉を変えつつ繰り返し伝えられていることです。
本人にとっては全く不本意の環境におかれても、その人の受け止め方次第で歴史に名前を残すようなことを成し遂げることがある。そしてそれは、このうえなく素晴らしい環境に身を置いた人でさえも成し遂げられないものであることを、先生は繰り返し説かれているのです。
 
思うに、これは前後の文脈も考えると、昭和初期の貧富の差が激しかった時代において、その家庭環境や貧困のために思うような人生を歩めなかったことが多かったことが背景にあるように感じました。それゆえに先生は何度も何度もこのような話しをしたのでしょう。
 
いな、これは昭和初期だけの話しではありません。
格差社会が進んだ現代においても、その環境ゆえに思うように生きれない人も沢山いるはずです。そうした人たちにとっても、森先生のお話しが伝われば、大きな勇気を与えることもあるのではないでしょうか。
現代だからこそ、この「続修身教授録」はもっと読まれて欲しい一冊です。

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