マツダの兄貴。架空の人物
晩秋の街並みはハードボイルドな映画のように、どこか厳かで、陰鬱とした雰囲気が漂っている。日常が静まりかえっているこの時期に、マツダの兄貴の話題で溢れるのだ。あの男はすごい、と誰もが言う。噂話が好きな古い男たちは、彼の逸話を披露して自身の若かりし日々を語り始める。
だが、マツダの兄貴は存在しない。それは俺とタポツだけが知る事実だ。でも、誰もが信じるその存在は、俺たちにとっての理想像、あるいは軽口を叩く際の比喩となっている。マツダの兄貴はスーパーマンのような存在で、男の中の男、