kazuman

現在40代半ば。独身ではありますが、実は以前結婚していて、ふたりの息子がいます。 元妻…

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現在40代半ば。独身ではありますが、実は以前結婚していて、ふたりの息子がいます。 元妻と暮らしている彼らは、私の誇りです。 いろいろとありますが、困難に前向き、人生豊かに頑張る姿勢。 どうぞよろしくお願いします。

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酒場の照れ屋

酒場の隅っこに坐った。ひとりの場所だ。だが、次の瞬間、明らかに年下に見える女性が隣に座った。彼女の目はキラキラとしていて、香りは甘く、吐息は魅惑的だった。 「ねえ、一緒に飲んでくれない?」彼女が言った。声はソフトで、かすかに甘い。 「もちろんだ。」と答えた。でも、心の中では「なんてこった、ハードボイルドな俺がこんな風に照れるなんて…」と思っていた。 彼女がオーダーしたのは、甘いカクテル。俺はウィスキーを飲んでいた。彼女は笑いながら、俺のシャツのボタンを弄んで言った。「あ

    • 苦いコーヒー、過ぎ去る影

      俺はカフェの隅っこで、コーヒーをいじっていた。コーヒーは苦い。人生もまたそう。数年前、従兄弟がこの世を去った。自ら選んだ終わりだった。今、その従兄弟の妻が再婚するらしい。聞けば、新しい男を連れて家族に挨拶に来るという。家族って、俺の叔父や叔母のことだ。彼らにとっては、ただの傷口に塩を塗るようなもんだ。 「再婚?勝手にすればいいさ」と俺は独り言を漏らす。でも心の中はそう簡単じゃない。カフェの壁に掛かる絵を眺める。無意味な景色だ。人生もまた、そんなもんか。 従兄弟はいい奴だっ

      • 静かなる憧れ:サラジェイ物語

        深夜の煙草と安酒が彩るその時間に、俺とタポツが直に言葉をかわしたことはない。しかし、俺たちは心の中で共有しているものがある、それがサラジェイだ。 彼女の名前は光と影の世界で囁かれ、街の灯りよりも煌びやかで美しい。誰もが彼女の名前を口にするとき、その言葉は特別な重みを持ち、そして秘密のような色香を放つ。 サラジェイは美と野生と希望の化身であり、彼女の存在が俺たちの胸に小さな炎を灯す。彼女は俺たちの青春の思い出を彩り、そのたおやかな身体は未来の夢を紡ぐ。彼女の笑顔が俺たちの心

        • マツダの兄貴。架空の人物

          晩秋の街並みはハードボイルドな映画のように、どこか厳かで、陰鬱とした雰囲気が漂っている。日常が静まりかえっているこの時期に、マツダの兄貴の話題で溢れるのだ。あの男はすごい、と誰もが言う。噂話が好きな古い男たちは、彼の逸話を披露して自身の若かりし日々を語り始める。 だが、マツダの兄貴は存在しない。それは俺とタポツだけが知る事実だ。でも、誰もが信じるその存在は、俺たちにとっての理想像、あるいは軽口を叩く際の比喩となっている。マツダの兄貴はスーパーマンのような存在で、男の中の男、

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        酒場の照れ屋

          エバンス婦人。架空の人物

          闇の中、あるバーの古びた木製のカウンターで、エバンス婦人の話に花が咲く。彼女は50代、豊満な体型の架空の女性で、俺とタポツは彼女の魅力について熱く語るのだった。 彼女の話をするとき、言葉が紡ぎだされるのは自然なことだ。エバンス婦人は一種の神秘を持っており、それが俺たちの心を引き寄せる力となっている。彼女の存在は、この街のどこかで誰かが言い伝えるうちに生まれた都市伝説のようなものだ。 “彼女の瞳は深い森のようだ” 俺は口にした。エバンス婦人は何もかも受け入れる大地のような存

          エバンス婦人。架空の人物

          険しい顔の男

          免許センターの匂いはいつも通り、人混みと焦りの匂いが交じって浮かんできた。俺は窓口に並ぶ人々を眺めながら、あきちゃんのことを思った。彼女のスレンダーな姿や、秘めた知性を覗かせるメガネの裏の瞳。そして彼女が俺をどれだけ好きかを。 撮影ブースの前に立つと、カメラのレンズが冷たく俺を見つめてきた。俺は穏やかな表情を心掛けてみた。目を見開きすぎず、でも閉じすぎもしない。微笑は浮かべすぎず、でも無表情にもしない。でも心の中で、俺はふいにあきちゃんのことを思い出して、穏やかな微笑を浮か

          険しい顔の男

          俺を襲った不思議な現象5選

          この世は理不尽だ。でもまあ、変なことも起こる。特に俺の周りで。人生の不条理を笑いに変えるための、俺を襲った不思議な現象をランキング形式で紹介しよう。 5位:タイムスリップの公衆電話 ある日、とある公衆電話からかけてみた。すると、声の主は1976年の俺の父親だった。俺が生まれる前の話をする父に、今度の競馬の結果を教えてやりたかったが、通話料が高すぎて切れた。 4位:冷蔵庫の中の別次元 ある晩、冷蔵庫を開けると、なんとその中は広大な草原になっていた。綺麗な花々が咲き乱れる

          俺を襲った不思議な現象5選

          迷子のナビとウィスキーの夜

          俺は古いバーのカウンターにひとり腰を下ろし、ウィスキーを頼んだ。タポツとの旅がまだ頭の中を駆け巡っていた。旅の目的は特にない。ただ、動きたくなったのだ。 「また行ってきたのか?」バーテンダーがグラスを俺の前に置く。 「ああ、タポツと。」俺はグラスを持ち上げて軽く挨拶した。ハードボイルドな映画のワンシーンみたいだ。 「彼との旅はいつも面白いな。」バーテンダーは笑う。それはそうだ、タポツはいつも何か面白おかしいトラブルを引き寄せるタイプだ。 「今回はどこに?」彼の問いに答

          迷子のナビとウィスキーの夜

          雨の中の手紙

          俺はバーで一杯やっていた。そこに、あきちゃんが入ってきた。 「またここにいるの?」 「どこにいるかじゃない、どう生きるかだよ。」俺はグラスを傾けた。 彼女の言葉が店内に響く。「毎回同じこと言うな、お前。」 俺は窓の外を見ながら言った。「人生は繰り返し。そして、間違いの繰り返し。」 彼女は隣に座って、目の前の俺をじっと見つめていた。その瞳は、深く、美しい。 「ねえ、この間、手紙を読んでたよね?」 俺は驚いて彼女を見た。「それ、どうして知ってる?」 彼女はにっこり

          雨の中の手紙

          選択の後の煙

          煙の匂いに混じるビールの湿った臭い。バーの暗い隅で、音楽が響く。俺の左手にはグラス、右手には過去の自分が握りしめた遺言のようなタバコ。 「ヘイ、あんた。結婚してるの?」向かいに座る男が、無駄に大きな声で俺に話しかけてきた。 俺は煙を吐き出しながら答える。「離婚した。でも、息子が二人いる。」 男は驚いた顔をした。「ああ、それは大変だったろう。」 「大変じゃない。」俺はビールを飲み干す。「彼らの存在が、俺の人生の選択全てが正解だったと思わせてくれるからさ。」 男は考え込

          選択の後の煙

          枯れた泉からの復活

          空っぽだ。灰色の頭脳が枯れ草のようにパリパリと音を立てている。俺の中には何も残っていない。話すべき物語も、書くべき言葉もない。全てが乾ききっている。 パソコンの画面は真っ白だ。目を閉じて、文字が浮かび上がるのを待つ。しかし、何も出てこない。昔は、思考の泉が湧き出すようにいつも新しいアイデアが出てきた。今は、ただの乾燥地帯だ。 キーボードを叩く。ただ無意味に。何も思わずに。指は自動的に動くが、頭はまだ動かない。 タポツに会ってみるか。そうだ、タポツなら何か言うだろう。彼は

          枯れた泉からの復活

          迷子の猫、迷子の街

          近所のおじぃさんの猫が消えた。名前はチャーリーだ、灰色のふわふわした奴だった。そのおじぃさんとチャーリーは、二人揃って、ずっとこの街の風景だったんだ。でも、今、その風景から一つの要素が欠けている。そう、灰色のボールみたいな、チャーリーがいない。 「猫がいないって、お前、どうってことないだろ?」そんなセリフが自分の頭の中で鳴り響く。俺は肩をすくめた。確かに、そんなことが重要である理由なんて、説明できない。 だけど、だからといって、無視できるわけじゃない。なぜなら、チャーリー

          迷子の猫、迷子の街

          ガソリンがなくても、人生は続く

          日曜日だ。目が覚めて床から立ち上がると、頭にガソリンの香りがこびりついている。ガソリン、ガソリン、ガソリン、そしてそれがまた遠くに去っていく。妖精みたいなやつだな。ところで、何で俺はガソリンの香りを嗅いでるんだ? 朝飯を食うために台所へ行くと、昨晩の缶ビールが数本空になって、まるでアルコール依存の変なやつが住んでるみたいだった。でもそれは俺だ。鏡を見ると、顔はしわだらけ、眼鏡は汚れていた。でもそれも俺だ。 そうだ、ガソリンを入れ忘れたんだ。一体何を考えてたんだろう?そうだ

          ガソリンがなくても、人生は続く

          人生を混ぜるバーテンダーの話

          暗い闇と一緒に古いジュークボックスの音が、従姉妹が経営する酒場に溶けていった。本職はバーテンダーじゃない、でも週末に時折、お金のためではなく、ただ時間を忘れてソーダを混ぜるためにやってきてる。ある客が言うには、俺はちょっと厳しすぎるらしい。 「ちゃんとするな」と、この日も奴が絡んできた。 「もっとざっとやれ!」 初めて聞いたとき、何を言っているのか理解できなかった。何がどうざっとするべきなんだ?酒を注ぐ手際か?それとも客への態度か?俺はただ純粋に自分の役割を果たそうとし

          人生を混ぜるバーテンダーの話

          夜更けの父からの手紙

          俺はこんな書き方を普段しない。でも、お前たちへの手紙を書くことになると、人は少し変わる。まるで無煙のタバコを吸いつつ、寝汚れたシャツを着たまま、深夜の自宅でワープロを叩く、どこかの落ちぶれた作家みたいだ。 君たちは、このハードボイルドな文体が一体何なのか、理解できないかもしれない。でも、それは仕方ない。この文体、なんていうか、男の魂を揺さぶるんだよ。まあ、男の魂については、いずれ自分たちが大人になれば理解できるだろう。 さて、話を戻そう。俺が君たちに書きたいこと。それはな

          夜更けの父からの手紙

          濃密な眉毛の遺伝子を継いだ二人の息子たち

          俺の二人の息子たち、だがな、やっぱり俺に似てる。これは物語じゃなくて、裸の真実だ。そして、その真実は濃い。濃いと言えば、彼らの眉毛だ。濃く、太い、ワイルドだ。 「僕たち、なんでこんなに眉毛濃いんだ?」 13歳の息子が鏡を見ながら答える。「それはお父さんに似てるからだよ。」 そう言って、彼は自分の眉毛を指でなぞり、少し得意げな顔をする。俺が若い頃と同じようにな。あいつは俺と同じように笑った。 「眉毛がボーボーなんて、恥ずかしくないの?」11歳の弟が、半ば冷笑しながら言う

          濃密な眉毛の遺伝子を継いだ二人の息子たち