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[無料]架空遭難 8名中3名がスズメバチに刺された

架空遭難とは?

登山中に起こり得るトラブルを設定し、そのとき自分ならどうするか?設定された当事者たちはどうするかを想像することで、山岳遭難を回避しようという試みです。ツイートに反応することで参加できます。

今回の条件

  • 10月初旬、30代~50代の8名パーティー

  • 大菩薩峠方面から牛の寝通りを経て小菅の湯に下り、入浴してからバスで帰る計画

  • 14時に大マテイ山の手前でスズメバチに襲われ、3名が1箇所ずつ刺された

  • 現場から離れることでハチは去った

  • リーダーがファーストエイドキットを持っているが中身は不明

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刺されてしまった場合、どうする?解答例

設定では1箇所ずつ刺されてしまったとのことです。その場から離れてハチはいなくなったとの事なので、100m以上は移動したと思われます。ハチは現場から100m程度離れると追跡をやめるそうです。

現場から尾根を回って北東に移動した感じでしょうか。

まずは安静にする

急いで移動してきたはずなので息が上がっていると思います。ハチが去ったのなら、出来るだけ広くて平ら、落石や滑落のリスクが低い場所にシートなどを広げて安静にさせましょう。

負傷者がアナフィラキシーショック(重度のアレルギー反応)を起こす可能性があるため、呼吸困難、全身の蕁麻疹、嘔吐、意識の混濁などの症状が出ないか監視します。

シートの上に寝かせ、足の下にザックなどを入れて足を高くします。吐き気がある場合は体と顔を横向きにしてください。呼吸が苦しいようなら、上体を起こしてザックや山の斜面などに寄り掛かってもらうとよいでしょう。負傷者が楽になるようサポートしてください。

国内でハチに刺されて亡くなる方は年間に20人ほどですから、必ずしも多くはありません。が、アナフィラキシーショックの症状が出てから心停止まで15分という例もあり、山中でハチに刺されるのは致命的になる場合があります。

複数回刺された場合のみ?1回でもアナフィラキシーショックになる?

アナフィラキシーショックは、1回ハチに刺されたあと、短期間のうちに2回目を刺されると起きやすいとされています。しかし、1回目でも毒の量が多ければアレルギー反応を起こして亡くなってしまうケースもあります。今回は1箇所ずつという事なので、亡くなる可能性は低いと思われますが油断は出来ません。

アナフィラキシーショックが出てしまったら

アナフィラキシーショックの症状が出てしまったら、自力で下山させるのは厳しいでしょう。救助要請をした方がよいかと思います。

戻って牛の寝通りの尾根か大マテイ山の山頂で電波が入るような気がしますが、戻るとスズメバチに襲われる可能性があるので、赤い線に沿って北東に進むのがいいかも知れません。

✗マークの辺りに行けば電波が入る気がします。緑色の線のように、少し戻った尾根から大マテイ山に上がるルートもありそうですが、登山道は無いので登れるかどうかは分かりません。各メンバーの連絡用にトランシーバーがあると便利ですね。

特小は地形の影響をよく受けて、山中では通話距離が短いですけどね…。

アナフィラキシーショックが出て、エピペンがあるなら使う

一度ハチに刺された本人が処方されたエピペン(アドレナリン注射)があるなら、その本人が自分に対して使うことはなんの問題もありません。他人に打つ場合は医療行為に当たるため医師法違反になるという説もあるようですが、目の前にアナフィラキシーショックの人がいて、エピペンがあるなら緊急時の人道的行為として法的責任は問われないようです(反復継続性が無いため)。

ただ、エピペンも万能薬という訳ではなく、あくまで応急処置なので早めの救助要請が必要になります。

一般的にはハチに刺されることを想定してエピペンを持っている登山者はあまりいません。市販薬ではなく処方薬で、価格は1万円程度。使用期限は1年です。アレルギーの既往歴がある人やハチに関わることが多い職業の人など、一部を除いて持ってないと思われます。

最近スズメバチに刺された人は持っておくとよいでしょう。一般人が持つエピペンは、他人を救うための薬ではなく自分を救うための薬です。

ポイズンリムーバーで毒を吸い出す

安静にさせつつ応急処置をするとよいでしょう。ポイズンリムーバーを持っていたら、出来るだけ毒液を吸い出します。ポイズンリムーバーは体液を吸い出す道具なので、感染症予防の観点から使いまわしが出来ません。個人装備として各自が持ちましょう。

ただし、ポイズンリムーバーの効果については意味が無いという説もあります。私個人の実感としては、ブヨなどに刺された後に患部から体液を吸うと予後がマシになっている気がするので使っています。

なお、蜂の毒を口で吸い出すのはNGです。消化器官で吸収はされませんが、口中などに傷があればそこから毒が入ります。もしポイズンリムーバーが無くて口で吸うしかない場合は、必ず吐き出して水でうがいをして、その水も吐き出してください。

出来るだけ毒を吸い出したら、患部周辺を水で洗ってください。

スズメバチの毒針は一般的には残らない

毒針ですが、スズメバチの毒針は1回刺しても抜けないので、一般的には患部に残りません。ミツバチの毒針は使い捨てで、刺すと針を切り離して毒袋から毒を送り続けるため、刺されたあとに患部から毒針を抜かなければいけません。

この様な仕組みなのですが、スズメバチでも稀に毒針が残ることがあるようなので、ポイズンリムーバーを使う際には観察して、毒針があったらピンセットで除去してください。

抗ヒスタミン軟膏を塗る

抗ヒスタミン軟膏があるなら患部に塗ってください。アンモニアは効果がありません(尿を掛けるのも意味がありません)。抗ヒスタミン内服薬は、アナフィラキシーが出た場合には有効ではないため使うべきではないとする説があります。とりあえず、ポイズンリムーバーで毒を吸い出して、抗ヒスタミン軟膏を塗るのがよさそうです。

歩けそうなら自力下山でよいでしょう

応急処置をしつつ1時間ほど安静にして、特に体調不良も無いようなら自力下山をします。患部の場所によってはザックを背負うのが難しかったりするかも知れないので、仲間でサポートしてください。

ただし、下山中も体調の変化に注意して、無理しないようにしましょう。こういうときの我慢強さは美徳ではありません。

ハチに刺されたあとの入浴と飲酒はNGです。温泉は諦めて、早めのバスで移動して帰りましょう。特に体調不良も無ければ病院に行く必要も無いと思いますが、心配なら早めに病院に行ってください。塗り薬など出してもらえると思うで、今回使って余ったらファーストエイドキットに入れておくとよいでしょう。

スズメバチの種類

クロスズメバチ

キイロスズメバチ

オオスズメバチ

オオスズメバチは土中に巣を作るため、登山道外を歩いていると巣を踏み抜くことがあります。巣を踏んで全身を刺されて死んだ事例がありますので、沢登りのアプローチや詰め、バリエーションルートを歩く際は特に注意しましょう。

スズメバチの種類によって攻撃性や毒の強さに違いがありますが、アナフィラキシーショックを起こすことがある点は共通しており、毒性が弱いからといって侮ることは出来ません。ハチは一様に注意しましょう。

スズメバチに刺されないようにするには?

以上の様に刺されたあとの対応について書いてきましたが、山中でアナフィラキシーショックになってしまい、症状が重かったらとても救助は間に合わないでしょう。最近ハチに刺された人は自分でエピペンを用意しておくなど、自衛が必要です。

刺されないのが一番です。下記の注意点を守って、そもそも刺されないようにしましょう。

  • スズメバチが特に攻撃的になるのは7月から10月なので特に注意が必要

  • ハチが近づいてきても無視する。手で払ってはいけません

  • ハチを無視して、騒がず静かにその場を離れてください

  • 数が多かったり、威嚇してくるような場合は巣が近くにあります。速やかに立ち去りましょう。場合によってはルートの変更も検討してください

  • ハチを殺してはいけません。殺すと攻撃フェロモンが出て仲間が来て攻撃を受けます

  • 黒い色を襲うので、黒い帽子や服、ザックを避けましょう。黒い髪の方は黒以外の防止を被ったほうがよいです

  • 甘い匂いはハチを寄せるので、甘い匂いの香水や柔軟剤は避けましょう

  • ハッカの匂い嫌うらしいので、ハッカオイルでハチ除けスプレーを作っておくといいかも

  • 登山道の近くに蜂の巣が出来ると通行止めになったりします。事前に観光協会やビジターセンターなどのWebサイトをチェックしてください


わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。