見出し画像

体験シリーズ 藍染めとコットンのお話

約半年ぶりの体験シリーズです。藍染め体験をしてきました!
今回も事前の準備は一切必要はなく手ぶらでの楽々体験です。体験場所の店構えも内装も味があっていい感じで、店主の方(以下店主)にも宣伝OKと快諾して頂けたので、後ほど紹介したいと思います。当日はマン・ツー・マンだったこともあって店主の方との会話量が膨大で、記憶も少し曖昧な部分があり内容に一部不正確な記述が混じっているかもしれませんが、大筋に間違いはないということでご容赦ください。


藍染めとは

日本の伝統的な染色技法の一つで、基本的には植物染料の藍を使って染め上げることを指すが、染色後の布地のことも藍染めと呼ぶこともある。
とのことです。見出しリンク先の「ジャパン・ブルー」という文字を見て、ひょっとしてサッカー日本代表の「サムライブルー」のルーツは藍染めから来たのか?と連想しましたが、間違ってました(笑)。あちらのブルーは「国土を取り巻く海」がコンセプトのようです。
また、現在の藍染めには比較的簡単に染められる「インド藍」が一般的には使われているらしい(今回の体験もインド藍だったかも)ので「インディゴブルー」と呼ぶ方がより正確なのかもしれません(藍について)。

それはそれとして、藍染めには防虫・抗菌・消臭等の効果もあるらしく、見た目も安らぐ感じがして日本人には馴染み深い印象があるんじゃないでしょうか。ところで、開くと通知の許可を求めてくるのはちょっと鬱陶しいかもしれませんが、見出しリンク先の藍染に関する内容はよくまとまっていて、内容全ての真偽を検証したわけではないですが、とても参考になると思います。

体験場所

お店の名前は「棉屋(わたや)」さん(以下棉屋)。よく調べる前には「めんや」と呼んでいた事は内緒にしておきます。姫路城からほど近い(具体的な場所は後述)、中核都市にありがちな?やや古い建物や今どきのマンション等が立ち並ぶ幹線道路沿いに古民家のいい感じを醸し出しながら佇んでいます。

築年数は100年を越えているとのことで、先の大戦での姫路空襲も運よく回避できたらしく、後の改築の際に色々手を加えたという内装は手作り感満載の雰囲気がありました。

天井の付近の味のある柱の感じや綿を紡ぐ?作業場

藍染め体験時に使用する藍染め液が入った瓶(かめ、設置数は2つ)の周りというか、お店の中はあえて土間にしたとの凝りよう。

土間に置かれた瓶は暫く放置すると発酵の影響なのか部分的に泡立つ模様(左)。右は体験時に使用した別の瓶

洗浄時に使う洗い場も店主のオリジナルデザイン。

古民家にマッチした洗い場は店主のデザイン

美術系学校のデザイン科を卒業されて、現在も毎年作品を二科展に出品中とのことに加えて、二科会デザイン部の会員でもいらっしゃいます。店主のお名前は「澤田義弘」さん、ニックネームは「わたや善兵衛」。

最近は油絵に魅了されているという店主の自画像

棉屋自体の開店は平成15年で、かれこれ20年程になる(コロナ時は体験コースは長期休業)とのことですが、「わた」を商売にしている店主の家業のルーツは140年以上も前の明治13年(1880年)までさかのぼり、現在まで歴史を紡いでいるとのことです(わただけにね)。

店主がさらにすごかった!

この記事はあなたの藍染め体験じゃないの?とお思いの方、ちょっと待ってくださいというか、僕の体験話は今どきの言葉を使えば、秒で終わります(笑)。それよりも、こちらの店主の活動を伝えたい気持ちが遥かに上回っているのでそちらを優先して、体験談は遥か下の方にちょこっと書いてあるはずです(この時点では下書きもここまでしか進んでいないので予定口調)。

しかし、ここは少し冷静になって店主の活動にまつわる話からは始めて行きたいと思います。

ところで姫路って城だけじゃないの?

はい。いや冗談です、そんなことはないです。おでん、駅そば、アナゴ、御座候、明珍火箸、革細工等々結構あります。はりま焼きや揖保乃糸等も姫路をかすっています。

かつて姫路は木綿(コットン)の生産地としても有名だった

江戸時代の姫路藩の名産品には「姫路木綿」というものがあり、薄くて柔らかい上質な木綿として全国各地で人気があったそうです。明治以降衰退しましたが(開国以降は安価な舶来品に圧倒されたとのこと)、最近になって地元の人たちが「姫路木綿復活の会」を作り、復活をめざして本格的に綿の栽培を始めたそうです。

みなさん、ピンときましたね?そうです、その旗振り役の方が棉屋店主のわたや善兵衛さんその人です。しかもその綿は有機栽培で自ら(支援者の方々と共に)が育てた「オーガニックコットン」です。

オーガニックコットンとは

3年以上農薬や化学肥料を使わないで栽培された農地で育てられた綿花のことをいいます。 また、栽培する人たちの安全や児童労働といった 働く人の環境を守って製造された綿をオーガニックコットンと呼びます(見出しリンク先から引用)。

オーガニックコットンはサステナブル(直訳で持続可能なという意味)と見なされていて、水の使用量が少ない、除草剤や殺虫剤、化学肥料などを使用しないので地球に優しく、温室効果ガスの排出量が少ないなどが主な特長。従来の綿の栽培方法で作られたTシャツには、1枚に約2700リットルもの水が生産過程で使用されているが、オーガニックの場合はこれを約243リットル程度にまで抑えることができるという。また、通常のコットン栽培では、化学肥料や防カビ剤、殺虫剤、除草剤、落葉剤などが大量に使用されており、世界で使われている農薬全体の6%が綿の栽培に使われているという。これは地球環境への影響だけでなく、働く人たちの健康にも影響を及ぼしている(こちらのサイトから部分的に引用)。

日本国内でオーガニック(有機農業を用いた)と主張するには国からのお墨付きが必要

国内のオーガニック農産物は、有機農業推進法という法律もあり、生産方法がオーガニックであるかどうかをそれぞれの定義や関連するガイドラインの様々な項目に則って公的に審査する「JAS認証(Japanese Agricultural Standards、日本農林規格)」の中の「有機JAS」というカテゴリに該当するようで、国内でオーガニックと担保されるには事実上公的な認証を経る必要がありそうです。少しややこしいのですが、オーガニックコットンも有機JASとして認証を受けることはできますが、「有機JAS認証マーク」表示は食品用に限られていて、有機JAS認証を受けたとしてもオーガニックコットンやそれを用いた製品には有機JASマークを用いた商品アピールはできないとのことです。

有機農業のイメージとJAS認証の流れ

それにもかかわらず善兵衛さんはオーガニックコットンにこだわり、ガイドラインに則った栽培を実践、また初回申請時には手探りで膨大な資料作成も行い有機JAS認証を取得し毎年更新し続けている(取得や更新審査にかかる経費は全て自己負担)とのことです。言葉にするのは簡単ですが、並々ならぬ決意や有機栽培に関する一連の作業には相当の根気が必要なことは農作業未経験者が想像する以上(むしろ想像もしたくない?)に大変なことではないでしょうか。善兵衛さんは「好きでやっていることだから」と笑ってらっしゃいましたが、ご苦労も少なくないことでしょう。

ちなみに、善兵衛さん曰く「オーガニックコットンの見た目や着心地やなどは通常の綿と変わらない」とも笑いながら謙遜されていましたが、世界的なSDGsの流れには乗っている活動なので、今後はより注目される可能性はあると思います。

では、ようやく体験談の話に移りましょうか(笑)

とは言うもの藍染め作業は瓶の中の藍染め液に混ざっている石灰(アルカリ性)が素手に良くないらしく、手袋をしての作業で作業風景画像は撮れませんでした(単に忘れていたというのもありますが)。また、染料として発酵させた葉っぱを使うということで多少独特のニオイがします。

僕の手ぶらでの体験(持ち込みも可)は何を染めるかの選択肢が3種類あり(大きめの手提げ袋、小さめの手提げ袋、ストール)、僕は大きめの手提げ袋を選びました。

次にどのようなデザインにしたいかを決めます。言葉での説明は分かりづらいと思いますが、対象物を紐や輪ゴムで縛ったりビー玉を挟み込んだり、染めたい箇所と染めたくない箇所を考慮しながらの手法が様々あるようでした。紹介ページの方が参考になると思うのでそちらのほうでご確認ください(笑)。

僕はデザインセンスとかはほぼ皆無なので、いくつか見せてもらったサンプルの中から自分の好みに近いデザインの手法(輪ゴムで縛る)を選び、クシャクシャに絞った手提げ袋を輪ゴムでキツめに留めました。

いくつかのサンプル作品。左下のデザインを参考にしました

それから手袋をはめて形を絞った手提げ袋を数分間瓶の中の藍染め液に浸したり空気に触れさせたりという行程を繰り返し、好みに近い色の濃さを調整します。途中で一旦洗浄・脱水して進捗状況の確認もします。大体好みの濃さに染め上がったら、洗浄・脱水・ある程度乾燥させると完成です。脱水や乾燥もやってもらえたので楽ちん作業でした。意外な発見としては、きつく縛ったりすると液に浸けてもほとんど染まらないということ(どうせ染み込むだろうという先入観がありました)。

完成形がこちら。

手提げ袋(大)完成形。タイトル画面の左側もこれ

洗濯時等の色落ちが気になりましたが、ある程度安定するというほど色落ちはしないとのことです。色落ちに関してはこちらのサイトが参考になるかもしれません。

作業工程自体は1時間もあればできあがると思いますが、事前の説明と雑談を含めて3時間ぐらいかかり、その半分は雑談でした(笑)。善兵衛さんは話し好きで、個人的には楽しめましたけど予定が詰まっている方は時間のコントロールに気をつける必要があるかもしれません。ちなみに予約時の体験コースの予定は2時間となっていました。以上で体験話は終了です。

今回はほぼお店に関する紹介になってしまいましたが、最後にもう一つ

姫路木綿復活プロジェクトには賛同者もある程度いらっしゃり(作業を手伝いに関東から来る方もいらっしゃるとのこと)、現状は善兵衛さんが中心となってなんとかやっていけそうな印象でしたが、軸となりそれらを引き継ぐことのできそうな人物の存在は不明です。善兵衛さんも「ワタトモ」を募集していて、サポーターの輪が広がって行くことでプロジェクトとしてもサステイナブルなサイクルを確立させることをご希望されていると思うので、ご興味をお持ちの方は一度お問い合わせしてみてはいかがでしょうか。

ワタトモ募集用紙(11月26日に書写の里美術工芸館で糸紡ぎ体験教室ありという落書き付き)

棉屋の場所

姫路城(上)入り口付近(徒歩起点)から少し左に歩くと到着(下はJR姫路駅)

ようやく本当に終わります(笑)。藍染めに少しでもご興味をお持ちの方は一度(何度でもいいですが)実体験できる場所がお近くにあるかどうかを探してみてはいかがでしょうか。おそらく棉屋の2時間税込みで一人3300円~と同じぐらいだと思います。また「じゃらん 遊び・体験」等から予約できるのであれば、クーポンが利用できるタイミングで予約するともう少しお得に体験できると思います。
☆了☆


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?