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ベンチャー創業日誌@シカゴ(16):ヒューミント(HUMINT)で得た情報は最強

ネット全盛期になり、情報を得るのに、多くの人はインターネットを活用する(ググる)。しかし、人から直接聞き込みをする情報収集活動、いわゆる「ヒューミント(HUMINT)」は今も情報機関にとって重要な手段だそうだ。HUMINTはhuman intelligenceを合成語。

私の兄は以前、役所のサイバーセキュリティーの部門で働いていた。兄曰く、暗証番号などの個人情報の多くはコンピュータなどからではなくショルダーハッキング(肩越し)で盗まれると。つまりヒューミントを介してだ。

この二か月くらい、私はある実験の手法に関して悩んでいた。周りにはあまり詳しい人がいない。論文を読んでもいまいちピンとこない。わからないので著名な研究室にメールで問い合わせたけれど返事がない。

民間企業では問い合わせに返事がないなんて考えられないけれど、アカデミックではごく普通にある。一元様お断りの世界が多く、特に有名研究室になると紹介がない限りメールに返事はもらえないことが多い。また相手が競合する可能性がある時は、意図的に相手にされないこともある。

そんな折り、シカゴのダウンタウンでミーティングがあった。その帰りに少しまわり道してメールで問い合わせをしていた研究室をアポなしで訪問してみた。アメリカは12月になるとホリデームードが漂い、研究室の人影もまばらになる。日本の師走とは大違い。その研究室には若い女の子(マケナ)がポツンと一人コンピューターの前に座っていた。

私:キャサリーン(メールで問い合わせていた相手)はいますか?

マケナ:彼女はコロナで2週間休みです。

だから返事がなかったのか、でもその旨くらいメールで伝えろよと思いながら、彼女に、聞いた。

私:この研究室で病理組織をやっている人は誰ですか?

マケナ:私です。私はキャサリーンに指導を受けています。

私の質問はたった2つだった。マケナはあっさり答えてくれた。2ヶ月間の悩みはたった30秒で解決した。彼女が女神に見えた。その後、実験装置、試薬なども見せてくれた。困ったときはいつでも連絡してとのこと。

私が病理組織の仕事をしたのはもう20年以上前。その時の感覚で質問してもキャサリーンはどう答えていいか困ったのかもしれない。
“この人何言ってんの?”
江戸時代の籠担ぎがUberの運転所に質問する感じだったかな。

やはり必要な情報は直接得るに越したことはない。メールに頼らず現場に思い切って足を運んで大正解だった。とてもラッキーな1日だった。Human intelligenceはArtificial intelligence には絶対に負けない。


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