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仏ジャーナリストが語る、外出制限の日常

トップ画像©Bertrand Gréco 自宅窓からの眺め


2020年3月24日(火)


フランスの外出制限も、2週間目に突入しました。

「このありえない事態を、みんなどんな風に生きているのか」

とても興味があります。

というわけで、電話取材を開始!

記念すべき第1回目は、この方 ↓



名前:ベルトラン・グレコ氏 (男性)

年齢:47歳

職業:ル・ジュルナル・デュ・ディマンシュ新聞記者

家族:奥様、14歳娘(高校生)、12歳娘(中学生) *4人家族、4人暮らし

住まい:モンマルトルの丘、
100㎡のアパート、広いベランダ有り



ー外出制限から8日、どんな生活ですか?


娘たちはインターネットで学校とやり取りをしながら
勉強をしています。
フランスの学校にはPRONOTE(プロノート)というシステムがあって
教員、保護者、生徒が
宿題や成績、出欠席などを共有しています。
このシステムを通じて課題が与えられ、
先生に質問があればここでできるわけです。
二人とも公立校に通っています。

プロノート以外では、ENTというシステムが今回新たに登場し、
よりインタラクティブに授業ができる工夫がされました。
が、新サーヴィスということもあって、
サーバーにアクセスが集中し、ダウン。
最初の2、3日は使えませんでした。

娘たちは真面目に、よく勉強していると感じます。
僕ら夫婦はこんないい娘に恵まれてラッキーでした。

娘たちが勉強する場所ですか?
二人ともリビングで勉強しています。
僕もリビングで仕事をしているので、
ちょくちょく質問されて仕事が中断するのが悩みですね(笑)
妻もリビングで仕事をして、家族4人全員が同じ場所に集合して
各自の仕事をしています。
とは言っても、妻は薬品の研究者なので、
アイルランドやドイツとのテレフォンカンファレンスがあると
一人で別の部屋に移動しています。
彼女はテレフォンカンファレンスが多いです。

僕の方は、取材はもっぱら電話になりました。
政治家や、彼らの広報担当者とシリアスな話をしていると
向こうから小さな子供の声が聞こえたりして(笑)
みんな同じですから。
本当にこれまで体験したことのない事態を
今、通過しているんだと痛感します。


ー今の生活は辛いですか?

僕らは楽だと思います。
アパートは広いし、広いベランダもあるし。
昨日は天気がよかったので、家族全員で
ベランダで休憩したんですよ。
小さなアパートに住んでいる人や、一人暮らしの人は
もっとずっと辛い思いをしていると思います。
それから、家庭内暴力の心配も有ります。
今、同僚がその記事に当たっているところなんですが、
この外出制限のせいで、
DVが増えているのではないかと心配されています。
酒量が増えるのでは、という記事に当たっている同僚もいますよ。



ー運動不足の心配は有りませんか?

日頃から自転車通勤で
1日に20キロ以上は移動する僕ですから、
今の体を動かせない生活にはもちろん、運動不足を感じます。
実は明日、シャンゼリゼやエッフェル塔、オペラ座など
パリの観光名所をまわって、
外出制限下のパリがどうなっているのかを取材するのですが、
全て、移動は自転車で行う予定なんです!

今、我が家のベランダから外を見ると、
今まで見たこともないくらい大勢の人が走っていますよ。
唯一許可されている運動が走ること、ですから。
それも1時間以内、
自宅から1km以内、と規制があるので
同じところをぐるぐる回るわけです。

そうそう、この間久しぶりにモンマルトルの丘に行ったら
本当に誰もいませんでした。
モンマルトルで生まれ育った僕が、初めて見る光景でした。
いつも、観光客でごった返しているテルトル広場も、
サクレクール寺院も、全く人がいないんです。
唯一見かけたのが、ランナーでした。

日本ではどうですか?


ー日本では、学校が全国一斉に休校になり、イベントやコンサートも中止されましたが、
相変わらずレストランもデパートも営業しています。
人々は今も大勢電車で移動しています。
にもかかわらずフランスのような犠牲は出ていません。

人と適切な距離をとって、
挨拶は握手ではなくお辞儀をして、
普段からマスクをつけて、手洗いを徹底し、
家の中では靴を脱ぐ、というような
アジアの生活習慣は、コロナウイルスを体験した後に必ず
ヨーロッパの私たちが取り入れることになると思います。
でも、フランス流のキスの挨拶がなくなるのは残念ですね。


ー外出制限のおかげで発見した、ポジティブなことはありますか?

僕ら4人家族は、たとえ狭い場所に閉じ込められたとしても
仲良く楽しくやっていける、ということがわかりました。
4人で船に乗って世界一周旅行をする計画も
なんの躊躇もなくできます。

それから、友達と会って、テラスで時間を過ごす、
そんな何気なくやっていたことが、とても貴重なことなんだとわかりました。



ーでは、この外出制限が解けた暁には、何をしたいですか?

友達と会って、テラスで乾杯したいですね!(笑)



メルシー、ベルトランさん!

家族みんなで舵を取る、世界一周の船旅。

それを想像できる家族、素敵です。



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