見出し画像

孤立した母親に手を差し伸べたのは「ベイビーブローカー」だけだった【映画「ベイビーブローカー」】

描きたかったのは韓国の闇社会のリアルではなく、救済措置としての赤ちゃんボックスはあっても根本的な女性の孤独という支援は何も行き届いていない現実だったと思える。

あらすじ
赤ん坊をこっそり連れ出しては、新しい親を見つけて謝礼を受け取る違法な商売をしていた2人の男。そんな彼らがひょんなことから、我が子を手放した母親と共に養父母探しの旅に出る。

韓国では実親以外の養子縁組の出生届が認められなくなってから赤ちゃんボックスへの預け入れが急増しているらしく、そこから生まれているのであろう裏社会の闇と混同されている。

タイトルがそれなだけにブローカーとしての闇の部分を主要に描くこともできたが実母も養父母探しの旅に出ながら、親子と家族の形に向き合う是枝色の強いロードムービーになっている。

日本人が作っている分脚色も多少あるのだろうが、韓国も日本のように父性家族の価値観は強く父親がいないことでの不都合な部分は社会的にも多いのだろう。

男性は社会に上手く進出できないことへの悩みと同じように、女性も社会進出の新たな権利を担いながら母親としてのアイデンティティと一人で背負わざる得ない孤独感が常にあるのも聞く。

この作品の母親の事情はストーリー上少し極端な事情を持ちつつも貧困であること以外に複雑な諸事情で孤立した女性が匿名であのポストに向かい救済を求める。

その中で張り込んでいた警察は一般社会で目にする厳しい意見を彼女に放つ側の人間であり、反対にブローカーは旅を共にしながら彼女の孤独のSOSに気づき手を差し伸べていく。

ポストが存在するということは預けたくはないが孤立していく女性の本音に耳を傾けている人は少なく、つながりやすい支援は中々存在得ていない現状を描いていたと思える。

ブローカーの男二人が執拗に赤ん坊の育児や裁縫仕事を担っていたのも今の社会の風潮を尊重している演出であったが、そこから彼女自身も変わっていく意味でも藁にもすがり最後まで寄り添った形は彼らの存在だけだったということになる。

最後もあのような血縁関係にない新しい形の提示であったが、フィクションが最後まで強かったというのもわかる。それほど根本的な解決に繋がる社会の救済はなく、違和感を持ってしまうのならまだまだ孤立しやすい社会の現状について向き合えていない。






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?