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【種牡馬四季報】NAR 2024年スタートダッシュと新種牡馬解説

競馬オタク・坂上明大が
四半期ごとに国内外の種牡馬事情を解説していきます。


~リーディングサイアー~

昨年6位だったマジェスティックウォリアーが暫定1位に。これはライトウォーリアが川崎記念を逃げ切って賞金1億円を加算した事が大きいが、それを差し引いても4位のホッコータルマエを上回る額の賞金を稼いでいるのだから勢いは確かだ。ライトウォーリア以外では大井のセイカメテオポリスが佐賀の重賞はがくれ大賞典を、船橋のギガースが川崎の新設重賞ネクストスター東日本を制している。後継種牡馬ベストウォーリアも20位にランクイン。アナコンダがネクストスター西日本を制し、昨年ゴールドジュニアを制したクルマトラサンもネクストスター東日本でギガースの2着。マジェスティックウォリアーはJRAのダートリーディングでも5位にランクインしており、今後の日本のダート競馬を牽引する父系になりそうな予感だ。

昨年首位のシニスターミニスターは現在2位。こちらもマジェスティックウォリアーと同じA.P.Indy父系に属し、6位のパイロも同父系の種牡馬だ。シニスターミニスターの産駒では川崎記念2着のグランブリッジ、JpnⅢ兵庫女王盃のライオットガール、姫路の重賞白鷺賞のラッキードリーム、兵庫ウインターCのタイガーインディが重賞を制している。

3位ヘニーヒューズは昨年5位からのランクアップ。セラフィックコールがダイオライト記念を完勝したのは記憶に新しいところで、ほかでは多摩川オープンをアランバローズが制すなど幅広いカテゴリーで堅実な活躍を見せている。後継種牡馬アジアエクスプレスも昨年12位から5位に上昇。重賞でも園田の菊水賞をオーシンロクゼロが制しており、マジェスティックウォリアー→ベストウォーリア親子と並び日本のダート路線を牽引する父系になりそうだ。

ホッコータルマエは昨年から変わらず4位にランクイン。大井の重賞フジノウェーブ記念をギャルダルが、高知の新設重賞レジーナディンヴェルノ賞をミニョンが制している。キングカメハメハ系はトップ10に4頭がランクインしたJRAダートリーディングほどではないものの、7位にロードカナロア、17位にドゥラメンテ、19位にリオンディーズが入るなど、地方リーディングでも強い存在感を示している。

ダートの大種牡馬エスポワールシチーの後継種牡馬ではエスポワールシチーが8位、スマートファルコンが12位、コパノリッキーが14位にランクイン。

傍流父系Macho Uno直仔のダノンレジェンドは順位は決して高くないが、各地で行われている新設の高額重賞ネクストスターを3勝。大物を出して父系を発展させられるかに注目が集まるところだ。

~南関東・リーディングサイアー~

南関東限定の種牡馬リーディングでもマジェスティックウォリアーが首位。NAR3位のヘニーヒューズは2位、同4位のホッコータルマエは3位と1つずつ順位を上げている。

NARトップ20には名がないが南関東トップ20にランクインしているのがエピカリスオルフェーヴルの2頭。エピカリスはサントノーレの京浜盃、オルフェーヴルはジャスティンの東京スプリントの1着賞金が大きい。

ちなみに競馬場ごとのランキングでは、浦和・船橋・大井の3場でヘニーヒューズが1位に君臨。川崎では川崎記念勝ち馬ライトウォーリアを出したマジェスティックウォリアーが1位となっている。

~新種牡馬 日本②~

・フォーウィールドライブ
BCジュベナイルターフスプリントなど芝の短距離重賞を2勝した芝スプリンター。父American Pharoahは史上12頭目の米クラシック三冠馬で、父系はUnbridled→エンパイアメーカーのラインに属する。母Funfairは芝のスプリンターで、本馬は母似の適性を現役時には示した形だ。American Pharoah×More Than ReadyはフェブラリーS連覇などダートGI3勝のカフェファラオと同じ組み合わせ。5代内にクロスがない血統でもあり、繁殖牝馬次第で芝馬もダート馬も出せそうな万能種牡馬だろう。

画像元:TARGET frontier JV

・ノーブルミッション
愛GIタタソールズGC(芝10F110Y)、仏GIサンクルー大賞(芝2400m)、英GIチャンピオンS(芝10F)と3カ国のGIを制した芝中長距離馬。特筆すべきは1つ上の全兄に史上最強馬としても挙げられるFrankelがいるその血統背景で、ソウルスターリングやモズアスコット、グレナディアガーズといったFrankel産駒の日本での活躍を受けて輸入された形だ。輸入前の産駒に米GIトラヴァーズSとジョッキークラブGC(ともにダート10F)を制したCode of Honor、米GIBCターフスプリント(芝5F)を制したNobalsといったGIウィナーが出ており、日本での産駒の適性も母次第で様々なタイプが出るだろう。

画像元:TARGET frontier JV

・ミスターメロディ
2019年高松宮記念優勝馬。Scat Daddy産駒のアメリカ産馬だが、父父ヨハネスブルグは日本でも種牡馬として繋養され、2歳戦や短距離戦に強い種牡馬として一定の成功を収めている。本馬自身も母方から北米血脈を受け継いでおり、産駒にも非凡なスピード能力を継承してくれるだろう。早期から芝ダートを問わず高い勝ち上がり率を記録しそうだ。

画像元:TARGET frontier JV

・フィエールマン
菊花賞、天皇賞(春)連覇と超長距離GⅠを3勝。伊GⅠリディアテシオ賞を制したフランス産馬リュヌドールと国内外で14戦12勝の競走成績を残した日本競馬を代表する歴史的名馬ディープインパクトとの間に生まれ、フランス血脈由来のスタミナと瞬発力が持ち味の名ステイヤーだ。欧州血脈主体の分、父につけていたような北米血脈主体の繁殖牝馬と合わせやすく、クラシック向きの活躍馬も数多く輩出してくれるだろう。

画像元:TARGET frontier JV

・ウインブライト
国内GⅠは未勝利ながら、香港のクイーンエリザベスⅡ世Cと香港C(ともに芝2000m)を制したステイゴールド直仔。ノーザンテーストのインブリードを持つ父の産駒にはドリームジャーニー=オルフェーヴル、レインボーラインなどがおり、自身が2ターンの中距離戦で好成績を収めた小回り巧者だったことからも、小回り中長距離向きの産駒が多く出そうだ。道悪馬場も大歓迎。

画像元:TARGET frontier JV

・アドマイヤマーズ
朝日杯FS、NHKマイルC、香港マイルと芝マイルGⅠを3勝したダイワメジャー直仔。Haloの3×5・5のインブリードを持ち、ダイワメジャー産駒の中でも軽い瞬発力を兼備していた点が本馬の魅力だ。また、ダイワメジャー産駒の牡馬としてはスレンダーな体つきだっただけに、特に母母Via Milanoを刺激した配合形からは長距離馬が出ても何ら不思議ではないだろう。

画像元:TARGET frontier JV

・シスキン
フェニックスS(芝6F)と愛2000ギニー(芝8F)というアイルランドの2~3歳GIを2勝したアメリカ産馬。父First Defenceは米GⅠフォアゴーH(ダート7F)を制したUnbridled系種牡馬だが、フォーウィールドライブとは異なりUnbridled's Songの枝葉から繋がるラインに属する。名繁殖牝馬Best in Showのクロスを持つ点はアーモンドアイやリバティアイランドといった三冠牝馬と同じで、父父Unbridled's Songはコントレイルやスワーヴリチャードなども持つ日本競馬への適性が非常に高い血。初年度はアクシデントがあり産駒数が少ないが、今後も要注目の万能種牡馬だろう。

画像元:TARGET frontier JV

≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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