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【読書メモ】ユニクロ

やはり、その問いが肝か。
「ユニクロとは何か」「ユニクロの服とは何か」

ユニクロが事業の節目を作ったのが、この問いであることに深い感銘を受けました。

ユニクロの創業期から現代までを詳細につづったドキュメントです。著者は杉本貴司さん、日経新聞の記者です。綿密な取材で、柳井さんをはじめとした人物一人ひとりの葛藤がつづられています。

葛藤や挫折からの学びが人生を豊かにする

人も会社も葛藤やときに挫折があって歩んでいくのだと思います。読んでいるうちに"Fail fast, learn a lot"という言葉を思い出しました。ジェームス・ダイソンの言葉です。経験から学ぶことが、成功の原則なのでしょう。柳井さんの哲学もまた同じだと理解しました。

このとき、何を学ぶのか。ここでいう学びとは何か。
私たち人間は、生物学的には脱皮しませんが、「一皮むける」節目を経験することがあります。本書でつづられているのは、そうしたユニクロとリーダーたちの脱皮の物語です。

脱皮の節目で問われるアイデンティティ

その脱皮において、常に問われていたのが「ユニクロとは何か」「ユニクロの服とは何か」という問いです。ただ事業をするのではなく、ただ生きるのではなく、「私たちは何者なのか」というアイデンティティを探求し、再定義することが、節目における学びです。

経営学の用語に「組織アイデンティティ」というものがあります。組織アイデンティティとは、「我々はどのような存在であるか」「我々はどのようなビジネスを行っているか」「我々は何になりたいか」といった3つの問いへの答えです。社員が共通の価値観や信念を共有することで、協力しやすい環境が生まれ、組織全体の生産性向上に繋がると言われています。

また、以下のようなときに、組織アイデンティティを明確にする機会が生じるとされています。

1.組織の形成時。創業や新組織の立ち上げ期
2.創業者や中興の祖が組織を去ったとき
3.組織の目的を達成したとき
4.組織が急成長して様々な選択肢が広がっているとき
5.主要な子会社や部門の売却やM&A等によって他の異なるビジネスを買収したとき
6.組織の縮小の局面

「ユニクロ」に描かれているのも、この6つの節目の物語です。
きっとみなさんの会社やみなさんの人生にも同様の節目があるはずです。その節目は、その時点では分からない。いつも事後的に分かるものです。だから、いつも振返る。その対話には仲間が必要です。私たちが組織をつくる大きな目的はそうした対話による脱皮をするためなのでしょう。

誰しもが「私たちは何者か」と問うことができる

事業や人生には、成功も失敗もあります。このとき、一喜一憂するのではなく、自分たちはどうありたいのかと問い、学ぶことが大切なのだということをユニクロの物語は教えてくれます。

それは、柳井さんだからできることと思うかもしれません。でも、柳井さんも最初は何者でもなかった。それどころか、無気力な青年でした。

誰しもが「私は何者なのか」という問いを持つことができます。コンサルタントとして、成功を支援するのではなく、成長を支援することが私の使命です。お客さまにも、仲間にも、自分にも「何者なのか、何者でありたいのか、何者として憶えられたいのか」を問いかけていきたいと思います。

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