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週刊金融日記 第600号 映画のようにはいかなかったゼレンスキー大統領のウクライナ戦争、習首席訪米で米中冷戦を一時停戦か、今年も上海蟹を食べました、2泊3日香港旅行オススメ、他

// 週刊金融日記
// 2023年11月13日 第600号
// 映画のようにはいかなかったゼレンスキー大統領のウクライナ戦争
// 習首席訪米で米中冷戦を一時停戦か
// 今年も上海蟹を食べました
// 2泊3日香港旅行オススメ
// 他

 こんにちは。藤沢数希です。
 香港も秋になってきました。上海蟹の季節ですね。

★上海蟹は美味しいですね。今週のレストランコーナーに書きましたが、香港ではそこら中で生きたまま売っています。

 欧米ではパレスチナに連帯を示す大規模デモが加速しております。僕はこうしたことが起こるんじゃないか、と当初より予想していましたが、想像を超える規模になってきました。

●パレスチナに連帯、欧州各地で大規模デモ 英国は30万人
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB120HA0S3A111C2000000/

★約1ヶ月前のハマス奇襲攻撃の直後に、これは"Black Lives Matter"的なプロテストや時に暴動が欧米社会で起こるんじゃないか、と僕は思ったんですけど、この1ヶ月の間にその通りになってきました。

★もう欧米社会では、イスラエルのアパルトヘイト政策に対する反発からか、パレスチナ連帯のプロテストがとんでもない規模に発展してきました。社会が分断されています。何か世界が変わる節目に我々はいるのかもしれません。

 今週も読者から興味深い投稿がいくつもあります。見どころは以下のとおりです。

- 2泊3日の香港旅行にオススメの観光&レストランリストをご教示ください
- NASDAQ100の将来は明るいですか
- これから住宅ローンを借りる場合変動と固定のどちらがいいでしょうか

 それでは今週もよろしくお願いします。

1.映画のようにはいかなかったゼレンスキー大統領のウクライナ戦争

 2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻ですが、最初の数ヶ月ぐらいは日本も海外もメディアはこの話題で持ち切りで、めちゃくちゃ盛り上がっていました。ちなみに、この戦争をどう呼ぶかですが、ロシアは特別軍事作戦(special military operation)と言っていますし、西側諸国はちょっと長いですが、ロシアによるウクライナ侵略(Russian Federation's Invasion of UkraineとかRussian aggression against Ukraine)と呼んでいます。この辺は立場によります。まあ、本稿では簡単にウクライナ戦争としておきます。
 イスラエルへのハマス奇襲攻撃も凄惨でしたが、その後のガザ地区へのイスラエルの報復攻撃が輪をかけて文字通りに10倍以上は凄惨で、最近はすっかりウクライナ戦争についての世界の関心がかき消されてしまいました。そして、パレスチナとイスラエルのどっちにつくかで欧米社会に分断が起きているようです。
 僕は基本的にノンポリですし、ミリオタでもありませんが、あえていえば、

 I stand with humanity.

といったところでしょうか。
 イスラエルの問題で、いろいろ戦争の歴史についてい調べていて、ウクライナもどうなっているのか調べなければ、と思い立ち、いろいろキャッチアップしました。そこで、思わず、以下のことをつぶやいたらXで反響がありました。

「ウクライナ戦争とかみんな最後まで戦えと煽ってたが、ウクライナは数十万人戦死、多くの国民が海外逃避、GDP半分になり負けそうだが、煽ってた人たち誰も責任取らない。それどころかアメリカの偉い人達は俺たちの防衛予算の5%振り分けただけでロシアを消耗させたんだからコスパGood!とか言っている(冷や汗)」
-- https://twitter.com/kazu_fujisawa/status/1722478871826854309

 まず、その場で感覚的なことをつぶやいただけなので、ここでは、ちゃんと資料を見ながら、ちょっと定量的に見直しておきます。
 ざっくりと、ウクライナはGDP半分になった、と言ったんですが、2022年のウクライナのGDPは公式統計によるとマイナス30%ぐらいですね。これがどれほど正確なのかはさておき、中身を見ると、その3割減ったGDPの中でなんと約30%が軍事費です。まさに国民総動員です。これは公共事業みたいな感じでGDPを押し上げるので、国民の生活水準という点から見ると、軍事費の押し上げ効果を除けば、実質的には半分以下になったと考えて良さそうです。
 次に人的被害の方ですが、これも当然ですが、ウクライナ側もロシア側も正確な数字を出していませんし、戦時中はプロパガンダ的なものもあるので、本当のところはよくわかりません。まあ、いろんな推計とか、双方の軍の司令官とかの話を総合すると、ウクライナ軍は10万人ぐらい、ロシア軍は15万人ぐらい死亡して、けが人はそれぞれその2倍ずつぐらいと言ったところです。だから、数十万人戦死は言いすぎですね。ちなみに、これは軍の犠牲者数だけです。

●ウクライナのGDP伸び率、前年比マイナス29.1%…侵略で個人消費が大幅に減少
https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230414-OYT1T50248/

●世界軍事費ランキング2022、ウクライナ情勢と日韓逆転
https://www.dlri.co.jp/report/ld/247056.html

●ロシアとウクライナ 双方兵士の死傷者数50万人近くに 米有力紙
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230820/k10014168261000.html

 民間人がどれぐらい巻き込まれたのかですが、ウクライナの方は1万人ちょっとが死んでいるようです。ロシア側はクリミア大橋とか爆破されたりしましたが、なんせ本土は攻撃されてませんから、非常に限定的で、たぶん数十人、多くて数百人ぐらいのオーダーじゃないでしょうか。当初は、プロパガンダ的に、ロシア軍がいかに民間人を殺戮しているかというようなニュースが西側メディアからたくさん流れていましたが、イスラエル軍がたった1ヶ月ちょっとで5000人以上の子供を空爆で殺害したことを考えれば、ウクライナの戦場では、それでも多少なりとも民間人虐殺などあったんでしょうが、かなりルールに則った戦争が行われてきたように思います。女子供もどんどん爆殺するイスラエル軍などと比べたら、じつはプーチンは割と人道に配慮しながら民間人虐殺や、敵対する人物の暗殺をしているように思います。

●ウクライナの民間人1万500人死亡、11万5000の民間施設破壊…侵攻500日
https://www.yomiuri.co.jp/world/20230709-OYT1T50038/

★ここ最近の紛争としては、ガザ地区では、記録的なペースで子供が殺されています。それに比べると、ウクライナの方は微々たるものです。

 一方で、ロシア経済の方はどうかというと、先週のメルマガに、僕の感覚的なことを書いたんですが、ちゃんとデータを見てみると、2022年は経済制裁で輸出がガクッと減って、不況みたいな感じで落ち込んだのですが、割と持ち直していますね。やはり中国が西側陣営の制裁の穴を埋めたな、という感じがします。軽い不況程度のもので、割とピンピンしています。

●ロシアGDP(2023年4-6月期) 前期比プラスの成長を維持
https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=76063

週刊金融日記 第599号 ガザ人道危機を受けてのグローバルサウスの動向と関心が薄れつつあるウクライナ戦争の行方

 さて、開戦当初は、逃げずに立ち上がったゼレンスキー大統領に世界中が拍手喝采しておりました。僕もそのひとりです。国民全員で徹底抗戦する、と。実際に、戒厳令と総動員令が出され18-60歳のウクライナ人男性は出国禁止になるとともに、国外にいるウクライナ人にも帰還命令が出ました。
 かつての日本が「進め一億火の玉だ!」というスローガンを掲げて、多数の日本国民を犬死にさせた歴史から、無謀な戦争は早いところ降伏すべきだった、という結論を導き出し、そういう教育を受けたのか、その考えが正しいと思っている一部の人たちが、ゼレンスキー大統領には批判的でした。しかし、当時、日本のTwitterでも、こういう国民の人命第一で降伏しろみたいなことを言う人たちは、四方八方からめちゃくちゃぶっ叩かれていました。
 たとえば、大阪の橋下先生なんかは、民間人の命が大切なんだから、戦いたくない民間人がまずは逃げられるようにしてあげろよ、などと申しており、やはり右派や保守と呼ばれるような人たちとか、そうでなくても政治分野の言論人なんかにボコられておりました。
 以下が、その代表的なやりとりです。

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