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不沈艦「まる男」

まる男は学校の初代理事長の胸像に落書きをした。落書きと言っても胸像に色を塗っただけだ。だが、それが妙にリアルでパッと見、本当の人が立っているようだ。そしてリアルさに違和感が少々加わり、恐ろし気な胸像になっている。
 朝練前に1時間早く来て素振りをしているまる男は更に1時間早く登校して落書きしたのであった。
 しかし、そのいたずらは、まる男の仕業だという事はすぐにばれた。宿直だったひえた先生がまる男が胸像に落書きしている姿を見たのだった。面白いのでその事はひえた先生は黙っていたが、落書きが朝の学活前の職員室で問題として騒がれた為、真相を先生方全員に明かした。その為、まる男は昼休みに昼食後数人の先生に囲まれ職員室で説教を受けた。説教に加わった一人、教頭のカツラ疑惑を確かめる為、少し反論したりして、時間を伸ばしながらだった。だから、昼休みは最後まで説教だった。でも教頭のカツラ疑惑は確信となったので,まる男には満足な結果だった。
 落書きの話しは野球部員全員に伝わり、ある部員は、まる男を褒め、ある部員はその反骨精神を称えた。ただ、マネージャーの明菜だけは、何故バレたのかとその不手際を注意した。完全犯罪こそが芸術なのだそうだ。
 そして、部活である。コーチはまる男に罰として、部室の掃除をやらせる事に決めた。まる男の好きな練習の時間を掃除にあてさせたのだ。
 コーチは色々と掃除のコツを教えた。ニコニコとコーチの教えを聞くまる男に心配そうに言う。
「これで分かったか?大丈夫か?」
まる男は笑顔を崩さず、胸を叩いた。
「このまる男に任せてください!・・・泥船に乗った気持ちで!」

コーチの不安は掃除前から当たっていたようだ。

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