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キタサンブラック&エピファネイアの配合のツボ、モーリス産駒の爆発タイミング

本記事では、YouTubeメンバーシップやnoteで推奨したクラブ馬のデビュー後の活躍を振り返りながら、種牡馬傾向などをまとめております。

≪坂上 明大(Sakagami Akihiro)≫
 1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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キングズレイン(百日草特別 東京芝2000m)

<推奨理由>
4代母Luv Luvin'に遡る欧州の名牝系であり、母母リッスンは07年フィリーズマイル、母タッチングスピーチは15年ローズSを制した。Nureyev≒Sadler's Wellsという急所は押さえつつ、Mill Reef≒Rivermanの6×5で父の鈍重さを軽減。ダンビュライトなど多くの活躍馬がその効果を証明しており、父の産駒全体の勝ち上がり率よりも10%以上の上昇が見込める。現状は薄手の馬体だが、晩成気味の血統から今後の成長は容易に想像でき、身のこなしの品の良さは現時点でも高く評価できる。骨格に筋肉が追いつけばさらに迫力のある姿が見られそうだ。

<レース評価>
枠の利を活かして中団馬群のインにつけ、残り300m手前では単独先頭に。スローペースのため着差は僅かだが、得意とは言えない瞬発力勝負を勝ち切った点は高く評価できる。価値ある1勝だ。

※下記記事は新馬戦後の血統評価。

スキルヴィング(2歳未勝利 東京芝2000m)

<推奨理由>
3代母ソニンクに遡る名牝系で、母ロスヴァイセはダート1400mで3勝。中長距離馬の父キタサンブラックに対してスピード豊富な母の組み合わせが良く、特に母母が持つHaloの3×4は父の俊敏さを増幅する効果が見込める。実馬は父似の雄大な馬体で迫力満点だが、それでいて重苦しさを感じさせない点は母とのバランスが取れた証といえるだろう。均整の取れた好馬体が目を引き、筋肉量も十分。芝・ダート兼用の中長距離馬として大舞台での活躍に期待したい。

<レース評価>
発馬で後手を踏み後方からの競馬。直線に向いてからは馬群を捌きつつ前との差を詰めていき、残り200m過ぎで単独先頭に。その後は流す余裕を見せながらも3馬身差の快勝。勝ち時計だけでも水準以上のパフォーマンスだが、上がり3F33.2も考慮すれば十分に重賞でもするパフォーマンスだっただろう。まだまだ底を見せておらず、年明けの活躍が楽しみな一頭だ。

キタサンブラック産駒の配合別成績(~2022/12/29)

キタサンブラックは体高172.0cm、引退レースである2017年有馬記念時の馬体重540キロと非常に馬格に恵まれた大型馬。安定した先行力と無尽蔵のスタミナを武器にGⅠ6勝を挙げ、2016、17年年度代表馬に輝いた名馬だ。ただ、種牡馬としては大柄な馬体を動かすための瞬発力が必要であり、スピード型の繁殖牝馬や父ブラックタイドが持つHalo≒Sir Ivor、つまりは父の全兄ディープインパクト的な瞬発力を引き出す必要がある。代表産駒であるイクイノックス(2022年天皇賞秋、有馬記念)は母父キングヘイローからDrone≒Halo≒Sir Ivorを注入しており、2022年アルテミスS勝ち馬ラヴェルは母サンブルエミューズからHalo≒Droneを受け継いでいる。純粋にHaloの血を母方に持つだけでも水準以上の勝ち上がり率を記録しており、この点は配合のツボの1つといえるだろう。

ただ、イクイノックスはトニービンNureyev、ガイアフォースとラヴェルはノーザンテースト、ジャスティンスカイはNumber≒Nureyevなど現OP馬4頭はHyperionFair Trialなどから父の良さを継続。さらに、勝ち上がり率でも水準を大幅に上回る好成績を収めており、決してスピード面を補えばいいという種牡馬ではないだろう。あくまで、父は先行粘着型の名馬だけに、底力についても継続する必要がありそうだ。

クファシル(2歳新馬 阪神芝1600m)

<推奨理由>
母母エアグルーヴ(96年オークス、97年天皇賞秋)、母グルヴェイグ(12年マーメイドS)という名牝系に生まれ、本馬は父にマイル王者モーリスを配した。ディープインパクト牝馬との交配では父の産駒全体の勝ち上がり率より10%以上の上昇が見込め、エアグルーヴ牝系との組み合わせでも牡馬3頭はいずれも勝利を挙げている。父譲りの心肺機能の高さを窺わせつつ、牝系由来の身のこなしには良血馬らしい品の良さを感じる。Hyperion色が強く、成長力にも期待が持てそうだ。

<レース評価>
気合乗り良く先手を取り切り、道中は折り合い重視の逃げ。直線に向いて一気にピッチを上げたが、ゴール前では後続に詰め寄られる形に。モーリス×ディープインパクトのエアグルーヴ牝系で心身ともに幼さも目立っただけに、今後の成長力に期待したい良血馬だ。

モーリス産駒のオープンクラスでの年齢別成績(~2022/12/29)

初年度産駒から2021年スプリンターズS優勝馬ピクシーナイトと2022年エリザベス女王杯優勝馬ジェラルディーナを輩出したモーリス。その他にも重賞2勝馬ジャックドールなど数多くの重賞勝ち馬を出しており、オーストラリアでもGⅠ馬を複数頭輩出するなど国内外で期待以上の活躍を見せている。

ただ、今年の2歳馬の重賞勝利はなし…。

しかし、これは悲観することではなく、そもそも上の2世代も2歳重賞では1勝も挙げていない。モーリス自身が4歳時に本格化したことと同じく、産駒も晩成傾向が強い。年を明けてからがモーリス産駒の本領発揮だ。

レヴォルタード(2歳未勝利 東京芝2000m)

<推奨理由>
母バウンスシャッセは14年オークス3着のほかGⅢ3勝の活躍馬。初仔は足元が弱く未勝利で引退となったが、名繁殖牝馬リッチーダンサーから受け継ぐ繁殖能力は見限れない。3番仔の本馬は父がエピファネイアに替わり、Sadler's Wells≒Fairy Kingの4×4を形成。さらにエピファネイア×ゼンノロブロイではTri Argo≒I Passが生じ、シーズンズギフト(20年NZT2着)など4/6頭が勝ち上がっている。母譲りの恵まれた馬格を誇り、父譲りの柔軟性も上々。スケールの大きさを感じさせる良血馬だ。

<レース評価>
掛かり気味の逃げ馬を掛かり気味に追いかけ、残り400m過ぎで先頭に立つ。その後もゴール板までほぼ失速することなく駆け抜け、水準以上の勝ち時計も計時した。ただ、気性面については課題が多く、上級条件では心身ともに成長が必要か。

エピファネイア産駒の配合別成績(~2022/12/29)

募集時の推奨理由にも書いた通り、エピファネイア×ゼンノロブロイは大物こそ出ていないものの、非常に勝ち上がり率の高いニックス配合。2022/12/29現在においても19頭中10頭が勝ち上がるハイアベレージを記録しており、推奨以後にも2022年京都新聞杯2着馬ヴェローナシチーや2022年アイビーS勝ち馬チャンスザローゼスなどが出ている。これは、エピファネイアの父母母Tri Argoとゼンノロブロイの母父母I PassがTom Fool、Eight Thirty、Royal Charger、Blue Eyed Momo≒Busanda、Alibhaiなどが共通することに起因し、今後も注目の組み合わせといえるだろう。

また、本馬と同じシンボリクリスエス直仔であり、多くの繁殖牝馬を集めたルヴァンスレーヴにとっても重要な血脈となりそうだ。


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