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休業中のパリのデパート、職員への待遇は?

2020年3月30日(月)

外出制限から14日・・・

パリの勤め人の生の声が、そろそろ聞きたくなります。

百貨店の国際市場開拓マネージャーを務めるアズビレグさん(女性)に、

政府が約束した一時失業給付金がどういうものなのか、

どう適用されるのか、などなど伺いました。


名前:アズビレグ・ツァンバ=インセルト氏 (女性)

年齢:44歳

職業:百貨店の国際市場開拓マネージャー

家族:夫と二人暮らし +猫2匹
(21歳の娘は現在エディンバラの大学に留学中)

住まい:
パリ東端、庶民的な20区
70㎡のアパート、4階
植木鉢が置ける広さのバルコニー有り

*トップ画像は、アズビレグさんが自宅の窓から撮影。




ーアズビレグさんは、モンゴルのご出身です。
パリの住人になって何年になりますか?

1996年からなので、今年で24年目になります。
夫はイタリア人で、
ちょうどこのパンデミックの中心地になったベルガモの出身です。
彼の実家にはなんども電話をしましたが、
幸い家族にも友人にも、被害者はありません。


ー外出制限から14日、どんな生活ですか?

私の勤務先はデパートなので、
3月14日夜のフィリップ首相の演説を受けた翌日
15日からずっと閉店しています。
首相の演説後、すぐに職場からメールが入り、
政府の要請に従って
4月15日まで出勤しないよう指示されました。

つまり、フランス全体の外出制限は、3月17日から
最低2週間の見通しで始まりましたが、
私たちは3月14日の時点で、4月15日まで1ヶ月間の休業が
本社から言い渡されたわけです。
いいえ、テレワークはありません。
全くの休業です。

毎日本社からイントラネットで情報が届きますから
それに目を通してはいますが、
私たちに対する業務の指示はありません。
クライアントへのメール返信も、外出制限が解けて、
デパートが再開してからになります。

休業中の報酬は、政府の宣言通り
社員全員に一時失業給付金(失業手当)が適用されます。
内容をお教えすると、社員全員に、給与額面80%が支払われる。
家にじっとしていることに対して、お金をもらっている、ということですね。
これは贅沢なこと。
それに私にとってはある意味、好都合なのです。

というのも、私はもともと、毎年4月
体を休めるために数日、間休暇をとることにしています。
そう決めて実行するようになってから、何年になるでしょう・・・
冬の間は、精神面も体力面も
ものすごく疲れる、と悟って以来の習慣で、
数日間家にいて、体をゆっくり休めて、好きなだけ眠る。
その後、仕事に復帰する。
今の外出制限はまさにそれですから、十分に活用して
毎日本当によく眠っていますよ!(笑)

毎日、朝はゆっくり起きて、
午前中にエクササイズをしています。
買い物は夫が。
彼も多少は体を動かしたいでしょうからね(笑)
料理も彼がしてくれます。
イタリア人ですから、料理がとても上手なんですよ。
第一、外出制限とは関係なく、料理はいつも彼がしています。

夜8時になると、テレビをつけて
TF1(フランス第1の視聴率を誇るチャンネル)のニュースを見ています。
一日中テレビの速報を流し続けるのは
少し不健康に感じるので、時間を決めました。
TF1の8時のニュースは、大統領や首相の宣言を生放送したり、
大臣が番組に招かれて、公的な情報を発信したりするので
厳選された重要な情報を得ることができます。

それ以外の時間は、普段忙しくて
最後まで通して見ることができなかったルポルタージュや映画を
見たりしていますね。


ーお話を伺っていると、外出制限は辛くなさそうですが(笑)
今の生活は辛いですか? どう感じていますか?

私たち夫婦は楽だと思います。
娘が留学中なので、夫と2人だけになった住まいは広いですし、
日当たりもいいし。
スーパーは近所に4つあるし、
すぐ向かいのパン屋は今も営業しています。
ペットの猫も、犬と違って散歩の心配がないですしね。

先日ニュースで、11㎡で暮らす5人家族のリポートを見ました。
彼らは区の公団に申請中で、空きが出るのを待ちながら
こういうことになってしまったそうで・・・
彼らにとって、外出制限はとても厳しいはずです。

それに私はもともと楽天的な性格なので、
この時間を有効に使うことだけを考えています。
例えば、フランスには「春の大掃除」という習慣があって、
天気のいい季節が到来すると家中の窓を開け放ち
冬に溜め込んだ埃をすっかりキレイにします。
私は来週あたり、この「春の大掃除」をする予定。
どっちみち、やらなければならないことなのです、
それを「やらなきゃ! いつやろう?!」という
ストレスなしでできるのは、嬉しいですよね。

十分に情報が得えられていることも
不安なく過ごせる理由だと思います。


ー運動不足の心配は有りませんか?

youtubeを見ながらエアロビクスをしたり、
ジムのテレビ番組を見ながら筋トレしたり。
ジョギングは外出制限以来、毎朝1時間かかさずしていましたが、
ここ2日ばかりおやすみしています。
なぜ?
今ちょうどパリは感染のピークにありますし
コロナウイルスは空気中でも数時間生き延びることが
報道されたので(New England Journal of Medicine)、自主的に一旦おやすみ。
第一、マスクをしながら走るのは難しいですし。
外を走るかわりに、アパートの中庭で
縄跳びでもしようかなと思っています。

実は、昨年末のゼネストの最中、
自宅から職場まで片道1時間を徒歩で通っていたのですが
それがなかなか気に入って、
ストが終わったあとも帰宅は徒歩にしていました。
今はそれができないのが、多少残念ですね。


ー外出制限のおかげで発見した、ポジティブなことはありますか?

遠くにいる家族や友達にメッセージを送ったり、
届いたメッセージに答えたり、電話をしたり、といったことに
時間をかけることができるようになりました。
普段からやっていたことであっても、今はゆっくりと時間をかけられるので
気持ちが全然違います。
あせることも、ストレスもなく、
ゆっくりコミュニケーションが取れるのはいいものですね。
世界中に家族や親戚、友人がいて、それぞれの土地に時差がありますから
今はほぼ常にオンラインで誰かしらと繋がっている感じなのですよ。

他にポジティブなことは、
今パリのあちこちでおきている夜8時の拍手(*医療関係者に対し、住人たちが窓から拍手を送る)も
外出制限のおかげで発生した素敵な出来事ですね。
パリはご近所付き合いが希薄なので、外出制限の経験が
今後の私たちの振る舞いをポジティブに変えてくれることを
期待しています。

他にもまだまだポジティブなことはあって、
今年度から区の語学教室で中国語を勉強しているのですが
普段は復習の時間が十分に取れなかったところを
今は、好きなだけ時間をかけて勉強できるというわけです!
外出制限から中断していた授業も、今週からはZoom(ミーティングソフト)を使って
再開されます!



ーアズビレグさんのお話からは、辛さは全く感じられません。

現状をどう捉えるかは、
その人が生きてきた背景に多く由来すると思います。
私は共産国に生まれて、ロシア崩壊の影響をダイレクトに受けた
幼少期を経験しました。
配給切符で食料を買う生活です。
7人家族が1ヶ月に食用油1kg、小麦粉2kg・・・
今私が置かれた現状は、スーパーに行けばいつでも必要なものがありますし
薬局も開いています。
死の危機にさらされているわけではありません。


ーでは、この外出制限が解けた暁には、何をしたいですか?

4月に予定していて叶えられなくなってしまった
エディンバラ旅行を、実現させたいです。
留学中の娘に会いに行く目的で、友人数人と旅行を計画していました。
ハイランドはまだ行ったことがない土地なので、
ぜひ行きたい。
これを真っ先に実現したいです!

仕事面でいうと、
5月末に予定されている日本出張と
6月の韓国出張がキャンセルにならなければ
これもぜひ、行きたいです!
5月末、東京で開催されるワークショップ『Sakidori France』の
協賛企業として参加することになっています。

日本のコロナウイルスの心配ですか?
全くありませんよ!!
いろんな国へ行った私の実感として、
日本ほど清潔な環境で、一人一人が衛生面に留意している国はありません。
世界で一番安心できる場所ですから、
今すぐ、日本に行きたいくらいです(笑)



メルシー、アズビレグさん!


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