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悩んで、迷って、それでもつくって。 〜キャリアデザイナーがデザイナー就活学生に伝えたいこと〜

この記事は「ReDesigner for Student 後輩に贈るデザイナー就活応援 Advent Calendar 2023」の1日目です🎁

どうせ就活するのならば

───今年もアドベントカレンダーの季節がやってきましたね、田口さん。

この季節になると就職活動当該学年(今年で言うと2025卒)の就活がそろそろ本番だなという感じがしてきますね。

───「本番」ですか。「本番」とか言われるとプレッシャーを感じる学生もいるんじゃないですか?

そうですね。昔は学生のプレッシャーになるようなことはなるべく言わないように気をつけていたんですけど、ReDesigner for Studentを四年半運営して「どうせ就活するならば、早く動くに越したことはない」ということはデータでかなりはっきりしてきた(※後述)ので、最近はちゃんと言うようにしようと思っています。もちろん学生それぞれのペースや事情、バイオリズムがあるとは思っているので強制はしたくないんですけど。でも「就活のことが頭をもたげてしんどいよー」という状態になっている人には、「まあ、とりあえずすぐ何かしら手は動かそっか」と伝えるようにしているというか。
そういう意味でこのアドベントカレンダーはとても良い企画だと思っていて。去年のアドベントも今読み返すと本当にいい記事が多いんですよね。

少なくとも一人で考えこんでいるよりは先に進めると思いますし、手が動くきっかけになる記事も出てくるんじゃないかなと思っています。アドベントの途中(2023年12/9土)には大型のデザイナー就活イベントDesigner Career Jamもありますし。Designer Career Jamに関しては、企画自体が春くらいに始まっているので、いよいよ感が僕ら的にもあります。

───春ですか。えらく早いですね。

やっぱり就職活動って、一年のスケジュールが大体決まっているわけなので。ReDesigner for Studentは、いつどういうタイミングで学校、学生、企業がそれぞれ動いてるんだっけ?というようなことを洗い出した上で、「ReDesigner for Studentとしては、いつ、何をやるべきなんだっけ?」みたいな話を会話しながらイベントを企画しています。もちろん企業も学生も毎年少しずつ動きがズレたりするので、スケジュールや内容の調整をかなり細かくやったりしているわけですが。
でもDesigner Career Jamに関しては、割と最初から「ここ(12月初旬)でこういうことがやりたいよね」と話していた内容がほぼそのまま実現された形になっているイベントかなと思います。

「いつ何をやるべきなのか」を議論するために学校・企業・学生のスケジュールを洗い出す

就活だけが「キャリアを考える」ことではない

───「デザイナーとしてはたらくを考える日」というサブコピーがついていますが。

まさに。さっき「就職活動は早いに越したことはない」と言ったんですけど、就活ってスーツ着てエントリーシート書いて企業研究して…みたいなことだけじゃないとは思ってるんですよね。ぼんやり「こんな感じで暮らしていきたいな」とイメージすることだったり、「今のパートナーとずっと一緒にいたい、そのためにはどうすればいいかな」と考えることも就職活動であるというか。そういう意味では、「次どんなものをどんなふうにつくろうかな」と直近の制作物に思いをめぐらせることだって、クリエイター人生からすると「キャリアを考える」ということに他ならないじゃないですか。なので合説以外のこともやろう、と。
クリエイター・デザイナーって「つくっている人である」という共通点以外は本当にバラバラだと思っていて、働き方も所属する組織体もそれぞれですし、そもそもよく考えればつくっているものだってみんな全く違うわけですよね。そしたらリサーチのやり方も使うツールも違うし…みたいな。そして当然、クリエイター・デザイナーになっていく筋道も本当にみんなそれぞれと言えてしまうというか。

一方で、こういう就職活動支援の仕事をやっていると強く感じるんですけど、学生の多くは「とにかく答えをくれよ」という感じなんですね。「こうすれば内定をもらえる!」「ポートフォリオはこう作れ!」みたいなことを欲しがっているというか。学生は切実に「就活というのはひとつの決まったルールブックがあるから、どこかに答えがあるはず」と思ってる気がするんですよ。そう思わせてしまっているのは、やっぱり大人に責任があると思っているんですけど。
そういう中で、僕らも一生懸命「ルール」に準ずるようなことを伝えたいと思って一般化するわけですけど、やっぱりどこかに限界があるなと思っていて。

就活に「ルール」や「攻略法」はあるのか

───我々世代(30代半ば)が就活をやっている時も「必勝内定マニュアル!」みたいなものはありましたもんね。

まあ本当にそういうのでクリアできるなら、楽でいいと思うんですけどね。
特に「社会」「就活」みたいな言葉を極端に避けようとする学生ほど「ありもしないルールブック」があると思っていて、そもそも対話に参加してくれないような気もしていて。

───そういう学生さんはどうなっていくんですか?

もちろん、自分なりに対話相手を見つけられる人もいます。新卒採用をやっていない会社に自ら応募してチャンスを得る人、制作物を評価されて仕事を得る人、起業する人。こういう方々はいずれも対話相手を見つけたり場所を見つけながら、段々ソーシャルな場にフィットしていくのかなと思っています。だから必ずしもここまでで述べたような「就活」には参加しなくてもいいような気もするんですけど。
でも、やっぱりこれって「運」の要素も結構あるなとは思っていて。

───ああ。そうでしょうね。

学校の外にいる適切な他者と出会うことが出来ず、対話相手が学校や地元で出会った仲間だけ、という状態の学生は結構いるような気がするんですよね。無理やり「つながり」を促すのは個人的にはちょっと気持ち悪いんですけど、一方で学校の外にある社会のイメージをSNSやインターネットなどを中心に理解するとなると、「なんか社会って怖くて嫌な場所」というイメージになっちゃいますよね、そりゃ。
ここでの対話相手というのは、ざっくり「なんとなく素直に話せる人」くらいのイメージですが、就活を「ありもしないルールブック」に則ってやった人ほど、会社に入ってからも苦労されているような気がしていて。就活ルールやマナーに忠実だった人ほど、「あれ?なんか思ってたのと違う」となりがちというか。

───なんとなくイメージできます。

アドベントカレンダーから読み取ってほしいこと

すごく真面目にルールを把握したはずなのに「なんか違うじゃん」となってしまうのって、学生も企業も得をしない、本当に悲劇的な結末じゃないですか。
なので、遠回りな問いになってしまったとしても「そもそもはたらくってなんだっけ?」というような素直な問いかけをする場所が就活期間中にあった方がいいよね、というのがDesigner Career Jamの発端です。最初はDialogue(対話)という言葉もタイトルに入れられないか考えていました。どうしても対話前提だと学生の参加ハードルが上がってしまうところもあるので、まずはReDesigner for Studentメンバーやゲスト登壇者、企業が対話しているところを覗き込んでもらえれば良いかなとは思っているのですが。
なので、「The 就活」という感じの合説だけではなく、一般的な就活をされた訳ではないアートディレクター・デザイナーの佐藤亜沙美さんや、既卒ユーザーで既に新卒入社企業を退社・起業している奥村春香さん、大手企業で働きながらアーティスト活動もされている村岡光さんなどをゲストセッションでお呼びしています。

佐藤亜沙美さん

───正解なんてねえぞ!と。

そう声高な感じにされるとなんかちょっと…笑
や、正解がないわけではないんですよ。でも一個じゃないでしょというか。「いっぱい正解があるはずなんだよ」とは伝えたいんですよね。

───いっぱい正解があるはず?

はい。攻略法も唯一のルールもないけど、正解がそれぞれにあるという。
今回のアドベントカレンダーも、本当にありがたいことに色んな学生ユーザーに協力してくれていて。その中には、なかなか内定が出なくて落ち込んでいた時期が長かった人、結果的に一般的な就活ではなく地元企業でのインターン活動のみで進路を決めた人、志望度がすごく高いわけではない企業に行くけど自分のやりたい研究制作を続けていく筋道が見えている人など、それぞれがそれぞれなりのやり方で「正解」を導き出してきた痕跡のようなものが見えると思っていて。
もちろん、「このやり方は自分に合っていそうだぞ」という答えめいたものを探すために読んでもらってもいいと思うんですけど、個人的な願いとしては「そんな考え方もあるんだな」とか「迷いながら進んでいてもなんかカッケェな」などの感想を持ってもらいながら、自分が手を動かすときのモチベーションに換えてもらえるんじゃないかなと思っています。

つくりつづけるために、就活をする

───なるほど。そうは言っても、何か正解めいたものは明示しておくべきなんじゃないですか。大人として。正解じゃなくても教訓とか。

うええ。でも本当につくるべし、という感じですかね。そして見せるべし。見てもらうべし。
ReDesigner for Student上で飛んでいるスカウト数って、学生が想像している以上の数だと思うんですよ。ユーザー登録してくれている学生さんの中で、作品を公開してくれている人って4割ちょっとくらいなんですよね。そして、ちゃんと自己紹介とかも書いて、伝える努力をしている学生さんには少なく見積もっても半分以上に、企業から声がかかっているんです。
自分が大学でキャリア支援の仕事してた時は「企業ってざっとポートフォリオ見て判断してるんでしょ」とか思ってたんですけど、ReDesigner for Student始めてみて「かなり丁寧に見てくださっているんだな」ということを実感しています。スカウト上限数があったりとか、ReDesigner for Studentにはむやみやたらに企業がスカウトを遅れない仕組みも備わっているわけなので、結構ちゃんと見ながらスカウトを送ってくれている、と。
その上で実際学生のポートフォリオを見ていると、一定の水準のものをつくっている人には結構な割合でスカウトがいっているわけです。
これは決して「スカウトもらわないとダメ」という話ではなく、「まだスカウト来てないな」という人は、キャリアセンターや我々のイベントでポートフォリオを見てもらうか、イベントのアーカイブ動画を見てくれると、やるべきこと自体は見えてくるのかな、というふうには思っていて。この辺りが、「まあどうせやるなら早い方がいいよね」と言っている背景です。

───なるほど。やるべきことがわかったら、あとは「やるべきことをやれる環境や自分を整える」という感じなんですかね。

そうですそうです。そしてそういうものを、先輩たちはどのように整えたのかが垣間見れるといいのかなと。
敢えて本当にたったひとつの正解を出すとしたら、クリエイターやデザイナーはとにかく手を動かしてつくるべし、そして見てもらうべしということかなと思っています。もちろん自信がなくて見てもらうのも不安だというのはわかるんですけど、それって自分の基準を最上段の正解にしちゃっているとも言えると思うので、そこは何とか乗り越えてもくもく会などに遊びにきて欲しいな、と思っています。それを考えると、就活という通過儀礼もそんなに悪いものじゃないかなと思ってるんですよね。つくり、見てもらうことを促され、見てくれる企業側も学生が思っているよりはオープンかつフラットな目線のところもある。それって、クリエイティブを学ぶ環境の外に出てからも自分がつくりつづけられるかどうかを試すような意味合いもあると思うんですよね。
アドベントカレンダーからもその辺りのことを感じてほしいです。大人があれこれ言うよりも、苦労したそれぞれの学生のストーリーに耳を傾けてみる方が伝わるものがあったりしますし。SNSやっている執筆者さんなんかには、直接相談や感想を送ってみてほしいですね。

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