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essay『人は苦手、だけど人が好き』

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静かな憂鬱とプラトニックな希望を行ったり来たりする日々の、世界滅びないかなぁと思った昨日と誰かのふとした言葉に救われてしまった今日の話。煩わしくて愛おしい、人と人との分かり合えな… もっと読む
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29

29

そういえば先月、29歳になった
今年は20代最後の1年となる

孔子は言ったそうだ「三十にして立つ」

これからどうしたい?どうなりたい?
なにをしたくて、なにをしたくない?

休みの日の夕方
暮れはじめた西の空をぼんやり眺めながら
ふるさと納税で届いたジャパニーズワインを
ひとり空けて

ふわふわした頭で
やけに大きく響く鼓動を静かに感じながら
何度も自分自身に問うてみる

いまは夜も更けて21

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点と点を繋ぐように

点と点を繋ぐように

先日、お客様と施術中にお話をしていて
なるほど、と今まで見ていた景色が
ふと拓けた瞬間があった

「名探偵コナンってラブコメなんですよ」

主題歌のイントロを聴いただけで
どの映画版のバージョンなのか当てられるという
とんでもない特技(これはもはや才能)をお持ちの
コナン好きのお客様はそう言って笑っていた

毎年この時期になると映画が公開されて
もはや春の風物詩ともいえる『名探偵コナン』

この日

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待ち合わせは

待ち合わせは

朝、いつもより少し早い時間の電車に乗る

ちょうど2方向に分岐した丸の内線が
1本に合流する最寄駅

5分違うだけで発車駅が違う車両が来るので
いつもより少し早い時間の電車は
目算で乗車率115%ほど

いつもの余裕のある車内と打って変わって
ぎゅうぎゅうに混んでいた

寿司詰めにされた車内の中程には
ベビーカーを畳んでグズる子供を抱き抱える
お母さんがいて

「すみません、すみません...」と

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自由に生きたい、と人は言うけれど

自由に生きたい、と人は言うけれど

「自由に生きたい」ということを
今までたくさん読んで、観て、出会ってきた
フィクションの中の登場人物たちは言っていた

彼ら、彼女らの背中を追いかける

どう考えてもたくさんのものに拘束されていて
朝、出勤する反対方向の電車に急に飛び乗ったり
なんて到底できる気もしない僕たちは
「自由に働きたい」ということを
合言葉のように夜な夜な口ずさんでいる

自由ってなんだろう

会社に縛られたくない、依存

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健康的に生きる

健康的に生きる

「simple is the best」

どこで知った言葉なのかも
だれが言っていた言葉なのかも知らないけれど
なぜか、だれもが知っているこの格言

シンプルこそが至上のものである

無駄を削ぎ落としたものにこそ
最上の洗練が宿る

本当にそうだろうか?

そんな問いに出会ってしまった最近の話

ここ最近は建築がおもしろいなあ、なんて思って
建築史について勉強してみたり
都内の有名な建築を少しず

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なにをするかで世界と繋がる

なにをするかで世界と繋がる

さいきん、納富信留さんの著書
『プラトン 理想国の現在』を読んでいて
現代人がプラトン哲学(主に主著『国家』)を
読む意義とは、みたいな問いに対して
あーでもない、こーでもない、と考えていた

基本的人権という概念、
法治国家というシステム、民主主義という思想、
そしてそれらをうまく乗りこなせない人類、
そんな時代に"理想"を語るプラトンが果たす
役割とは...

そんな、明確で簡潔な結論のないこ

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ピッチャーであり、同時にバッターであるような矛盾

ピッチャーであり、同時にバッターであるような矛盾

さいきん建築に興味がわいてきて
建築史について勉強してみているときに
モダニズム建築が抱える哲学的な問いに出会った

『建築は"自律的"であるべきなのか』

形而上学的な領域で
解像度荒く、ぼんやり薄目で概念を眺めると
どうやら建築は哲学的で、哲学は建築的らしい

ここでいう"自律的"というのは
18世紀ドイツの哲学者カントの哲学に
由来していて、とても小難しくて抽象的なので
ふにゃふにゃにほどい

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依存してしまう私たちへ

依存してしまう私たちへ

なにかとか、だれかに依存してしまうことって
悪いことなのだろうか

したくなくてもしてしまう人にとっては
それはきっと苦しく、忌むべきことで

したくてもできない人にとっては
たぶん羨ましくて、少しだけ悲しいこと

依存の善悪と人の在り方のバランスは
とてもぐらぐらしていて難しいと思う

たった1人だけで生きていては
主体も他者も、存在も非存在も
なにもかにも分からなくなってしまう
ちっぽけで寂し

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ため息の、その次は

ため息の、その次は

ため息の、その次が大事なんだと
ここ最近ふと気づかされた気がする

はぁ、

と吐いたため息を
ため息のままに止めてしまうのか
その次にもまた懲りずに酸素を吸い込んで
静かな深呼吸にしていくのか

吐いて、吸って、の循環だけは
どうか止めないようにと
本の中のもはや息をしていない哲学者たちは
静かに淡々と語りかけてくる

ため息の、その次は
ニーチェの言う「力への意志」であり
デリダの言う
「決定

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アウフヘーベン、しない

アウフヘーベン、しない

『世界に価値のない人など
 ただの1人も存在しない』と

『自分にとって価値のない人は
 この世界に存在している』は

矛盾しつつも両立していると思う

別に綺麗ごとを話したいわけではないし
個人的な恨み辛みが積もっているわけでもない

でも、声を大にしては言えないけれど
そんな実感がある気がしている

前者だけが真実なのだとしたら
僕たちはずいぶん多くの人たちを
許さなくてはいけなくなるだろう

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ハーゲンダッツを食べきれないくらいの憂鬱

ハーゲンダッツを食べきれないくらいの憂鬱

少し前に友達と中目黒で飲んで
酔い覚ましに夜の街を散歩していたときに

その友達から
"本の中に答えを探しているような人"
と言われた

うん確かに、言い得て妙だな
と我がことながら思った

その友達(正確にはその友達の友達)は僕に
「本を読むのをやめれば?」とも言っていた

そうだね

そうできるなら、そうしたい

プラトンに言わせればそれは
『パルマコン』的なものなのかもしれない

治療薬であ

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ゆらぐ

ゆらぐ

雨の音が心地良かったり
川の流れに耳を澄ませて癒されたり
樹々のざわめきに心が落ち着いたりするのは

『1/fゆらぎ』という
僕たちの生体バイオリズムに適合した
ちょうどよい"規則的に不規則"な音に
脳が親和性を持っているかららしい

規則的に不規則、考えてみれば変な言葉だ

極悪な天使とか、最善の妥協点とか
神様みたいな良い子(=人間失格)とか
その内側に自己矛盾を孕んでいるような
そんな、心が

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信じられるものを一つだけ

信じられるものを一つだけ

信じられるものが一つだけあればいい

ただ一つだけあれば
それだけで生きていける

個別案件的に一つひとつ対処して
世界の多様性と複層性と
絶えず流転していく刹那の無常感を受け入れて

必要/不要、善/悪の
形而上学的二項対立ではなく

イデア論的で超越論的で、否定神学的な
絶対普遍の真実でもなく

ただ、世界の在りのままを愛していくのは
僕にはずいぶん難しくて、とても息苦しい

どんなことがあっ

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わがまま

わがまま

他人を傷つけないで生きることは
出来るのだろうか

なんて考える

「いや、無理でしょ」
って言う人にも出会ってきたし

「考え続けること自体が尊いのかもね」
って言う人にもごく稀に出会ってきたりもした

どっちなのかはまだ分からない

けれど一度、巡っている思考を一休みさせて

ただ静かに生きることを願う日常で
ひとつだけ、わがままを言ってもいいとしたら

他人に傷つけられないで生きたい

この

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