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成果発表の原稿はただの思い出

職業訓練という選択とその成果
〜冒険の終わりと新たな旅のはじまり〜

『葬送のフリーレン』という美しい物語をご存知でしょうか。

この物語は、一風変わっており、魔王を倒した勇者一行の「冒険の終わり」から始まります。

そしてこの物語は、冒険の後日譚でもあり、新しい旅のはじまりを描いたものでもあります。

物語の主人公は、優に千年を超えて生きるエルフという種族の魔法使いフリーレンです。

彼女は、共に旅をした仲間の死をきっかけに、新しい物語を紡ぎ始めます。



私は昨年、多くの時間を様々なカタチで分け合った人生の仲間をたて続け失いました。

春のはじめに、12年寄り添い生きた最愛のいぬを見送り、その後夏の暑い日に、私という人間を最も理解する父を、それから二ヶ月も経たない秋風の頃、家族のために辛抱強く生きた母を送りました。

その間、働けなくなった家人に代わり家計を支えるべく働き始めた会社をあっという間に解雇になり、そのことで失いかけた自尊心を取り戻すため、労働局に調停の申し立てをしたりもしました。

とにかく、悲しく重くつらくめちゃくちゃな一年でした。

本当はすぐにでも新しい就職先を探さなければならないのに新たな一歩を踏み出せないままでいたところ、夫がお世話になっている社会福祉協議会の方が、職業訓練の支援制度を利用してみてはどうか、と提案してくださいました。

同時期、家人に勧められ見るともなしに見始めたアニメが、冒頭にお話した『葬送のフリーレン』です。



共に冒険の旅をした勇者ヒンメルが老いてこの世を去ったとき、フリーレンは深く後悔します。

人間の寿命は短いってわかっていたのに…… なんでもっと知ろうと思わなかったんだろう…

その言葉は、愛する者をたて続けに失い、もっとできることがあったのでは、どうしてもっと早く会いにいかなかったのか、と悔やみ続けていた当時の私の心に深く深く刺さりました。

そして、その後彼女が心に決めたことは、そっくりそのまま私の目標となりました。

私はもっと人間を知ろうと思う

それは同時に、私が、私自身をもっと知ろうとすることでもありました。



フリーレンが共に旅をした僧侶ハイターの言葉に次のようなものがあります。

必死に生きてきた人の行きつく先が無であっていいはずがありません

これは、勇者ヒンメルの言葉にも通じています。

生きているということは誰かに知ってもらって覚えていてもらうことだ。ほんの少しでいい。誰かの人生を変えてあげればいい。きっとそれだけで十分なんだ

人は、自分自身でその存在を証明することはできません。
関わった人を通してのみ、確かに在る、在ったと証明されます。

そして、その死後も、それらの人々の中で生き続けることができる。

大切な者たちの死をきっかけに、私は生まれて初めて、本当の意味で、誰かの中で生き続けられる人間になりたいと思いました。

その最初の一歩として、私はこの教室に通うことを決めました。



と、まあ、普段私がお見せしていたキャラとはちょっと違う一面を見て、または聞いていただいたわけですが、

戦士アイゼンはこう言います。

人生ってのは衰えてからのほうが案外長いものさ

また、こうも言っています。

戦士ってのは最後まで立っていたやつが勝つんだ

本当に本当のことを言えば、

この4ヶ月は最高に楽しかった反面、相当に苦しい日々でもありました。

この年になれば学業とアルバイトの両立は、体力的にも精神的にもなかなか厳しく、難しく、かと言って、病気で働けなくなった家人の前で泣き言を言うわけにもいかず。

この教室に来て、みなさんと挨拶を交わし、笑い合うことで、どうにか乗り切れた4ヶ月でした。

悔しくてなみだが止まらなかった日がありました。
居眠りをしてしまい、みなさんにお気遣いいただいたこともありました。
激しいバトルの末、ケンカするほど仲がいいんだ、と言って笑い合えたこと、私はこの先、忘れることはないと思います。

ここで起きたすべてのこととその思い出は、私がこの先を生き抜いていくための大きな糧となることでしょう。

きのうやっとのことで3次元CADの試験に合格することができましたが、最初に思い描いたような目に見える成果は、私にはあまりありません。

ですが、

仲間と学ぶことがこれほどまでに楽しいと知れたこと。
私のような人間でもまだ社会に関わることができると信じられたこと。

みなさんと共に過ごすことで得られたこれらは、やはり私にとって大きな成果であることに間違いありません。

また、丁寧にご指導くださった先生方にも、心から感謝します。
いくつになっても学ぶことはできる。
そう信じさせていただいたことは、この先を希望を持って生きる光となりました。



最後に、これからの私の指針ともなった勇者ヒンメルの言葉をお伝えします。

僕はね、終わった後にくだらなかったって、笑い飛ばせるような楽しい旅がしたいんだ

いつかどこかでお会いした時、相変わらずくだらないことを言ってゲラゲラ笑っている私であれるよう、がんばって生きていきます。

そして、みなさんのこれからの人生のあちこちに、心安らぐたくさんのお花畑がありますように。
心から、願っています。


このような拙い自分語りに、最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。

終わります。



引用部分はすべて『葬送のフリーレン』より


わたし、がんばったな。
よく生きてる、と思う。



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