カザマカズミ

あしたのわたしには あしたあおう

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あしたのわたしには あしたあおう

最近の記事

やさしくありたい

かずみちゃん 50歳おめでとう Rちゃんがてれたように 「うちにあった本なんだけどね」とリュックから取り出した 『ソナチネの木』 本屋さんに置いてあるよりも もっとつやつやで美しい表紙だから どのページもなめらかだから 彼女のことだから気を遣ってそう言ったのかなと思ったけれど 閉じたその本の重なったページは しっかりと陽に焼けていた なんてすてきな贈り物 長くあなたの手元にあった宝物を 届けてくれてありがとう 本を愛するRちゃん わたしが最近書いた図書館の話を 読

    • 青い本棚

      お世話になっている山のおじさんが 金婚式を迎えられたというので 友達とふたり、お祝いにかけつけた 母とおなじ75歳 いつ会っても まんまる笑顔で迎えてくれる 山で暮らしていると こんなお顔になるのかなあ 風に手をふる 新緑のようだ 唐津(佐賀)まで来たなら行こうよと 足を伸ばして伊万里市民図書館へ ここは市民が建設や運用にも関わった先進的な図書館として知られており 一度来てみたかった 現在の場所に建築されてから30年近く経ち、近年話題となるオシャレ建物とは趣が異な

      • おるすばん猫

        旅の6日間 お留守番していた2匹 毎日、仕事帰りに、ごはんやトイレのお世話をしてくれたNさん、本当にありがとう 「今度から3泊以上禁止!」 帰ってきて早々、Nさんからお達しが出る 4日目くらいから食欲が落ちたという えー? 帰ってきたわたしのリュックにもぐりこむ黒猫かいくん 脱ぎ捨てた服と放り投げたバッグの上にうずくまるキジ猫いとくん さみしかったの? そうなの? わたしが2匹をだいすきなのは わかるけど 2匹がわたしを必要としてるのは あんまり知らなかったか

        • お江戸めぐり 終

          お江戸めぐりの しめくくり ずっとよかった天の機嫌 姫の朝寝を放置して 桜をぬけて北斎へ 異国の方に紛れ込み あちらが翻訳アプリなら こちらは拡大鏡が要る 隅田川の絵巻もの 対岸けぶる江戸の町 踊りの譜面も吉原も 和紙からもれる喧騒は 愉快痛快ピーヒャララ どすこい両国 追いついた 姫と最後のちゃんこ食む 毎日起きて日が暮れて 寝に落ちるまでがたのしくて ひとりであって ひとりでない お江戸めぐりの日々でした げんこまさみん ともあゆこ ふぇいふくえこと江戸の

        やさしくありたい

          お江戸めぐり⑩

          Fちゃんオススメ中華でまんぷくになったあと クリームが層になったケーキを食べ さらにドーナツを注文する姫 ケーキなんて、つぶしたら こーんなに、ちいさくなるんだから ほとんど空気なのよ 手のひらをぎゅっと合わせて説明していたが むしろ、ほとんど空気ではない 大きなビルを出ると なんだか風がつめたくて お散歩はとりやめ近場の美術館を探した 思いがけず六本木ヒルズ52階 来たことないよ みたこともないよ 縁もなかったよ 開催されていたのは、現代アート展だった バン

          お江戸めぐり⑩

          お江戸めぐり⑨

          そもそもここから はじまった FちゃんがInstagramで熱く語ってくれた この美術館の企画 読んで即「いく!」と拳をあげた 同じくそれを読んだ姫が「わたしも!」と拳をあげ(たかどうかは、知らんけど) 旅の計画がはじまったのだ 東京都庭園美術館は、若かりしわたしが一番すきだった美術館 皇族朝香宮家の自邸として建てられ、1983年に美術館として開館した 広大なお庭の中のアールデコ様式の洋館 その美術館そのものを紐解いたのが 今回の企画 A to Z 各部屋ごとに

          お江戸めぐり⑨

          お江戸めぐり⑧

          姫のあこがれのひと、Eちゃん 彼女の話題は、姫に限らず何度となく聞いてきた 元気印の甥っ子がコロナで引きこもり限界が来たとFacebookに書き込んだ姉上宅に「おうちで張ればいい」とテントを送ってくれたのもEちゃんだったな 3人以上で集うことがまあまあ苦手なわたし それでも今回は会いたかった 姫が「Eちゃんを紹介したい!」と鼻息荒く誘ってくれたのもあるし、今回の旅の起点でもあるFちゃんも共にいてくれる 都会のど真ん中 ご自宅マンション はじめまして、Eちゃん 彼女

          お江戸めぐり⑧

          お江戸めぐり⑦

          「どんなんだったか、おしえて!」 今回、多くの友人たちから求められたのが このカプセルホテル情報 ええ、はじめてです 閉所恐怖症だけど背に腹はかえられぬ 円高の影響か、東京のホテルが軒並み高騰しているのだ 早めに予約したのと、週末を避けたせいで、一泊4,000円弱くらいだったけど、本来は倍くらいするのかな 日曜日の23時 駅から1分 着きました『ナインアワーズ水道橋』 なんというか、コンパクト! 受付を済ませて、説明を受ける 階数ごとに男女フロアは分かれており、

          お江戸めぐり⑦

          お江戸めぐり⑥

          「タイ料理がたべたい」 妙にキッパリと姫がいい タイ米をわっしわっしと頬張った ふたり旅の出だし 食事のアタリはうれしい アタリを引いたわたしたちは 機嫌よく次の場所へ馬車(地下鉄)を飛ばした 目指すは国立新美術館 はじめての六本木 はじめての国立新美術館 はじめてのマティス 建物フェチな姫と 曲線のガラスを見上げて興奮 ほんなら、出口でね 日曜日の閉館2時間前を目指して来たのは正解だった ゆっくりじぶんのペースでマティスと会話 わたしがよく知るマティスは 晩年

          お江戸めぐり⑥

          お江戸めぐり⑤

          出会ったのは何年前だか 夫の転勤で愛知に越した姉上が仲良くなった彼女 エピソードがあまりにおもしろすぎて 会いたい会いたいと言って紹介してもらったのが始まりだ 憧れ、という感情があまりないわたしにとって 珍しく憧れているひと 眺めて美しい 話すと吹き出す ついつい周りにネタとして話してしまう存在である あれから十数年 一緒に旅をするようになるなんて 大阪からやってきたFさんと合流したのは お江戸の旅3日目のお昼過ぎ 中目黒のオサレなカフェでモーニングを食べた足で、両

          お江戸めぐり⑤

          お江戸めぐり④

          江戸には友人がたくさんおり あのひとにも このひとにも あいたい 指折れば、両手でも足りない しかし、どんなにたのしみなことも 約束をするだけで不自由に感じてしまうわたしは 誰にも連絡しないまま旅立ち当日を迎えていた そんな中、ふと思いついて空港から連絡したのが、このふたり 妹は高校の同級生 姉はその縁で30年前に出逢った 四姉妹の2番目と3番目だ 現在、企業の重役になってる妹と 本の装幀作家である姉 身を置く世界はわたしとかけ離れているものの、あえばなんら変わらない

          お江戸めぐり④

          お江戸めぐり③

          齢50を超えて、やたら肉が食べたくなった という友人 長年の付き合いだが そういえば、肉を食べてるイメージはない 焼肉屋に連れて行ってくれた よくひとりで食べにくるそうだ しかし、リーズナブルでうまい 飲み続け食べ続ける友を たのもしく眺める 歳を重ねてわたしたち なんだか生命力増したんじゃない? おいしいものを おいしいと言えることは ありがたい ふと、友人が笑顔で手を挙げる 視線の先を見ると、同年代と思われる綺麗なお姉さんが同じく笑顔で応えていた 「これか

          お江戸めぐり③

          お江戸めぐり②

          友人宅から歩いて半時間ほどのところに その緑地はある 地図で見てもまあまあの広さだ ここを訪れるのは15年ぶりくらいか 背の高い森を抜けたら その美術館はある 岡本太郎さん 芸術は大衆のものだと 個人所有をゆるさなかったと記憶する そんな彼の作品が 森の中、太陽の下 わたしの目の前にあった わたしが変わったのか なぜこんなにも こころ動かされるのか 芸術とはなんなのか まったくまばたきをしない 太郎さんの残された映像を わたしも凝視している 生きることが 芸術

          お江戸めぐり②

          お江戸めぐり①

          決まった時間に遅れることが 恐怖である 久々の空港 出発時刻の2時間前に到着し、安堵した 50%の確率で飛行機に酔うわたしは 嘔吐を恐れて食べないようにしていたけれど むしろ空腹の方がよくないことが最近わかった(当社比) フードコートで うどんとととろご飯セットを完食 搭乗口横のドトールで ジャーマンドックにかぶりつく 食べ過ぎかいいかどうかは まだデータがない 時間には慎重だが 自分の取り扱いには冒険的だなと思う 久々のお江戸は 成田行きのピーチ航空をチョイスし

          お江戸めぐり①

          しふく

          美味しい生牡蠣をたべたら ノロさんになった もだえくるしんだ三日間 しんどかったけど まわりのみんなが 一人暮らしのわたしを心配してくれ 果物やら飲み物やら カラダにいいものを持ってきてくれた 誰もいないということは すなわち みんながいる、ということだ こんな時に限って いとは鼻から血を吹き かいは血尿を布団に浮かべたが 「不調」はイコール「不幸」ではなかった 仕事は心配しないでいいよと声をかけられ 経口補水液を飲み続け 作ってもらったおかゆを食べ 届けられたりん

          一輪の花になる

          わたしには、毎朝ニュースが届く 『おはようございます かずみだけにおくるニュースです』 いつの間にか定番となった出だしに、耳を傾ける パンをほおばりながら 髪を結いながら 時には寝ころんで 声は鈴の音(ね)に似ている 『今日は…そうですね、すこし雲があります』 彼女の朝は早い 食卓や通学送迎の車中で語られるニュースは 彼女の両親、小学生の弟も登場する にぎやかだ 空模様、昨日あった出来事や今日の予定など 数分で終わることがほとんどだが 休日にはテーマを絞って長く語

          一輪の花になる