見出し画像

【大学野球】2回戦 明大4ー3慶大(5月19日 明大2勝)を考察

1.はじめに

 5月19日(日曜)に行われた、明大ー慶大(2回戦)の試合について、見どころを踏まえて印象的な場面や選手について掘り下げてみたい。

2.試合の見どころ

【表1】両チームのスタメン

 両チームとも今カードが始まる前までに、それぞれ3カードを消化。慶大は、立大と法大に1敗を喫したが、勝ち点のかかる試合に両試合とも1点差の僅差で粘り勝ち、全てのカードで勝ち点を獲得している。一方の明大は、東大と立大から勝ち点を獲得したが、早大に対して3戦目の延長戦までもつれた試合を落とし、現在の勝ち点は2。

 今カードが組まれている第6週に登場する4チームは、ここまでの成績から優勝を狙えるため、このカードでの勝ち点を獲得するかしないかの差は非常に大きい。そのような緊張感のある中で行われた前日の1回戦は明大が終盤に慶大を突き放して5-0で先勝。先発した高須投手(3年・静岡高)が大一番で力を発揮し、5回無失点の好投。慶大は打線が4安打に抑えられ、無得点に終わった。明大はこのカードで勝ち点を落とすと、優勝の可能性が完全になくなる中で、大事な初戦を良い形で勝つことができた。

2.(A)先発投手は明大・毛利投手、慶大・渡辺和投手の両サウスポー

 この日の先発は、明大が中4日で毛利投手(3年・福岡大大濠高)を起用。初先発となった前回の立大戦は5回1失点の好投で、リーグ戦初勝利をマークした。状態が良く55球の球数だったが、久々に長いイニングを投球した後の中4日の登板がどのように影響するか。慶大は今季3度目の先発となる渡辺和投手(2年・高松商)。これまで先発として5イニングを投げきれていない中、大事な一戦で期待に応えられるかに注目。持ち味の粘り強い投球で、リーグ戦初勝利を狙いたい。

2.(B)明大・宗山選手はこの日も欠場

 打線は、明大が今秋のドラフト上位候補で主将の宗山選手(4年・広陵高)をこの日も欠場させ、3番に小島大河選手(3年・東海大相模高)を起用。宗山選手が守っていたショートには光弘選手(2年・履正社高)が入った。対する慶大は、初スタメンとなる福井直選手(1年・慶應義塾高)を6番で抜擢。福井直選手含めて3名の1年生をスタメンに入れ、前日は無得点に終わった打線の起爆剤となるか。

3.序盤から攻め続けた明大が連勝で勝ち点獲得

【表2】本日のスコアボード
【表3】ボックススコア(明大)
【表4】ボックススコア(慶大)

 試合序盤から攻め続けた明大が、最終回のピンチを守り切り、このカードを連勝で勝ち点を3に伸ばした。試合前半は、明大は初回から毎回のように得点圏へ走者を進めていたが得点できず、一方の慶大はチャンスを作れないほど明大の毛利投手に抑えられていた。明大は重い展開だったが、6回に内野ゴロの間に1点を先制し、犠飛で追加点。その裏に慶大は、代わった大川投手(3年・常総学院高)から水鳥選手(4年・慶應義塾高)の適時打と相手バッテリーのミスで同点に。追いつかれた明大は、7回に内野ゴロの間に勝ち越すと、9回にも1点を追加し、最終回の無死満塁のピンチを1点で凌いで、1点差で逃げ切った。

3.(A)両チームにとって負けられない試合のため、序盤から重い展開に

 試合開始から両チームの選手の動きが硬く、特に慶大の守備は普段とは程遠く、隙を突かれて走者を進塁させてしまう場面が目立った。通常ならば、守備のミスで走者を進めてしまうと、投手を含めて更に動きが悪くなるものだが、慶大の守備はピンチになると引き締まる。一方の明大は、慶大の守備の一瞬の隙を見逃さず、貪欲に一つ先の塁へ走者を進める。しかし、それが何度も続いて得点に結びつかないと、空気も変わってくる。私の個人的な印象だが、以前から明大は「相手に少しでも隙があれば、逃さずに徹底的に追い詰める」という相手にとっては嫌らしい野球をしてくる。普段の練習から集中して周囲を見渡す習慣ができているのだろう。一方の慶大は、「隙を突くんだったらお好きにどうぞ。私たちは私たちのペースでやりますから。」のイメージが強く、相手が自分たちの野球をしてきても、全く動じない。そんな両チームの印象が、この展開にマッチしてきた。とにかく前半戦は、5回まで両チーム無得点の展開だったが、お互いの選手が慎重になり過ぎてリズムが悪く、イニングが進まない。それだけこの試合は、両チームにとって大きいものである事を感じた。

3.(B)前半のピンチを毎回抑えてきた慶大・渡辺和投手の粘り強さは非凡

 この大事な試合で、慶大・渡辺和投手は味方の守備が崩れても、5イニングを無失点に抑えた。リーグ戦で初めて6回のマウンドに向かい、2点を失ったが、序盤の粘り強い投球は見事だった。アウトカウントを稼げる場面で、野手の失策で出塁があったり、緩慢なプレーで先の塁へ進塁されたりしても、集中力が落ちなかった。2失点の内容も適時打を打たれた訳ではなく、走者がいなければアウトを稼げたものだった。この日は5つの四球を与えたが、全て塁を埋めるもので、四球によって走者が生還する場面はなかった。大事な一戦で、甘い球を投げる事は許されることではなく、四球は嫌がられるケースが多いが、この試合の四球は危機回避能力の高さを感じられた。しっかり計算されたもので、四球の後の打者を本来の投球で打ち取る賢い投球は非常に素晴らしかった。圧倒的なストレートの威力がある投手ではないが、詰将棋のような見ていて楽しい投球だった。

3.(C)宗山選手の代わりに中軸に入っている小島大河選手の打撃が急成長

 宗山選手が欠場を続けているが、それまで務めていた3番打者に小島大河選手が入っている。開幕週の東大戦2試合で、計5安打9打点と大爆発していた。その後の試合でも、勝負強さは変わらず、相手投手の甘い球は見逃さないで、コースに投球された方向へ柔軟に打ち返す技術が非常に成長した。打席ではホームベース側に立ち、制球力に乏しい投手は外角中心の投球をせざる得なくなる。緩い投球に対しても、強引に打ちに行かず体重を残して自分のスイングができる。左投手が相手でもバランスが崩れる事がなく、本来のスイングができている。この日は5打席で無安打だったが、1四球1死球1犠飛と3番打者として十分な結果を残している。打ち取られた打席でも、外野まで質の良い打球を放っていた。四球で出塁の際に、捕手の後逸を見逃さずに2塁まで進塁した走塁も野球選手として視野の広さを感じた。正直、今年ドラフト対象でも、まだ技術的に伸びていくのは間違いなく、指名されてもおかしくない打者にまで成長している。私がスカウトだったら推す材料が十分で、チームに欲しい選手だ。
 残り1カードで、リーグ記録のシーズン最多打点まで7打点。力のある法大投手陣相手に追いつくには難しい数字だが、プレッシャーに強い今季の打撃を見ていると、この記録に近づく活躍が期待できる。

3.(D)慶大は経験の浅いリリーフ陣の弱さが致命的に

 慶大打線は前日に続いて2桁の10三振を喫した。しかし、中盤に少ないチャンスを得点につなげ、僅差で終盤を迎えて逆転する機会を狙っていた。だが、先発の渡辺和投手が6イニングを投げて降板すると、その後に登板した投手との力の差は大きく、案の定明大に追いつく前に突き放されてしまった。経験を積まないと成長するのは難しいが、残る早大戦でも先発投手が長いイニングを抑える事ができないと、モチベーションが高くなっている相手を上回るのは難しそうだ。

3.(E)グランドの中にいる人が全員ネズミ色

 試合展開とは全く関係ないが、明大は今季からグレーのユニフォームを兼用して着用しており、慶大の見慣れたグレーの選手もいる中、新鮮な状況だった。明大のユニフォームの方が若干明るい色で、観戦しづらい事はなかった。また、これに加えて審判員のズボンもグレーだったため、動く人はみんなグレー。ネズミ色に染まった神宮球場だった。

3.(F)遠くからでも分かりやすかった審判員・青木さんのジャッジ

 この試合で1塁塁審を務めていた青木さん。20年以上経つが、私がプレーしていた時も審判員を務められており、正確なジャッジで大変お世話になった。この日も、一塁ベースから離れた場所でも、大きく鋭い動きのジャッジは非常に分かりやすかった。体型も変わらず、動きも変わらず、学生のために審判員を続けている事は本当に素晴らしい事だ。まだまだこれからも学生のために続けてもらいたい気持ちが強い。


参照:【表1】一球速報.com

【表2】〜【表4】東京六大学野球連盟HP

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?