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【プロ野球】低反発球でロースコアの展開多く、クローザーの疲弊目立つ・・・臨機応変に複数投手の起用が必要か

1.はじめに

 4月24日はプロ野球6試合が予定されていたが、雨のため2試合が中止となった。開催された4試合の中で、2試合が9回にクローザーの失点により逃げ切りに失敗した。
 DeNAは阪神を相手に3-1とリードして、9回に開幕から5試合無失点の好投を続けていた山崎康投手が登板。しかし、先頭打者から3連打を許して無死満塁のピンチを迎えると、続く打者に死球を与えたところで降板。代わった投手も阪神打線の勢いを止められず、この回に4点を失い5-3で逆転負けを喫した。
 オリックスは、先発のエスピノーザ投手が7回を無失点に抑え、8回に今季初登板の宇田川投手も得点を許さず、3-0と3点リードの状況で9回に開幕から8試合無失点の平野投手がマウンドに。だが、先頭の中村選手にソロ本塁打を許すと、その後も長打2本を浴びるなど打者8人に対して4安打された。結局3失点し同点に追いつかれ、延長戦に入って味方が得点を奪いサヨナラ勝ちを収め、敗戦は免れたが、9回に3点のリードを逃げきれず非常に苦しい戦いとなった。

2.各球団のクローザーの成績(成績・データは全て4月24日現在)

*()内は左から今季試合数・今季3点差以内の試合数・今季試合数における3点差以内の試合の割合・今季セーブ数。

2.(A)セ・リーグ
(64試合 3点差以内46試合 72%  37S)

●阪神
(23試合 3点差以内17試合 74%  7S)
ゲラ 12試合0勝1敗4S 防0.75 12回1失点
岩崎 10試合1勝0敗3S 防0.00 10回0失点

●広島
(20試合 3点差以内12試合 60%  5S)
栗林 9試合0勝0敗5S 防0.00 8回2/3 0失点

●DeNA
(21試合 3点差以内14試合 67%  7S)
森原  8試合0勝0敗4S 防2.25 8回2失点
山崎康 6試合0勝1敗3S 防5.40 5回3失点

●巨人
(22試合 3点差以内16試合 73%  5S)
大勢 8試合0勝1敗5S 防1.29 7回1失点

●ヤクルト
(20試合 3点差以内16試合 80%  5S)
清水 9試合0勝3敗2S 防7.88 8回7失点
石山 7試合0勝0敗1S 防1.35 6回2/3 1失点
木澤 9試合1勝1敗1S 防2.00 9回2失点
  8試合0勝0敗1S 防2.16 8回1/3 2失点

●D(22試合 3点差以内17試合 77%  8S)
マル 11試合0勝0敗8S 防0.00 11回0失点
*マルはマルティネス。

2.(B)パ・リーグ
(63試合  3点差以内48試合  76%  33S)

●オリックス
(23試合 3点差以内19試合 83%  6S)
平野 9試合1勝0敗6S 防3.24 8回1/3 3失点

●ロッテ
(21試合 3点差以内16試合 76%  5S)
横山  7試合1勝1敗2S 防2.84 6回1/3 2失点
鈴木昭 9試合0勝0敗1S 防0.00 9回0失点
益田  3試合0勝1敗1S 防6.00 3回3失点
国吉  7試合1勝0敗1S 防2.25 8回2失点

●ソフトバンク
(21試合 3点差以内16試合 76%  8S)
オスナ 11試合0勝0敗8S 防4.29 11回5失点

●楽天
(21試合 3点差以内14試合 67%  4S)
則本 7試合1勝0敗3S 防0.00 7回0失点
西垣 8試合1勝2敗1S 防3.68 7回1/3 3失点

●西武
(21試合 3点差以内16試合 76%  5S)
アブ 10試合0勝1敗5S 防0.00 9回1/3 0失点
*アブはアブレイユ。

●日本ハム
(19試合 3点差以内15試合 79%  5S)
田中 9試合1勝0敗4S 防1.00 9回2失点
杉浦 7試合0勝0敗1S 防0.00 7回0失点


上記のデータを球団毎にまとめると、

*左から、チーム名・今季試合数・今季3点差以内の試合数・今季試合数における3点差以内の試合の割合(2023年・2022年・2021年の4月終了時)。

セ 64試合 46試合 72%(74%・64%・63%)
T
 23試合 17試合 74%(67%・67%・52%)
C  20試合 12試合 60%(88%・59%・73%)
DB  21試合 14試合 67%(70%・52%・61%)
G  22試合 16試合 73%(60%・71%・67%)
S  20試合 16試合 80%(76%・56%・75%)
D  22試合 17試合 77%(83%・81%・50%)

63試合 48試合 76%(68%・65%・66%)
B
 23試合 19試合 83%(63%・66%・73%)
M  21試合 16試合 76%(71%・65%・61%)
H  21試合 16試合 76%(63%・67%・77%)
E  21試合 14試合  67%(70%・74%・59%)
L  21試合 16試合 76%(67%・55%・66%)
F  19試合 15試合 79%(72%・68%・62%)

 3点差以内の試合数と割合を上部にまとめたが、ここまで僅差の試合を戦っている割合が、最も多いのがオリックス、低いのが広島で、それぞれ83%と60%という数字だった。また、直近3年間の4月終了時と、今季ここまでの3点差以内の試合割合を各チームごとに比較したが、半数以上の7球団が今季ここまでの3点差以内の試合割合が最も高くなっている。
 これだけ本塁打が放たれず得点を奪えなければ、当然僅差の試合も増えてくるため、基本的に3点以内のリードがあれば、勝ちパターンのリリーファーからクローザーへの継投となり、登板数も必然的に多くなる。

3.「4月の登板過多」の影響

 今季はここまでオリックス(83%)とヤクルト(80%)が、3点差以内の試合割合が80%を超えているが、直近3年間の4月終了時で同様に80%を超えていたのは3度あり、昨季の広島(88%)と中日(83%)に加えて2022年の中日(81%)。開幕直後に接戦が非常に多かった、この3つのそれぞれのチームのリリーファーに、5月以降にどのような状態に陥ったか説明したい。
 2022年の中日は4月終了時で26試合を消化し、21試合が3点差以内のゲームだった。13勝のうち12勝が3点差以内のもので、勝ちパターンの中心となったのは、8ホールドのロドリゲス投手と7セーブのマルティネス投手の両外国人投手。だが、中盤から終盤につなぐ役割として、4月中旬から7試合に登板して無失点だった祖父江投手は5月は防御率9点台に、4月10試合に登板の田島投手は6月に登録抹消され、以降は1軍での登板はなかった。
 昨年の中日は4月終了時で23試合を消化し、19試合が3点差以内のゲーム。昨年と同様に、祖父江投手と田島投手に加え勝野投手もチーム試合数の半分以上となる12試合に登板。4月の防御率が0.79と素晴らしかった祖父江投手は、6月以降は6.10へ急落。田島投手は登録抹消を繰り返し、5月以降の登板は20試合と減速して防御率5.12と悪化。勝野投手は5月まで0点台の防御率で粘ったものの、7月は5点台、8月も4点台の防御率となり、開幕直後と同様の投球をシーズンで見せる事はできなかった。
 昨年の広島は4月終了時で24試合を消化し、3点差以内のゲームは21試合。実に、チーム試合数の88%が3点差以内で決着していた。この際に登板機会が多く、5月以降に本来の投球ができなくなったのは、12試合に登板の栗林投手、10試合に登板のケムナ投手、9試合に登板の松本投手と戸根投手の4名。栗林投手は7セーブを獲得したが、登板するごとに調子を下げて5試合で失点するなど、5月1日に登録抹消。ケムナ投手は4月の防御率が1.64と素晴らしかったが、5月以降は本来の投球ができずに防御率も5.17と悪化。松本投手も4月の防御率が1.13と目立っていたが、5月は防御率15.43と跳ね上がり、5月中旬に抹消されると以降の1軍登板はなかった。戸根投手も4月は8イニングで被安打は3本のみと圧巻の投球を披露したが、5月以降は防御率6.08と一気にパフォーマンスを落としてしまった。
 以上のように、4月中に登板過多となったリリーファーは、5月以降に一気にパフォーマンスが落ちる例が多くなっている。比較的、身体の強い外国人投手よりも、シーズンを通して戦い慣れていない日本人の若い投手が、開幕直後に頑張り過ぎてパフォーマンスの低下や故障で1軍を離れてしまう事が多い。チームから離脱するのは投手にとって苦しい事だが、チームにとっても開幕直後に調子の良かったリリーファーを手放す事になり、本来の継投ができなくなるため、4月中の偏った投手の起用はデメリットでしかない。

4.最後に

 前々章のクローザーの登板数を参考にすると、阪神とDeNAは2投手を状況に応じて、ヤクルトとロッテはクローザーの固定に苦しんでおり、数名の投手が試されている。これだけ僅差の試合が多くなってきており、クローザーを1人の投手が開幕直後に担うのは、5月以降のパフォーマンスに影響するのは必至だ。
 ボールの反発係数を一般に公開せず、選手も知らされていない。選手は登板の指示があれば従うしかない。各球団はリリーファーを守るべく、勝ちパターンの投手の枠を増やすか、開幕直後は休養制で起用するなど、何か策をたてないと選手が犠牲となってしまう。まずは、シーズン通して同じボールを使用するか、変える際は事前に選手やファンに向けて公表するなど、NPB側はやるべき事があるのは間違いない。


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