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東京と桜

なかなか咲かない春でした。

東京の桜は、今年も早いと言われていましたが、統計を取り始めて以来、最も遅い開花でした。東京ではすでに落ちた花びらさえ跡形もなく消えてしまいましたが(子供の頃から、あの花びらたちはどこに行ってしまったのだろうと毎年思っています)桜前線は東北地方から札幌までぐんぐん北上しているようです。いいな、桜をまだ愛でることができて。
桜の花びらが落ちる速度は、秒速5センチメートルだそうです(そう、あの映画です)。花びらに手を伸ばしてみましたが、今年もつかむことはできませんでした。いつまでたっても桜は儚いものです。

東京から桜が消えた頃、とても不思議なことがありました。本当に久しぶりに会った友人が、帰りしなに自分がまさに買おうとしていた本をプレゼントしてくれました。導かれた気がしました。そうしなさいと、言われている気がしました。その本は中村森さんの本で「帆を揚げる 会いたい人に会いにいくそれはほとんど生きる決意だ」という文章で始まります。会いた人に会いにいくとは、自分の望む方向へ進むために必要な行動を起こすこと、ひいては生きることなんだろうなって思いました。そして、
声は、哀しい言葉を発するためにあるのではなく、歌うためにあるのだと思いました。
口は、閉ざすためにあるのではなく、語るためにあるのだと思いました。
目は、遮るためにあるのではなく、光を見い出すためにあるのだと思いました。
手は、ぶつためにあるのではなく、繫ぐためにあるのだと思いました。
心は、失ったものを悔やむためにあるのではなく、愛するためにあるのだと思いました。

あの方が、今日も歌えていますように。
あの方が、愛で満ちていますように。
あの方が、光を信じてシャッターを切れていますように。
あの方が、あの方が…願わずにはいられません。そして、自分もそうあれたらいい。

あっという間に春も終わってしまいそう。少しづつ、帆を揚げます。


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