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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 第26話 対外国資本編10

はじめに

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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 第26話

 「さぁーて、マハルにはそろそろ目を覚ましてもらおうかな。」
 オレたちは本社が全焼してしまって帰る場所がなかった。というわけで、時折使っていた海岸工業地帯に持っている古い工場、と言っても滅多に稼働していない工場だし、海沿いだ。建物に傷みが激しく拠点として使うわけにはいかないが、他に代わる場所もないという工場にマハルを連れて行った。
 見た目だけだと反社会的な連中が見えないように始末しているように見えるだろうな、もっともオレたちはマハルを始末するつもりは『まだ』ない。何故なら、聖奈の居場所を吐いてもらわなきゃいけない。エミレートファイナンスグループの絶対的な資金力とトップダウン構造を考えたらだ、大まかに3パターンを考えなきゃいけねぇ。
 一つ、あの摩天楼のどっかに別の拠点を隠し持っている、地下なのか、近隣物件なのか。
 二つ、どっかにフロント企業、要はエミレートファイナンスグループとは分からない会社名で運営している場所に移動した。
 三つ、本部のある中東へ移送した。
 この中で本部移送は確率が低いと思っている。いくらエミレートファイナンスグループと言えども航空管制網を騙すわけにはいかない。コールサインが世界で決められているから、日本に来たかどうかは素人のアプリからでも丸わかりになっちまう。そこまで杜撰な仕事をする連中なら今頃、こんなやり方は世界的スクープになって終わってるはずだ。
 そして、仮に2択にしたところでエミレートの力なら建物同士を地下で繋げるなんてオレたちがスーパーで298円の商品と348円の商品で348円を選ぶようなものでちょっとした出費程度にしか思っちゃいねぇ。地下は見えねぇからどうしたって情報がねぇと出たとこ勝負したところであっという間に終わっちまう。だから、マハルを畠山や中山が連れてきてくれたのは大助かりだ。末端じゃしらねぇこともある程度は知ってるだろうからな。
 車からマハルを引き摺り出すと、オレはマハルの顔を蹴った。
 「おはよう。」
 「シィィィット!最悪のモーニングコールです、鼻が高くなたらどうしてくれますか!」
 「鼻高くて良いじゃねぇか。なぁ、マハル。これ以上手荒なことはしたくねぇ。」
 「は、そう言えば私はスティルネイキッド・・・手荒なことってまさか!」
 「ケツさわんじゃねぇよ、誰がつっこむんだそんなとこによ。」
 「ホッとしました。貞操の危機。」
 「貞操じゃなくて命の危機だな、なぁ、聖奈の居場所を教えてくれないか?手荒な真似はしたくない、お前はあくまで中間管理職・・・ボスと部下からの板挟み。辛いのは分かってるつもりだぜぇ?」
 「・・・言えません・・・。」
 「そっか、手荒な真似はしたくなかったが、話したくないんじゃ仕方ねぇな。畠山。」
 「うす。」
 「締め落として海に。」
 「うす。」
 「ウェイト!ウェイトです、大河さん!オッケー、アンダースタンド!ニードトゥトーク!」
 「畠山、ちょっと待機。」
 「うす。」
 「大河さん、あなたもマネーに関わる人、ディールしましょう?どうですか?」
 「取引ねぇ。内容次第だ。」
 「私は知っていること全て聞かれた事は話す、あなたはシンプル、ドントキルミー。どうですか?」
 「ふむ、それなら悪くないな。安心しろ、オレたちが聞きたい事に答えてくれるのなら身の安全は担保する。」
 マハルを殺したらオレたちに手段が何もなくなる。何がどうあっても生きてもらわなきゃいけないんだから、元から始末する気はまだなかったんだが、こうやって脅して条件が得られたのだからコケ脅しも大切だな。エミレートファイナンスグループに限らず、金に携わる人間はなぜか契約や交渉が成立すると律儀に守る。オレもそうなんだが、金関係の人間にとっては聖域なのさ。ここを守れるやつと守れないやつで信用度も違えば社会的な立ち位置も変わるってなもんだ。マハルはおそらく天然だがこういう交渉を破るやつではないのは近くで関わって分かっている。この勘が衰えたらこの業界でやっていく事は出来ねぇ。
 「ジーザスクライスト・・・。」
 「なんだ、お前キリストなのか?」
 「大河さん!絶対に絶対に人前では言わないでください!言ってしまうと間違いなく私だけでなくここの人たちマストトゥーダイ!マイトップシークレットです!ボスの住所よりもシークレットです!」
 「マハル、ボスの住所知ってるの?」
 「拠点の一つだけですが、アブダビのサーキットから北東です。タワーの上の方ですね。フロアは我々は分かりません。」
 「・・・黙っといてやるよ。」
 「それと、聖奈さんの居場所ですが!エミレートファイナンスの入ってたビルの地下に通路があります!その奥に部屋が沢山あります、どこかは私知りませんが、そこのどこかです!」
 「そんなに話すなんて、キリストってのがよっぽど・・・」
 「大河さん!肩凝ってませんか!靴舐めます!土下座します!」
 「いや、それは良いんだが・・・。」
 「何でもします!」
 「護衛はいるのか・・・?」
 「はい、います!沢山!精鋭がいます!聖奈さんはトップターゲットに近いので、すぐに武装してる連中がいるはずです!」
 口を滑らせてからというものマハルの口調と目に嘘の影はなくむしろボスやエミレート以上にオレを警戒している様子だ。正直、気圧されちまうというか拍子抜けというか・・・どーもマハルはオレと合わないような合うような、よくわからんヤツだ。まぁ、地域柄宗教を隠さなきゃいけないストレスには同情するがな。
 梅野は目を見開いて苦笑いを浮かべているし、クールな中山は目を覆って笑いを堪えているように見える。畠山は変わらずだが、マハルの変貌ぶりに警戒を解いているのがオレでもわかる。ただ、マハルクラスにも確定的な情報を下ろしていないのがエミレートらしい。ニードトゥノウの原則がかなり厳しく敷かれているな。
 ここでオレたちはマハルに服を着る許可を与え、畠山と中山が見張りながらだがヤツの拘束を解いた。梅野とオレはある作戦を練った。
 「なぁ、梅野。さっきのマハルが言った住所メモったか?」
 「えぇ、ここに。」
 「あのな、お前に頼みがある、お前しかできない事なんだが・・・・。」
 オレは梅野に作戦と頼み事を説明した。
 「確かに・・・。それが出来たらエミレートファイナンスはグループごと消えますね。」
 「だろ?やってみる価値はあると思うんだ。」
 「分かりました。やってみます。」
 「現場はオレたちに任せろ、お前はそっちを渾身の力でやってほしい。この戦争、終わらせるには、梅野。お前に掛かってるかもしれねぇぞ?ふふふふふ、オレはお前を信じている。」
 「分かりました。全力でやります。」
 梅野に必殺のミッションを託しオレたちはマハルを再度引き摺り車に乗せてエミレートがあった建物の地下に向かう事にする。
 「聖奈、待ってろよ。今、助けに行くからな。」
 だが、この時、聖奈はとんでもない苦境に陥って居た。そして、そのことはオレはまだ知る由もなかった。

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