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根暗陰キャコミュ障は、雑談配信ができない。だから深夜に本を読んだ。

なんか良さげな雑談配信を見つけた。
同接は50人前後。なかなか人気のVtuberだ。

入ってみる。
今時のアニメ調な美少女とフワフワとした声。
コメントは彼女の一挙手一投足に反応し
また彼女もそれに懸命に答えている。

「こんばんは、初見です」
コメントを打とうするが、できない。
チャンネル登録者限定の設定。

「あ~〇〇さんスパチャありがとう~!」
ナイスパ。ナイスパ。ナイスパ。
なんだか場違いな気がして
そっとブラウザバックした。

私は雑談が苦手だ。
私は雑談が苦手だ。

見知らぬ他人と10分間自由に喋るか
丸三日誰とも喋らないか選べと言われれば
断然後者を選ぶ人間だ。

さして知りたくもない他人の情報と
さして教えたくもない自分の情報の
口頭による交換作業。

恐らく相手は私との会話など
ものの5秒で忘れるだろう。
おススメの本も
落語の魅力も
ビールに合うつまみも
Tiktokでスライドする動画のように
無造作に消費され
消化されることなく消失する。

そのくせ私の方は
詮無いことでもよく覚えている。
バッドコミュニケーションの時に流れる独特の間
やや踏み込んで返したトークの失礼度合い
退屈 視線 吐息 表情筋 語気の強弱
それらが布団の中、目をつむると脳髄を支配する。

本当、雑談が苦手だ。

結局のところ、Vtuberはサービス業だ。

「雑談が好きです!」「人と話すのが好きです!」
おめでとう。
あなたはVtuberもとい配信業の才能がある。

他人と会話をすること
他人の意図を正確に汲み取り適当に返すこと。
感情豊かにリアクションをし
話題を振り、時にリスナーとプロレスをし
距離感を保ってコミュニケーションを図る。

ムレを成し社会を構築させ
進化繁栄をしてきたホモサピエンスの1個体として
あなたは非常に優秀であると考えられる。

他人を慮る』落語でいうところの『気働き
これができる人間は、基本的に人生上手くいく。
配信であれ、動画であれ
リスナーがストレスなく閲覧できるには
これを徹底した人間がリスペクトされる。

では
他人に興味関心の薄い人間は
どうすればいいのだろうか。
根暗陰キャコミュ障ボッチは
Vtuberとして活動してはいけないのだろうか。

私は雑談が苦手だ。
なるべくなら会話せずに人生を過ごしていきたい。
Vtuberの活動もなるたけ喋らずに
登録者10万人とかいきたい。

これは私だけなのだろうか。
Vtuberはリスナーと会話しなければならないのか。

日を跨ぎ、布団の中。
脳みそが無駄に覚醒し
どうしようもない思考実験でCPUを消費している。

SNSは正義と承認欲求で喧しい。
人恋しいが、人間関係が煩わしい。
ただ人がいるだけ
ただそこに人がいる、お互いの存在を認知している。
それ以上踏み込まず、互いに好きに動く。

そんな配信もあってもいいのではないか。
少なくとも私は利用してみたい。
あの深夜の疼きが鎮まるまで
ただ人がいる、その場所で。

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