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PC-8201 - NECが試みたハンドヘルドPC

ハンドヘルドコンピュータと呼ばれるモバイルデバイスが登場した話は以下の記事に書きました。。

HC-20 - ハンドヘルドPC登場

これに刺激を受けたのか、他のメーカーも携帯できるPCという姿を模索し始めます。小さな液晶画面と電池で動きフルキーボードを搭載しているというのは共通でしたが、電卓から進化したポケットコンピュータとの境界は徐々に曖昧なものになっていきました。

ハンドヘルドコンピュータ

EPSONは、先のHC-20を1982年に発売した後に1984年にはHC-40およびHC80/ 88と後継機を発売し続けましたし、1983年にはカシオからFP-200、キヤノンからはX-07といった斬新な製品を発売します。このような電卓であるとか携帯機器の経験のあるメーカーがモバイルデバイスに挑戦していたのですが、当時の日本パソコン界の王者、NECからもPC-2001がリリースされ、この分野へ参入してきました。

PC-2001 - NECのポケコン

ただPC-2001は業務用ソフトを用意するなど、持ち運べるパソコンとしての特徴を活かそうと試みたものの、すこしばかり中途半端なところもあり、思ったようには売れなかったようです。そこで翌年の1983年3月に、今度は少し大型のPC-8201というハンドヘルドという名に相応しい機種をリリースしました。

PC-8200シリーズ

液晶の画面はまだモノクロではありましたが、40文字✕8行で240✕64ドットのグラフィックとしても扱えました。キーボードはテンキーこそありませんでしたが、ちゃんとしたJIS配列のキーボードで、これならブラインドタッチもヘイッチャラです。本体の大きさはほぼA4サイズ、重さは1.7キロ、乾電池で18時間程度動かすことが出来たようです。さらにメモリはCMOSなので電源を切っても結構長く内容を保持できたようです。

CPUはCMOS版の8085でROMは32K、RAMは16Kで、それぞれ本体内で64Kまで拡張できるようになっていました。BASICはN-BASICをベースとしたN82-BASICで、N-BASICで作られたカセットからの読み込みも考慮されていたのが特徴です。他にも通信接続が考慮されており、端末ソフトもROMに入っていました。

NECが発売したハンドヘルド・パーソナル・コンピュータ「PC-8201」

NEC-PC-8200シリーズ

NECは、どうやら電池で動くデバイスの経験が不足していたようでPC-8201は元々は京セラで開発されたもののOEMだったようです。ほぼ同様の仕様のものがTRSで有名なタンディと、タイプライタで有名なオリベッティから出ています。

PC-8201 (NEC) 1983年 [NEC(PC-80,88,98)]

NEC PC-8201 (外観編)

PC-8201 (NEC) 1983年

オプションではありますが、漢字ROMやワープロソフトも用意されており、シリアルから音響カップラに接続したり他のPC(やワープロ専用機)とデータのやり取りも出来ました。FDDやCRTも接続することが出来、バーコードリーダーまで用意されていました。

NEC ハンドヘルドコンピュータ PC-8201

デザインはアラン・ケイが提唱したパソコンの理想を示したダイナブックのイメージがあります。持ち歩くことが出来、いつでもどこでもパソコンを使うことが出来ることを目指していたのかもしれません。

ダイナブック

こうなると当時盛んにダイナブックを紹介していた月刊アスキーが思い出されるのですが、どうやらPC-8201も社長の西氏が一枚絡んでいるという噂も単なる噂ではないのかもしれません。いずれにしてもNECはハンドヘルドという世界に踏み込み、この機種はその後のノートPCへの足がかりになったことは間違いないでしょう。

NECハンドヘルド・コンピュータPC-8201の奇妙な進化

モバイルPCの原点 PC-8201から理想を展望する:ブロックdeガジェット by 遠藤諭 特別編

実のところ、PC-8201は話題の割には、NEC以外からソフトが出たという記憶もなく(内部資料があまり出回っていなかった?)、パソコンショップではよく見かけたものの、使っている人を見た覚えはありません。通信という用途はまだ一般的では無かったですし、価格が安いとは言えなかったこともあり、そもそも持ち歩いて使うにはポケコンの方がよほど使い勝手が良かったです。

デザインに憧れはあったものの実際に使ってみると、かゆいところに手が届いていない感じはあったように思います。漢字の環境も用意されていたとはいえ、まだまだ手軽につかうというには力不足で、外出先でデータを交換するにもケーブルで接続するのはなかなか難しく(ソフトから直接操作できることは滅多にない)、通信も一般的にはなっていなかったので、これらの制約が少ないアメリカでの使い方が羨ましかった気もします。

ヘッダ画像は、以下のものを使わせていただきました。
https://commons.wikimedia.org/wiki/File:NEC_PC-8201_001_JPN.jpg
ignis - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=671939による

#レトロPC #NEC #PC8201 #ハンドヘルドコンピュータ #京セラ #ダイナブック #アスキー  

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