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就職活動を運ゲーで終わらせないために


はじめに

「就職活動は運ゲーである」と言う意見を聞いたら、みなさんはどのような印象を持つでしょうか?

  • 「エントリーシートの書き方から面接対策まで、努力した人が成功するので運ゲーではない」

  • 「企業に対してアピールできる内容=ガクチカで差がつく長期戦である」

  • 「結局学歴しか見られてない気がするし、学歴が良くないと運ゲーにすらならない」

などなど色んな意見があると思いますが、私は「確かにそう言っても過言ではないかもな・・・」と思ってしまいます。

業界知識も企業知識も職種知識もほとんどない、あってもネットで調べた程度の薄い知識のみの状態(※)で、数多ある企業の中から応募企業を選び、最終的に相思相愛となった1つの企業を選んで入社するという作業は極めて難易度とランダム要素が高いものだと思いますし、これを「運ゲー」と解釈する人がいてもおかしくないなと思うためです。

※:インターン経験がある方は多少マシですが、個社別バイアスに引っ張られることなく「一般的な知識としてしっかり理解した」と言えるほど複数企業で長期インターンをできる方はレアですよね。

私自身の実体験としても、大企業/メガベンチャー/スタートアップという様々なフェーズの企業において「就職ガチャ」や「配属ガチャ」の発生を多数目の当たりにし、就職活動および企業視点での新卒採用というものの難しさを痛感してきました。

本記事は、多様な環境で新卒採用活動やその後の育成業務に関わってきた筆者が、人事ではなく現場マネージャーや経営者視点で、就職活動という難しいゲームに使えそうなヒントをまとめてみたものです。

※:私は株式会社リブに所属しているので、同社の新卒採用向け記事を書くはずだったのですが、リブは全く関係ない内容になってしまいました・・・。

前提知識

就職活動が高難易度ゲームであることは前述の通りですが、さらに難易度を上げる要素に新卒採用企業の必死さというものがあります。以下は、新卒採用側に立ったことがある人なら誰もが知ってる内容なのですが、本記事の想定読者である学生のみなさんには新鮮かもしれないので、念のため掲載しておきます:

  • ごく一部の人気企業は、大量の母集団から内定を出す学生を絞り込む作業が超ハード

  • そうじゃない大多数の企業は、そもそも学生に興味を持ってもらうことすら大変

  • どんな企業であっても、新卒採用は長期戦なので、戦略と戦術を立て、それらを目標数値に落として動く

  • 人事の採用担当は、そうして設定された各種KPIを達成し、採用枠を埋めるためにあらゆることをやり尽くさなければならない

  • ひとたび「優秀人材」と判断したら、同企業のベストメンバー総出で全力の囲い込み作業を行う

学生一人一人にしっかり寄り添い、自社利益は度外視して、全新卒採用企業の中からその方にとってベストといえる意思決定をサポートする・・・みたいなことをやってる余力は無い(※)と言ってよいと思います。

※:作戦としてそういう姿勢を見せたりすることは定石として存在しますが、欲しい人はなんとかして自社に引き入れたいというのが、どんな企業でも本音だと思います。

また、「私には信頼できる第三者として就職エージェントがいる!」という人もいるかもしれませんが、そのエージェントがどういう力学で動いているか完全に理解していますか?

エージェントは、上記のような大変な採用作業の一部を代行してくれる存在である以上、その負担をそのまま背負い込む構造になりがちであり、”余力のなさ” という点では採用企業と大差ないと言えるはずです。

自分なりの「ものさし」の必要性

前述のような就職活動を取り巻く環境を一定理解すると、「自分にとってベストな意思決定をできるのは自分だけ」という当たり前の現実が見えてくると思います。一方で、知識や情報不足はいかんともしがたいので、その前提で立ち回るための武器が必要です。そこで本記事では、

自分なりの「ものさし」をつくりながら就職活動を行うべき

という提案をしています。

文明は計ることから始まった

複数の選択肢から最適なものを選ぶ以上、何らかの基準=ものさしで優劣を比較しないと決められないのは当然ですよね。また、1つの基準だけで決められるケースは少ないと思うので、ものさしは複数使うことが前提です。

初任給や福利厚生、会社知名度や規模、事業内容、給与や福利厚生といったわかりやすい基準(いわゆる「企業スペック」)も当然ものさしになりますが、それらを使った比較方法は世に溢れかえっています。なので、ここではちょっと変わったものさしを紹介してみます。

なお、本記事で紹介するものさしは、複数企業の「中の人」と説明会・面談・面接などの接点を持てた場合に使うものです。そういった機会が全く無い方には参考にならないですが、悪しからず・・・。

ものさしその1:自己表現キーワード

ガクチカをはじめ、自分のことを説明しなければいけない機会は必ずあると思いますが、そういう機会だと、キレイなストーリーをキレイな文章でまとめる作業になってないでしょうか?

それはそれで自分のことを見つめ直すためにやる価値はあると思うのですが、私は「キレイな文章」ではなく、自分なりの「キーワード」を一定数用意することをオススメします。以下具体的な準備方法と使い方を説明します。

キーワードの見つけ方

キーワードというと「IT業界」「コンサル」みたいな業界・職種名を挙げる方が多いのですが、前述の通りそもそもの知識が乏しい状態で、こういう仕事用語を無闇に使うのは危険です。例えば、同じ職種名でも企業によって期待値や業務内容が全然違うことはザラですし、自分のことを表現するのに慣れない他言語を使うのは非効率ですよね。

なので、「IT業界」「コンサル」希望の奥にある「なぜそうしたいと思ったのか?」を徹底的に掘り下げて、キーワード化してみましょう。下図の「地表」から下に掘り進めていくイメージです。

自己理解の三層モデル

学生のうちは「スキル」とまで呼べるものはパッと出てこない(社会人経験が長い方でもここが言語化できず苦労される方も多いので当然)かもしれませんが、「仕事と全く関係なくても良いので、好きなことや得意なことを色々教えてもらえますか?」と聞かれたらいくつか出てこないでしょうか?

例えばこんな感じで出発点を決めて、Whyを掘り下げてみると色々出くることが多いです:
・Why「IT業界」? → 「インターネット好き」「メタバース中毒」「アバター職人」
・Why「コンサル」? → 「問題解決好き」「深く考えるの得意」「感謝されるの好き」

キーワードの使い方

キーワードが一定量集まったら、自分の中で大事にしたい順に並べてみて、トップ3を”装備”して企業の方と向き合います。

例えば、
「自分を構成する要素をキーワード化すると、{キーワード1〜3} といったものが出てきて、できれば仕事に活かしたいなと思ってるんですが、御社でこれらが活かせそうな機会はありますか?」
のように。

これをぶつけてみた時の相手の反応をしっかり覚えて、必要ならメモっておきましょう。特定キーワードに反応して盛り上がる人、満遍なく掘り下げてくれる人、あっさりスルーして別の話題に切り替える人、などなど反応はそれぞれだと思いますが、同じ質問をぶつけて定点観測することが「ものさし」の意味なので、反応の良し悪しに一喜一憂することなく、淡々と測定を続けましょう。

あなたにとって相性が良い企業であれば、一部のキーワードに良い反応をしてくれる方が複数人出てくるはずです。

以下、関連Tipsです:

  • エージェントや面接官がより良いキーワードに変換してくれるかもしれないので、しっくりくる良いキーワードをゲットしたら迷わず装備を変更しましょう

  • 手持ちのキーワードが一見仕事と関係無さそうなものでも、大事だと思うものは勇気を持ってぶつけてみて、翻訳や接続は仕事のプロである相手に任せてみましょう(「コスプレ好き」を推して某IT企業に入社してた人もいたなぁ・・・)

ものさしその2:一歩踏み込んだ質問

説明会や選考の過程で質問をする機会が得られると思いますが、そこでついつい相手企業に合わせた質問を取り繕っていないでしょうか?

もちろん、その企業に特化した深い質問(例:最近リリースされたサービスの中身に関する濃い質問)を投げかけることができれば、良い印象を与えられる可能性は高くなりますが、そういった質問を各企業にぶつけて回答を集めてみても比較しようがなく、自分自身にとって最適な就職先を決定するというゴールには繋がらないのがあるあるです。

最終的に意思決定するのは自分自身なので、意思決定に活用できるような良質な質問群を必ず持っておきましょう。そしてその質問を、本命企業にも興味薄め企業にも、人事にも偉い人にも、同じ質問をぶつけてみましょう。こうして定点観測することで見えてくるものが色々あります。

先程紹介した三層モデルは、企業のことを理解する上でも同じことが言えます。外から見える木や花の見栄えだけに囚われず、それがどのような大地にどのような根を張って生まれているものかを理解しに行くことこそが、自分にとってのベストマッチ企業を発見する上で最も重要だからです。

企業理解の三層モデル

ここで難しいのは「単なる質問」をぶつけるのではなく「一歩踏み込んだ質問」にしてぶつけることです。以下に例を挙げて説明します。

例1:大企業とベンチャーどっちが良いですか?

気になる方は多いと思いますが、このままだと意思決定につながる回答は得づらいかもしれません。どの企業も自企業に寄せる方向で回答するに決まっているからです。

一歩踏み込むためには、例えば以下のような切り口が考えられそうです:
・御社には大企業とベンチャー両方を経験している人(=良し悪し判断できる人)はどれくらいいますか?
・自社で大企業っぽい/ベンチャーっぽいと思うところを教えてもらえますか?

例2:どんなスキルが獲得できますか?

こちらも同様に、「新卒は下積みなので大したスキルは獲得できません」などと回答する企業はいないと思うので、もう少し違った切り口にしたほうが良さそうです。

例えば以下のように:
・自分が入社した場合、日常業務で接点を持てるのはどんな方ですか?
・新卒入社された方は3年目でどんな仕事をされてますか?
・{会話相手の名前}さんが御社で獲得されたスキルはどのようなものですか?

例3:御社の今後の戦略はどのようなものですか?

なんとなく賢そうな質問ではありますが、企業側としては、「まずは上場」「新規事業を積極的に立ち上げる」「ユーザー数を10倍に」「グローバル展開予定」のように、学生である質問者が理解できるレベルで耳障りのよい内容を回答してしまいがちな質問かもしれません。

表層的な会話に陥らないよう、以下のように自分自身と接続しやすい切り口にすることも考えてみましょう:
・自分のような若手人材に期待することは具体的にどのようなことですか?
・御社について、{会話相手の名前}さんが現状から変えたいと思っている点を教えていただけますか?

まとめ

本記事ではちょっと変わったものさしを紹介してみました。単純なようで、自分がしっくりくるものを見つけるには少し時間がかかるかもしれません。ただ、一度考えたら何度でも使えるものですし、就職活動中に育てていくつもりで取り組んでみるのはいかがでしょうか。

なお、今回紹介したキーワードや質問は、相対する方の特性や企業文化によっては、「ふわっとしてる」「軸が定まってない」「生意気そう」などネガティブな印象を持たれて落とされてしまうリスクもあります。また、一方的に質問されてばかりで、使うチャンスがないケースもあるかもしれません。ただ、就職活動はそういったことも含めた、総合的な相性チェックの場だと考える方が良さそうです。

また、最終的に選んだ企業に数年は在籍するものとすると、就職活動中の接点など一瞬に過ぎないので、そこでどれだけ好印象を持っていたとしても、入社後に「聞いてたのと違う!」「こんなはずじゃなかった・・・」と思うこともあるはず。

そういった時、「自分なりのものさしを使って、納得して選んだ経験」は必ず北極星になってくれます。
本記事がそういった納得意思決定の一助になれば幸いです。

〜最後に〜
本記事に書かれているような考えや仕組みに興味を持った方がいたら、ぜひ「株式会社LiB」という会社にも興味を持っていただけると幸いです。新卒採用もやってます!


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