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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 第30話 対外国資本編14

はじめに

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裏社長大河の悪魔版就職斡旋社 第30話 

 「先生。」
 「お、畠山君か珍しいって背中にいるのは聖奈くんか!?どうして裸に?!細かい話はあとだ、上腕骨が粉砕骨折しているかもしれん。これはレントゲンと精密検査をしよう。私の古巣の大学病院に紹介して私も行くから待っておれ!」
 あぁ・・・聞き覚えのある声、先生のクリニックかな、ここ。私は大河に助けてもらった。また助けてもらった。大河のお荷物になってるんじゃないかって気がしてしまう。私が危機になると助けにきた彼も危機になる。それは当然のこと。
 大河が無事だと良いんだけど、助けにきてくれるって信じてて、いざ助けられると自己嫌悪する自分のメンタルが嫌で嫌で仕方がない。先生は私と大河をいつも可愛いがってくれる、だから怪我してここにきたのはメンタル的には良かったかもしれない。
 先生は腕も立つし優しい上に聡明で理解も深い。間違いなく私たちの本業のこともわかってるのに知らないふりをしてくれてるし周りにも言わない。だから信じられる。大河も私も怪我した時には先生にいつもお世話になる。先生にも迷惑かけっぱなしだな。
 それに畠山。畠山は乗り合いの船の船長を殺しちゃってここに来た人間だけど根はとっても優しい。不器用で口数は少ないけど、私が見てると雰囲気から言いたいことが滲み出てきて分かっちゃう。みんなに助けられて私はここにいる。だから感謝しなくちゃいけない。みんなに。
 分かってる。私は本当は裏で生きていけるほどの力もないし大河っていう旗印の後ろでイキってる小娘なんだって。裏で必要なのは絶対的な力。それは経済力でも体力でも精神力でも何でもいいんだけど何か飛び抜けてないといけない。私はチヤホヤしてもらってるけど、それは若い女って部分も大きくて。実際大河が居なかったら誰かの愛人とかただのヤリ捨てられちゃうその他大勢と変わらなかったと思う。
 「準備が出来たぞ、車に乗って行こう。私が運転したら早い、畠山くんは聖奈くんを頼むぞ、その腕では後遺症も残るかもしれんほどのひどい骨折だ、早急に処置せねばならん。」
 「うす。聖奈さん。」
 「はたけぇ、ありがとう。」
 「畠山っす・・・!」
 「照れなくても良いじゃん、ありがとう、カッコいいよぉ。」
 「・・・うす。」
 「畠山くんは不器用だが、根が素直な人間だからな!色眼鏡の人間では見抜けんだろう。それよりも聖奈くん、君は多発外傷に骨折に伴う出血性ショックの可能性すらある、見た目以上に一刻を争う。すぐに向かうから異変があったら言うんだぞ。」
 「せんせぇ・・・分かりました。」
 先生は車をぶっ飛ばしてあっという間に大学病院に着いた。大学病院なんて初めてだなぁ。今まで、先生のところで処置できる程度の怪我だったからなぁ。
 「救急で頼む!」
 病院に着くや否や先生は大学病院のスタッフさんに大声で伝える。
 「あれ?先生じゃないですか、後ろのは娘さんですか?!何でこんな姿に!?」
 「細かい経緯は後で私から伝える、上腕骨の粉砕骨折疑いだ、間違いなく骨折はしているんだが、折れ方によっては大きな後遺症に繋がりかねん、まだ24-25の女の子だ、可能な限り綺麗に治してやりたいんだ。」
 「分かりました、外傷もありますね、警察に通報しますか?!」
 「彼女の旦那が今、処理に当たっている、そういうのはしなくていい。外傷も多くてな、ショック対策に補液でクラッシュシンドロームを抑制してくれ。」
 「分かりました、すぐにレントゲンとMRI手配します!」
 「頼むぞ、私も補助で入る。」
 「分かりました。」
 そこからは早かった、すぐに救急患者として画像撮影をすぐにしてくれた。折れてる腕を動かすのは地獄だったし、気を失いそうなほど痛かった。あれよあれよと画像検査して点滴を繋いで血液検査をして。
 結論としては上腕骨の粉砕骨折。骨片が肉や神経や血管を傷つけてしまってるようで、血流が大幅に阻害、不足して酸欠状態に長時間なっている影響で手術してリハビリをしても完璧に戻る保証はないって。でも、これくらいで済んだことをラッキーと思わなきゃいけないんだ。故意に折られた腕だからとんでもない折られ方だったんだろうね。
 殴られたり蹴られたりした方は全身打撲。でも、重度の打撲じゃないから時間はかかるけど改善していくだろうって。骨折が痛すぎて打撲の方の痛みがいまひとつ分からないのは幸せだったかもしれないね。
 こうやって検査してる時の合間の時間でも気になるのは大河のこと。彼のことだから、冷静な部分を残してるつもりで熱くなってると思う。普段ならしないミスとかもしちゃいそう。倒した後の敵の意識を確認してないとか。
 「聖奈くん、やっぱり粉砕骨折だったよ、本当は腕の腫れや炎症が落ち着いてからになるのだが、君の場合は折れ方がひどい。それで損傷している組織や血管が致命傷になりかねない。だから、感染とかな、再手術、再々手術も必要になるかもしれんちょっとした賭けになるが一回手術をする。運が良ければ手術は一回で抗生剤投与でうまくいくかもしれん。何はともあれ、この腕を放置するのは医療職として許されないことだと思う。どうだ?」
 「先生に任せます・・・。」
 こうしてその日のうちに手術が決まった。大手術で普通の骨折の固定術とは全然違う、時間のかかる大掛かりなものになるそうだ。きっと私が寝てる間に大河の方もドタバタと事態が変わっていくだろう。その間に戦力になれないし、支えにもなれないのが悔しいけど、早く治して大河が帰ってきた時の為に待ってるね。
 大河、無事に帰ってきて。2人とも治ったら。無理のない仕事を選んでたくさんいちゃちゃしていっぱい子ども作ろ。
 手術の同意書を書いて、私は麻酔によって眠りに落ちた。次に目が覚めた時には大河が近くにいてくれると良いな。

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