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デザインも医療もなにもわかっていない

わかっている人のように振舞っていないか?

こんにちは、株式会社CureAppでデザイナーをしています、精神科医師の小林です。新年の記事として書こうとして気がづけば2月も半ばになってしまいました。

2023年はデザインと医療の人として必死で存在感をアピールし続け、多くのおもしろい人に出会うことができた価値ある一年でした。

そして前回の2023年まとめ記事を書いたとき、ふと大きな思い上がりに気づきました。
「なんか『医療とデザインがわかっている人』みたいになってないか?」

自分が知っていることを発信し続け、それに一部の人たちから価値を感じてもらえると、まるで自分がその領域の専門家のように錯覚し、教える立場の人間かのように振舞ってしまいます。
それはそれで貫き続ければ本当に大家になれるのかもしれませんが、今の自分の知識と技術と経験のレベルでそれをやってしまうと浅はかな勘違いインフルエンサーみたいになり、そのうち誰からも相手にされなくなると怖くなってきました。

改めて自分が何もわかっていない人間であることを自覚し、何がわかっていないかを整理することでより強固な土台を作っていきたい、それが2024年最初の思いです。

医療とデザインのニーズをわかっていない

「医療とデザインをつなぐことに価値がある」という信念に疑いはありませんが、医療にデザインの供給は本当に不足しているのか?という疑念は湧いてきています。

これまで自分の思い描くデザインという概念が一般の医療者に浸透していない前提で考えてきましたが、デザインは専門知識であるため、すべての医療者が等しく専門性を持つ必要はありません。
医工連携などのクリエイティブな世界ではデザインが無視されているはずはなく、創薬などの世界でも医療者をユーザーととらえたデザインは長く研究されているはずです。

医療のフィールドは広く、どこに、何が足りていなく、何を提供すれば価値があるのかをもっと見定めなければ、ただ恣意的におもしろ知識を振りまくだけの一過性のコンテンツとして消費されてしまいます。

デザインをわかっていない

上記のような疑念が生じたのは、そもそも「デザインってなんだっけ?」が大きく揺らいでいる影響が大きいです。

自分が入り口として入ったグラフィックデザインはすでにクラシックなものとして扱われ、人間中心デザインやUXデザインといった概念も過去のものとしてアーカイブに押し込もうとする流れも感じています。

より重層的なレイヤーへの介入や、AIの爆発的な進歩による激変に置いていかれないことが今のトレンドであり、この数年でデザインそのものの激しい解体と再構築が行われることは覚悟しなければいけません。

混沌とした最先端の当事者でいることはおもしろいのですが、この不安定な中でノンデザイナーの人たちに「これがデザインです」とあたかも定義された形で伝えることにはさまざまなリスクが生じます。

私自身これまで誰かが提唱したデザインというものを学び、信用し、伝えようとしてきましたが、いまやその方法ではすぐに足場を見失い、荒波にのまれて溺死してしまいます。
「自分にとってのデザインとは何か?」という問いを重ね、強固な地盤を自ら見つけ立脚することが今を生き抜くために必要なスキルです。
たとえそれがマジョリティの考え方と異なっていたとしても、しっかりとした視点から周囲を見渡すことができていれば、そこには独自の価値が生まれるはずです。

やっぱり2冊目の本を書きたい

根本がわからなくなっているからこそ、思索のゴールを設定したい。
やみくもに試行錯誤をして発信するのではなく、形あるものとして収束させたい。
そしてせっかくまとめるのであれば自己満足ではなく読む価値のあるエンターテインメントにしたい。
そうなるとやっぱり2冊目の本が書きたいです。

「医療」「デザイン」というワードはすえ置くとして、そこからどう発展させていくか?
おそらく従来のデザイン理論と直接絡めるのではない、認知科学や哲学などさまざまな学術的視点を挟み込んだ独自のものを今はイメージしています。どれだけテクノロジーが発達しても私たちは人間であることをやめられない。この事実は常に引っ掛かり続けているので、人間を理解することはどうしても大きなテーマになりそうです。

2024年はインプットを中心とし、そこからあるべき方向性を探っていきたいです。もっと外に出て多くの人の思考に直接触れる活動もしていきたいので、機会があればなんでもお声かけください。意外とどこにでもいきますよ。

あとしいたけ占いが「お前は去年よくがんばった、2024年は遊べ」と言っているので今のところまあまあ遊んでます。やりたいことは今年も多すぎです。
遅ればせながら今年もどうぞよろしくお願いします。


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