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星野 富弘氏作 「山笑う」 富弘美術館 笑う山々の余韻と共に春の花々と言葉を心に

星野富弘氏の、穏やかでありながら深みのある言葉の添えられた花の絵。これらの作品は群馬県の山の登山口に飾られていることが多く、群馬の山々を愛する人々にはお馴染みのものです。そんな星野氏の美術館があることを恥ずかしながら最近まで存じ上げませんでした。つい先日、美術館の存在と共に、「山笑う」という名の特別展が開催されていると知り、訪れたいと思っていました。
山笑うとは私の好きな言葉。私の好きな山の姿。

 春山淡冶而如笑
 夏山蒼翠而如滴
 秋山明浄而如妝
 冬山惨淡而如睡

中国の郭煕さんの言葉とされています。

ゴールデン・ウィーク中、会津に訪れた帰路に立ち寄ろうかとも考えていたのですが、経路上に日光があることから、その混雑を嫌って回避。ようやく5月11日に訪れることができました。

訪れる前に、せっかくなので赤城山を東側から散策。まさに笑う山を堪能して、その余韻を纏って美術館を訪れました。

赤城の笑う山々
赤城の笑う山々
赤城の笑う山々
赤城の笑う山々

「山笑う」という特別展は、山そのものではなく、星野氏の作品の内、山笑う春の代表作品が展示されています。そういった意味でも、笑う山々の喜びに身を浸した後に、星野氏の言葉と花々に会いにいくのが、その魅力をより心に響かせることができたように思います。

館内は写真撮影が禁止ですので、私の拙い感想のみのご紹介となります。

前述の登山口の作品には親しみ、その柔らかく温かい作風に惹かれていたものの、作者である星野氏のプロフィールは全く存じ上げずにおりました。手足の自由を事故により奪われ、口に筆をくわえて描かれた作品群であることも。
そこに書かれた言葉は、それを知った上であれば尚更に心に深く、今まで感じていた以上に重く響きます。そして花々を愛でられるその優しい眼差しの裏の苦しみも。

一方で、そのような不幸な生い立ちを抜きにして、ただ虚心で作品に対して、言葉を読み、優しくも深みのある花々の姿を愛で、あるがままに心で受け取ったとしても、その魅力が減じることはないように感じました。
ただ優しく、心を解きほぐされるだけの作品では無く、時に胸につきささり痛みを感じるような作品たち。

間近で見ることが画用紙に水彩で描かれた数十点にも及ぶ原画は、やはり印刷とは全く異なる質感が感じられます。(それでも多数の絵葉書を館内の売店で買い求めてしまったのですが。。)

かなりの点数なのですが、じっくりと一通り全ての作品を愛でた後、館内から出られるテラスから新緑薫る山々に抱かれた草木湖を前にゆったりと美味しい空気を身体に取り入れる。

そして再び会場に戻り、好きないくつかの一際惹かれた作品たちをゆっくりと愛でました。中でも最も惹かれたのは「ぺんぺんぐさ」という作品。
売店で販売されている内、「春の絵葉書セット」に含まれていましたので買い求めました。

この美術館は館内の建物もゆったりとした幾つかの円形の室内空間で鑑賞でき、真ん中には大きなソファーもあり作品世界に浸ることができる。加えて、緑溢れる館外の散策路から草木湖の湖面近くまで下りて水辺に近づくこともできる。

まさに山笑う今の時期が、この美術館の魅力を最も感じることができるように思います。良い時に訪れることができて良かった。

是非ともお近くへお越しの際は訪れてみてください。
特別展「山笑う」の会期は6月2日まで。


その後、足尾から日帰り入浴施設に向かうために車を走らせた道すがらの山々も藤の花も咲き乱れ、新緑に光り輝き、楽しげに笑っておられました。

涼やかな風が心地よい5月の週末。身も心も爽やかに洗われる時間を過ごすことができました。

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