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目標と展望と在り方

先日、講座の中で受講生のみなさんと目標についてディスカッションしました。

特にコーチングでいう長期目標の難しさについて取り上げたのですが、そこで私が投げかけたのが、目標と在り方って同じだろうか?という疑問です。
その時受講生さんから、展望という言葉が出てきました。家族セラピーを研究されてる方が言っておられる言葉だそうで。
北極星のように常に方向を確認する意味で自分の中に持っておく指針のようなものかなと思います。
これは長期目標と区別する上で、とても的を得ている表現だと思いますので、以下この言葉を使わせて頂こうと思います。

実は、コーチが関わっていても目標を設定する時に、目標と展望と在り方が混同されてしまう事がよく起こります。
もちろん、これらはそれぞれ切り分けることもできないでしょう。
目標には、在り方も展望も含める必要があるからです。
混同とは、それらがなんとなく同じもののように感じられている状態ですね。

その両者の違いをプロであるコーチはちゃんと理解していないとどういうことが起こるでしょうか?

クライアントは、常々こうあろうと意識して過ごしているのに、それを目標と思い込んで目指そうとすると、今はまだそれができていない前提が生まれ、緊張が生まれてくる。そうすると、未来や過去からの不安からまた新たな目標を立てようとします。
そうなると、そこから出てくる目標は、将来に備えてこのぐらいは貯蓄しようとか、老後も健康でずっといられるために毎日運動しようとか、そういう目標が出てきます。
でも、このように不安から出てきた目標は、常に未来への漠然とした不安に繋がっているので、今の自分というものはどこにもいなくなってしまうんですね。
在り方と展望が目指すものになってしまうということは、それも今持っていない前提になるので、本当は日々そのように過ごしていても、頭の中では指針を手離した状態になってしまう。
この状態が不安を呼ぶのは自明でしょう。

自分は目指していると思い込んでいるので、行き先は漠然としたまま何かをやろうとする。
まるで、行き先も決めずに旅行するぞと言ってわけもなくぐるぐる回ってる状態と同じことが起こっています。

在り方は目指すものではなく、常に、今からでも自身がそう在ろうと決意するもの。
展望とは、そのような自分がどう生きていきたいか。
そして目標は、そのように過ごしながら、それをどう体現していくかの指標、尺度になるものとも考えられます。

そう考えると、私は常にこういう自分で在りたい。(在り方)  
そして、こういう人生にしていきたい。(展望)
そのために、今はこれを実現していこうと思う。(目標)

このように書くと、その違いが分かりやすいのではないでしょうか。

長期目標はマラソンや登山に例えられることが多いです。
このマラソンや登山のゴール達成の先には、また次のマラソンや登山がある。
長期目標は人生最後の目標ではありません。
それでも、目指すには不確実なことが多い長い道のりなので、自分のコントロールできることが多い短期目標を決めてはじめて今に集中できます。
マラソンなら、次の信号や電信柱。登山なら少し景色が見える開けたところでしょうか?

長期目標はいつも決められるとは限りません。
まだやっとジョギングを始めたばかりの人で、それを好きかどうかもわからない段階でどのマラソンを走るかを決めるのがナンセンスなのと同じように。

長期目標の難しさはそこにあります。
無理矢理立てるのではなく、今自分がいろいろ取り組む中で、ある時立ち現れてくるかもしれない。
外部からの刺激で向き合うかもしれない。
今はまだ自分に勇気が持てなくて気にしないようにしているのかもしれない。
もしかしたら、その必要もないことに気づくかもしれない。

それでも、在り方は目指すのではなく、いつも自分と一緒に今ここに在るものとして認識できていれば、ある時、立ち現れてくるものにもしっかりと向き合う準備ができていくでしょう。

そのためにも、在り方と展望と目標はしっかりとその違いを分かって生きていきたいものです。

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