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あれってなんだったの? 山下達郎⑦

【★節Cの解釈と感想③】
 という風に、山下の話の文脈は、喜多川の現事務所のマネージメントへの批判になっています。藤島ジュリー景子にはぐさっと来るでしょう。
 ただそこに、

「先日、男闘呼組の再結成といううれしいニュースがありましたが、同じようにいつか、近い将来、SMAPや嵐、キンプリの再集合も実現するような日が来ることを、竹内まりや共々に願っております」

 という言葉が入るのが山下なりのまとめ方だってことです。

 なお念のため、男闘呼組の解散のきっかけは、メンバーの高橋和也が喜多川の事務所から解雇されたことです(そういうことにされています。実際の理由は分かりません)。
 これもまた意味深な引用だということですね。
 とはいえBBCの放送以降、喜多川の問題はずいぶんな騒ぎになりましたが、そんな騒動に際し、真っ先に同事務所を擁護したのは高橋でした。
 そういう意味の、山下の意味深ということです。

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 いずれにしろ、こう読んでみて分かることは、山下は、一貫して音楽のことしか話題にしていないということです。
 山下は★節Aで、自分のことを「いちタレント」「いち作曲家、楽曲の提供者」と自己紹介していますが、結局、★節Cまでこのスタンスはぶれていないということですね。
 いえ、次の★節D「私はあくまでミュージシャンという立場から、タレントさんたちを応援してい」くし、「彼らの才能を引き出し、良い楽曲を共に作ることこそが私の本分だと思ってやって」きたという締めくくりが、きちんと腑に落ちるスタンスで話されている。
 喜多川やその事務所に対する見方と話題とが、最初から最後まで一貫してる。いわく「自分は音楽家なので、音楽について話します」。
 そういうスタンスなので、もちろん「音楽面でのまずいこと」があるようならそれはそれで話すと。「SMAPからこっちのごたごたはなんだろね」。
 それがこの山下発言〈文章〉の全体像ですね。

 そして、おそらくは「一市民」として、「性加害が本当にあったとしたら、それはもちろん許しがたいこと」と述べているという、この山下発言はそういうものです。
 それは、それぞれ職業は違っても、たぶんほぼ全ての人が、「性加害はいけないことだ」と考えるように、彼も考えているということでしょう。

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 そんなところが、山下発言〈文章〉のおれの読み方です。まあ違う読み方をする人もいるでしょう。いえ、山下本人から否定されることもありえます。「喜多川の事務所の現体制を批判するつもりなどない」と。

 ただまあ、おれみたいに読まない限り、この「不思議な飛び方をするヘンな文章」の解釈はできないと、いち校正者としておれは思います。
 おれも一市民として性加害はいけないと思います。

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 あとまあ★節Dの解釈/感想が残ってますが、これはどうでしょうね、あんま必要ない気がするので、今回は省きましょうか。
 もっとも問題視された「ま、このような私の姿勢をですね、忖度あるいは長いものに巻かれていると、そのように解釈されるのであれば、それでも構いません。きっとそういう方々には私の音楽は不要でしょう」という箇所ですが、この箇所への感想は万人、ひとつしかないですよね。
「言われるまでもない」
 なにも民主主義を持ち出すまでもなく、私たちは日々を自由に、主体的に生きているものです。聞く音楽くらい自分で選べます。



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