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時事力/N検合格は就職に有利?:一戸信哉の「のへメモ」20230708

今週7/7の放送では、私が担当する「時事問題研究」がテーマで、この科目で学生たちが受験する試験「N検」こと「ニュース時事能力検定」のことを話題にしました。聞いていただいた皆さん、ありがとうございました。

この科目は2020年度から開講して今年は4年目。当初はコロナ禍で試験実施も難しい状況がありましたが、ようやく軌道に乗ってきた科目です。

「ニュース時事能力検定」については、TBSラジオのSessionが毎週例題を紹介するコーナーをやっていて、それがポッドキャストにも流れています。

TBSラジオのコーナーの冒頭では、この検定のことを「新聞やテレビのニュース報道を読み解く「時事力」を付けるため」のものと紹介しています。この「時事力」という能力が、学生たちには不足している。この問題意識から、検定をフックにした科目として、「時事問題研究」を実施してきました。検定合格を目標にするのは「時事問題研究」という科目名が示す理想に比べると、少し見劣りがするかもしれません(現在は、ニュースキーワードに関連する近似のニュースを調べる活動も行っているので、N検だけをやっているわけではなく、「研究」の要素も入っています)。

この試験が問うような基礎的なニュースに関する知識が、学生たちに不足しているというのは、あまり積極的には言っていないのですが、認めざるをえない「不都合な事実」です。この検定は、政治・経済・暮らし・環境から国際関係まで、幅広く「ニュース」についての知識が問われます。「ニュース」そのものの存在感がゆらぐ今、テレビからも離れてしまった若者にとって、テレビ番組や新聞に出てくるような「ニュース」は、決して関心の持てるものではないのでしょう。「大人」たちから見れば、それらは「一般常識」であります(でも実のところ、多くの「大人」たちにも「苦手分野」はあるでしょう)し、大学でさまざまな科目を学ぶ際にも、前提となる知識なので、一種の「リメディアル教育」として、「時事力」の向上というのは意味はあります。映像制作においても、歴史文化や社会課題などの硬めのテーマを扱う場合に、もちろん前提となる知識が問われます。知識を欠いたままのインタビューは、相手にも失礼になりかねないのですが、知識が追いつかずにフリーズしてしまうとき、学生たちはなすすべがなく、ひたすらうなづくのみ、となることもあります(それは大人でもそうでしょう)。なんとか「底上げ」をしていきたいと思っています。

授業では、N検の問題を解いていくうち、前提となる知識がないことがわかり、前提の前提から解説する展開になることもあります。たとえば、WTOやEPA、FTAといった「自由貿易」に関する問題を解く場合、「保護貿易」と「自由貿易」の違いや、「自由貿易」という理想と現実について、少なくとも大まかには理解している必要があります。ですが、高校までの勉強であまり興味を持たず、ニュースにも接していない学生は、「そもそも」のところがわからないということになります。そうすると、問題をとくための前提に立ち返って解説をすることになるわけです。これは当然、国際経済学や国際経済法など、専門科目を学ぶ前提になります。

こうやって「前提」「前提の前提」におりていって、ニュースを理解する力を養うというのは、非常に汎用性のある力だと思っています。ただ、この検定に合格すると何になるのか、つまり就職などでなにか有利になることがあるのか?といわれると、なんらか「保証」を与えるようなものではありません、というのが正直な回答です。。「ものを知らない」と見られてしまうのは、あらゆる点で不利になりますから、かならず役に立つとは思いますが、この検定だけで何かが得られるわけではない。むしろこれをきっかけにして、あらゆる知識、あらゆる見聞がつながりはじめて、学びが豊かになっていく。これが目標です。私自身は、ひとりひとりの学生に向き合って、「時事力」の底上げをサポートし、学びが「つながる」その瞬間に、立ち会えたらと思っています。

(ヘッダー画像は、「ひらめきが生まれた、若い日本人女性」を、Midjourneyで作ってみた結果です。「ひらめき」という感じはあまり出ませんでした)。


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