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小学校最後の保護者会


昇降口に着いて、ツムギのクラスの靴箱に目をやると、見慣れた水色のシューズが、一面上履きの中に際立っていました。

あれ?まだ教室にいるのかしら?

普段口を酸っぱくして、集合時間よりも早めに到着するようツムギには話しているので、自分もどちらかと言うと遅刻気味になってしまう私ですが、娘関係の待ち合わせの時は特に気をつけて、できるだけ早く家を出るようにしているため、この日も教室に10分前には着いてしまっていました。

残っていた児童は三人ばかり。
最後まで机に向かっていたツムギと目が合いました。

「やべっ、こんな時に限って、ケイトが来た!」

娘からも夫からも保護者会の話題が出ていなかったので、私からも敢えて行くとも行かぬとも伝えてはいなかったのです。

クラスのお友達の前でも、『ケイト』って話すんだね。

サッカーのお友達には自分から話しているのは知っていましたが、クラスのお友達にはどうしているのかは聞かなくてもいいと思っていました。

どうやら、提出課題が終わらず居残りになっていたようで、無事に保護者会前に滑り込みで提出したツムギと入れ替えに、私はツムギの椅子に腰掛けました。

学年最後の保護者会は、一年前と同じように進められました。


クラス替えはなかったので、最後の保護者からのコメントも、なんとなく顔を覚えたお母さんから、去年の続編を聞くような思いでした。

どのお母さんの口からも、我が子がこの一年で成長したことと、友達に恵まれたことが出てきていたと思います。

それぞれの話を聞いていると、実子を育てているお母さん方も、心配や不安を抱えながら子育てしているのだということがよくわかりました。

そう考えると、ツムギは普通の小学生だし、この家庭環境を加味すれば、ずいぶんとがんばっている方なのかもしれないと思いました。

私はまたしても懲りずに、涙を堪えながらご挨拶をしたのですが、去年よりも母らしく見えたのではないかと勝手に感じました。

家に帰って、覚えている限りの話をツムギ相手にしました。私の感想も交えながら。

「ケイトも話をしたの?何て言ったの?」と聞いてきたので、それも話してやりました。

転校という一大事をがんばって乗り越えてくれたこと。
他のお母さんより厳しいと思いながら躾をしてきたから、学校が拠り所になってくれてお友達に感謝していること。
宿題を出さない、遅刻をしない、は直らなかったけれど、感情のコントロールができるように成長したと思っていること。
先生が、叱るだけではなく、ちゃんと理由を伝えてくださるのがとても良いと感じているようで、自分でよく考えて書いた手紙で謝るようになったこと。

思いが溢れてしまって、ちょっと長くなったかと反省するほどでしたが、よくがんばってきたから残りの小学校生活はこどもとして思い切り甘やかしてあげたいと思っていることを、他のお母さんとも共有したかったのに、言うのを忘れてしまったなぁと席に着いてから気づきました。


中学生になったら、また一気に大人っぽくなるのでしょうね。

もっともっと甘やかしてあげれば良かったと後悔するのでしょうか。


夜、次の日に卒業アルバムの写真撮影があると言うので、前髪切った方がいいんじゃない?と聞くと、珍しく素直にケイト美容室の椅子に腰掛けてくれました。

「明日の朝、ヘアアイロンでセットしてくれる?」
ツムギのリクエストに応えるために、今朝は早起きして、娘ご自慢のウルフカットが映えるようにセットしてあげました。

切り立ての前髪の可愛いこと。


幼稚だ幼稚だと思ってきたツムギだけれど、反抗期を抜けるのは、もしかしたら誰よりも早かったかもしれません。

まだまだ反抗も喧嘩もするでしょうけれど、もう母さんはどんとこい!だからね。

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