佐伯剛

2003年4月 風の旅人を創刊。2015年10月の第50号まで制作発行。 2016年1…

佐伯剛

2003年4月 風の旅人を創刊。2015年10月の第50号まで制作発行。 2016年10月より、「日本の古層」というプロジェクトを開始。 2020年4月から、毎年一冊、「 Sacred world 日本の古層」シリーズを制作発行。

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  • 日本の古層

    日本文化、日本の歴史、日本神話などの底辺に流れるコスモロジーについて

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千年の時空を超えて今に伝わってくる叡智。

春日大社と空海展へ。  空海が関わって制作されたとされる神護寺の曼陀羅が、修復作業を経て公開。  西洋絵画だと、ヒエロニムス・ボスが、超精密な描写を行なっているが、それよりも700年も前に日本でつくられた超巨大な曼陀羅の中の超精密な描写には、驚くばかり。  絵画にしても仏像にしても書にしても、人間の手技によるものが圧倒的な力を帯びているのだが、果たして現代作られているもので、千年の時を超えて後世に伝えられるものが、どれだけあるのだろうか?  面白かったのは、最澄の直筆と空海の

    • 偶然性の仕打ちを受容する生存の美学。

      明治時代になって、浮世絵などの日本文化が、二束三文の値段で海外に持ち去られたように、日本人は、日本にあるものの価値を知らず、欧米のものに価値があると思い込んで、高い値段を払ってまで手にいれてきた。そして、欧米から褒めてもらって初めて、自分のところにあったものの価値に気づく。  そうしたマインドを謙虚と言うこともできるが、卑屈でもありえる。お墨付きマークのついた強いもの(権威)に取り入ったり、へつらったりして、自分がその仲間入りをさせてもらった途端、その外にいるものを見下して、

      • ピンホール写真の写真展について

        来年の初めに、東京のオリンパス関連のOMシステムギャラリーで写真展を開催することになったのだけれど、これまでの人生で、自分の写真の写真展は初めてのこと。  本はたくさん作ってきたのでイメージを掴みやすいのだが、写真展は、プリントサイズとか、額装のこととか、経験がないのでイメージできないことが多い。  普通の写真展のように、だいたいのサイズが決まっていて、普通の額装にして壁に飾るだけなら、どの写真を展示するか決めていけばすむのだけれど、私の場合は、ピンホール写真なので、普通の展

        • 北斎や広重が描いた小野の滝をピンホールカメラで撮影した。

          戦国時代、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康に仕えて重用され、肥後国の細川家の礎となった細川幽斎は、一流の文化人で優れた歌人でもあった。  その彼が、豊臣秀吉の小田原城攻めに参陣し、戦勝のあと、中山道経由で京へ戻る時に、木曽の寝覚の床の近くにある小野の滝のことについて、このように書き残している。 「木曽路小野の瀧といふは、布引、箕面などにもをさをさおとりやはする。是程の物の、此国の歌枕にはいかにもらしたるにや」  木曽路の小野の滝は、神戸の布引の滝や、大阪の箕面の滝に全く劣らないの

        千年の時空を超えて今に伝わってくる叡智。

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        記事

          闇の深さと、色相の繊細かつ豊かさ。

          嵐山から嵯峨野は、観光客で溢れかえっているけれど、清涼寺あたりまで来ると、それほどでもない。  私が、京都に移住することになったきっかけの一つが、11年前、風の旅人の第47号で、染色家の志村ふくみさんのロングインタビューのために、この清涼寺のすぐ近くの志村さんのアトリエに来たことだった。  早めにやってきて、その待ち時間のあいだ、清涼寺で、ぼんやり時間を過ごしていた。  当時、志村さんは90歳だったけれど、ものすごく聡明で、話している内容をそのまま原稿にしても通用するほどの論

          闇の深さと、色相の繊細かつ豊かさ。

          レトロでアナログだけれど新しい世界!?

          これまで世代論について、あまり深く考えたことがなかった。  交遊関係にしても、年代で分けて意識することもなかったのだが、近年、Z世代という生まれた時からインターネットが当たり前だった世代の社会的影響力が、次第に増しているのだという。  日本は若者人口が減少気味だが、発展途上国とされていた国々ではZ世代の人口がとても多い。そして、アメリカでさえ、すでに総消費の40%をZ世代が占めていて、彼らが社会的に重要な地位を占めていくようになる今後、その比率がさらに増えていく見通しだという

          レトロでアナログだけれど新しい世界!?

          縄文人には見えていて、現代人には見えていないもの。

          先ほど書いたことの補足だけれど、今回、北海道でもオーロラが見えた。  私は、自分でも縄文土器を作り続けていた時期があったのだが、縄文土器の文様は、オーロラのようなプラズマ現象ではないかという気がしていた。      縄文人は、実際にオーロラ現象をよく見ていたのではないかと思うのだ。  というのは、縄文遺跡は、東北から北海道にかけて多い。そして、貝塚の貝の種類や貝塚のある場所から、当時の海岸線が現在よりかなり内側で、海水温も高かったことがわかっている。  つまり、当時は、現在

          縄文人には見えていて、現代人には見えていないもの。

          人間の目には見えない宇宙の真理

           太陽フレアの大爆発によって、低緯度でもオーロラが見られたというニュースが、各地から届いている。  その場にいた人たちがスマホで撮影したオーロラを、世界中のどこでも見られるわけで、地球上に起きていることを人類全員が共有化できる時代になっていることを、つくづくと感じる。  素人が撮ったものでも、オーロラの映像は美しい。しかし、どこか不気味でもある。太陽活動が、ダイレクトに地球に影響を与えていることの証明でもあるからだ。  私も含めて、私の周りでも、この期間、体調のすぐれない人が

          人間の目には見えない宇宙の真理

          情報として表に出てこない日本のリアリティ

          日本という国は、いくら都市化が進んでいるといっても、国土の70%以上が山岳地帯であり、島国であるがゆえに、少し移動するだけで大海原を見ることができる。  こうした自然風土の国でありながら、山も海も見えない大都市のなかだけで日々暮らしていると、現実感覚が狂ってくる。   テレビやインターネットから送り届けられる情報を現実世界だと思ってしまうと、その情報をもとに自分の行動を決めていくことなるが、テレビやインターネットから漏れている情報も膨大にある。  テレビやインターネットの影響

          情報として表に出てこない日本のリアリティ

          今年の木村伊兵衛賞作品展の哀しいまでの空疎さ。

           昨日、池袋の新文芸坐で、小栗康平監督の「眠る男」と 「伽倻子のために」の デジタル4Kレストア版を観る前に、銀座に立ち寄って、木村伊兵衛英賞の受賞展を観てきた。  そして、会場に入るなり、その空疎な内容に呆然。ポスターのような無機質な写真が掲示されていて、モニターに会場内を写しているような画像が流されていたから、ここは展示の入り口のようなもので、部屋の向こうに、展示会場があるのかと本気で思った。  世間の関心はわからないが、写真の関係者なら木村伊兵衛英賞のことは少し関心事で

          今年の木村伊兵衛賞作品展の哀しいまでの空疎さ。

          日本人の潜在的な心の在り方と海人とのつながり。

          古代に対する関心の持ち方は人それぞれだが、私は、卑弥呼のクニがどこにあったかということよりも、日本人の潜在的な心の在り方に関心がある。  日本の縄文時代は10000年も続いており、明らかに大陸の影響を受けたと思われる弥生時代以降の歴史は、その4分の1でしかない。だから、縄文時代の日本人の心が完全に消え去ってしまったとは思えず、それが、どのような形で今日まで引き継がれてきたのかを辿りたいという思いがあって、私は古代世界のフィールドワークに没頭している。  そして、その鍵を握るの

          日本人の潜在的な心の在り方と海人とのつながり。

          口先だけの分析なら、もはやAIの方が上手にできる。

          昨夜の地震の状況を知ろうと思って、朝、テレビをつけたら、屋台を引きながら無料でハーブティーをふるまい、薬に関する相談などにのっている若い薬剤師が紹介されていた。  彼がこういうことをするようになったきっかけは、病院の待合室で、患者さんが隣の人に対しては気軽に自分の症状や心配事について話をしているのに、いざ医師や薬剤師の前に来ると、素直に心の中を打ち明けてくれないことがあって、自分と患者さんのあいだにある壁のようなものを取り払う必要を強く感じたからだと言う。  彼は、壁の外側か

          口先だけの分析なら、もはやAIの方が上手にできる。

          地震のサイクルと、日本社会のサイクル。

          先ほど、愛媛、高知で震度6弱の地震。これは本当に怖い。南海トラフの前の、不気味な足音のような気がしてならない。  台湾から宮崎、そして四国と、最近、立て続けに、中央構造線の南側の地震が続いている。  1995年の神戸での大地震以来、北海道、新潟、鳥取、東北、熊本、そして能登と、ほぼ5年間隔で、中央構造線の北側で大きな地震が発生してきた。  そのあいだ、大きな地震が発生していなかったのは、東海、近畿の南部、そして四国と、中央構造線の南側で、南海トラフ大地震が発生した場合に大きな

          地震のサイクルと、日本社会のサイクル。

          女性天皇が続いた時代。

          愛子さま、明治神宮に初参拝。  この方は、なんだか巫女のようなオーラを漂わせている。  現在、皇位継承順位は、第一位が、秋篠宮文仁親王で、第2位が、文仁親王の長男の悠仁親王。  これは皇統に属する男系男子にのみ皇位継承権を認めるという皇室典範のためで、小泉政権の時に、女性天皇の可能性が検討されたのに、皇室典範改正に慎重な安倍晋三が総理大臣になってから、改正の動きは止まってしまった。  平成の天皇は、男性だけれど、古代の巫のようだと私は思っていた。  私の感覚だが、秋篠宮家の人

          女性天皇が続いた時代。

          自分の計画通りに作るのか、何かに導かれるようにして作るのか。

          レヴィ=ストロースは、生命原理は、エンジニアリング(設計思想)ではなくブリコラージュで成り立っていると述べた。  毎月、東京と京都で交互に行っているワークショップセミナーの冒頭で、このことについて詳しく説明してから本題に入ることにしている。  ウィキペディアなどで「ブリコラージュ」を調べると、「寄せ集め」とか中途半端な説明になってしまっているので、もう少し具体的な説明が必要だ。  たとえば石工が作る石垣とか、宮大工が作る建築物、工業製品だと、ダイソンが作った掃除機などが、ブリ

          自分の計画通りに作るのか、何かに導かれるようにして作るのか。

          古代、聖から邪に転換した竜蛇神

           数日前に、近畿の真ん中の縦長の盆地の北と南の端にあたる吉野と京都を結ぶ丹生の女神のことについて書いたが、今度は、その京都を軸にした東と西の関係について考えてみたい。  吉野三山に鎮座し、蛇神の天津羽羽神を祀る波宝神社の真北に位置する上賀茂神社は、京都を代表する二つの聖山、比叡山と愛宕山を結ぶ東西の同緯度ライン上に鎮座している。  この東西ラインは、東に行けば近江富士の三上山で、西に行けば亀岡の出雲大神宮にいたる。  不思議なことに、この東西ラインには、「御影」という名が深く

          古代、聖から邪に転換した竜蛇神