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新刊『繁栄のボーナスタイム』先行公開第五章

note定期購読者向けの先行公開第五章です。(実際に発売された本とはかなり違う原稿になっているので、読み比べてみるのも面白いかもしれません)

「はじめに」は全員に無料公開されていますのでそちらをまずどうぞ↓

では以下第五章が続きます。

第5章 過去30年間変われなかった理由こそが、これからの日本の成功要因となる

●我々は大きな「価値観のシフト」を必要としている

第4章の最後で述べた「夫婦別姓制度問題」について書いた私のウェブ記事には色々と大きな反響があったのですが、ツイッターで話しかけてくれた読者の中に、

「いろいろな夫婦別姓賛成派の提案、特に自民党の稲田朋美氏が出した案はかなり保守派への配慮があったように思うのですが、受け入れられなかった理由はなんだと思いますか?」

…という質問をしてくれた方がいて、かなり考え込んでしましました。

確かに、稲田朋美氏の案は、それに激怒していた保守派グループの人ですら、ちゃんと内容を読めばかなり納得するんではないかというぐらいの「配慮」のある案だったと思います。

それがなぜ保守派の猛反対を受けて実現しなかったのか?

質問されて考えてみたのですが、私自身、そう問われるまで実際の稲田朋美氏の提案の「細部の内容」は知らないままだった事に気づいて愕然としました。

要するに、イメージとして保守派が「攻撃されている!」という印象になっている時点で(そして賛成派が反対派を嘲笑うネタにしている時点で)、彼らにとっては全力で反対する理由になってしまっているわけですね。

稲田氏の提案について取り上げるニュースは、どれも「先日まで安倍氏のお気に入りだった稲田氏まで考えを変えたぞ!時代遅れの老害どもを一掃するべきときだ!」というようなトーンであった(少なくとも保守派からはそう受け取られていた)事は否めません。

そして、「アリの一穴」的に、戸籍制度にまつわる小さな変更が、最終的に天皇制の崩壊へと繋がるのではないか?という彼らの本能的警戒心も理解できる。

要するに、「欧米的理想を重視する意見」と「日本社会の伝統を重視する意見」があった時に、

「欧米的理想の方が”上”であり、”優先されるべき”であるのは当然なのに、時代遅れの老害どもがこだわって反対してるから本当に嫌ですねえ」

…というトーンに私たちは無意識に毒されていて、それが「保守派」をほんの細部のことでも徹底的に警戒させてしまっているのではないかと私は最近非常に強く感じるようになりました。

実際に、私が経営コンサルティングで「組織を変えていく」ようなことをするなら、もちろん「変わっていく方向性の理想を譲る」ようなことは決してしないブレなさも大事ですが、「相手が培ってきたものへの敬意を示す」ことは同じぐらい、ときにそれ以上に重要なことです。

その点、私たちが日常的に「こういうのが普通」と考えられているトーンが、既にかなり「欧米文明至上主義」的なバイアス(偏見)がかかっているのではないか、ということを、一度真剣に考え直すべきなのではないでしょうか。

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ウェブ連載や著作になる前の段階で、私(倉本圭造)は日々の生活や仕事の中で色んなことを考えて生きているわけですが、一握りの”文通”の中で形に…

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