第63回目「ASKA Terminal Melody」(4月17日放送分)

先週に引き続き、今回のゲストは尾崎裕哉氏。
裕哉氏とASKAとの初対面は、ツアーのリハーサルの時だったという。当時、音楽をやりたいけど、父と歌声が似ていることもあってどうしたらいいのか悩んでいた時に、ツアーのスタッフの人から「リハーサルがあるから見に来てみなよ」と誘われたことで、出会いを果たしたそうだ。

最初のASKAに対する印象は、「肩幅が広く、腕が太い」という見た目から、男気が強くて怖いイメージがあったという。だが実際は、スイートな声で曲を歌う温厚さを感じさせたそうだ。そこで、裕哉氏は音楽を始めようかどうかの悩みをASKA本人に打ち明ける。父を受け継ぐ2世アーティストとして、周りからの偏見や不安があり、かなりのプレッシャーがあったのだろう。

そんな裕哉氏に対して、ASKAは次のような𠮟咤激励を送った。
「声が似ているのは当たり前じゃないか。お父さんの血を引き継いでるんだよ。お父さんに憧れて音楽をやっている人はたくさんいるけど、君は違う。声はお父さんから譲り受けたDNA。そこをマイナスに感じちゃダメだ。君の声は、モノマネではなく、お父さんの血を引き継いだ声なんだよ。僕は、君の『I LOVE YOU』を聴きたいな。デビューする時が来たら、お父さんのファンを泣かしてあげなよ。そんなことができるのは君しかいないんだから。」

これをきっかけに裕哉氏は勇気を振り絞って音楽の世界へ飛び込んだ。ASKA本人は「文字にしたら上から目線になってしまうな。」と先週の自身ブログで述懐していたが、やはり人間としての温かみを感じさせる語りだ。このような人柄が、自身によって生み出された数々の名曲の根底となっているのかであろうか。

そして今回、裕哉氏が選んだ一曲は「MIDNIGHT 2 CALL」                              
これはASKAソロでは1988年に発売された2枚目のシングルであるが、元々は1984年にシブがき隊に提供した曲である。シブがき隊のメンバーである布川敏和が、東京の中目黒に引っ越したばかりのASKAの家に遊びに来た時に、この曲を作るのを頼んだという。この曲はASKAファンの間ではとても人気が高く、ソロで好きな曲だと1番としてる人も多い。

この曲は失恋ソングで、裕哉氏は歌詞がとても気に入っているという。僕は裕哉氏とは対照的に普段は歌詞よりもメロディを好んで聴いているが、今回は歌詞に注目しながら聴いてみた。すると、まるであるドラマの世界に入り込んだかのような錯覚に襲われた。

時計の針の音がはっきり聞こえる、町や人々がすっかり寝静まった真夜中の時間帯に、何年も前に別れた女性から主人公の男性に電話がかかってくるところからストーリーが始まる。女性は何があったのか、涙声で今すぐ来てほしいと男性に懇願する。そこで男性は、あの時女性の方から別れを切り出したのにこんな時に呼び出すのは虫が良すぎるという一方で、本来の自分の優しい心から再び会いに行くべきだという葛藤に襲われる。

僕はこのシーンを表した次の歌詞がとても気にいった。             

「今夜は無理だと言いながら 片手は上着をつかんでた」          

言葉では「無理」と言いつつも、心と体は女性に向けて動いているのだ。こういう繊細な男性の描写には、作詞したASKAならではの人柄と才能が詰め込まれているのであろう。

やはり作品と作った本人には結びつく部分があるとつくづく感じさせる。

来週24日は、月に一度のASKA本人登場回だ。 こうしてブログにまとめるのは本当に楽しい。



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