2024/05/14 『彼女に関する十二章』

火曜日 晴れ

下唇の内側の顎に近い方、あまり意識しないポケットのような部分に口内炎がぽちっとひとつあるのを見つけた。
まあ、そんな場所だから余程しみるものを食べなければ気にならない。
笛の練習にも無問題。
と思っていたら夕方には増殖しているではないの。
悪化しないといいけど。

中島京子『彼女に関する十二章』を今回も図書館で借りた大活字本で読んだ。
読書に集中するためには、周りの環境だけでなく読みやすい活字の大きさが必要だとよくわかった。

主人公は著者と同世代の設定で書かれているようで、つまりはわたしとほぼ同時代の人、共感できる固有名詞が散りばめられている。
中原中也、好きでよく読んだな。
文化、風俗だけでなく、人生のステージごとの悩みも共感できることが多い。

そしてこの本でも登場人物が皆魅力的で、中でも後半登場する片瀬氏の信念には大いに考えさせられた。
ボランティアならぬ「価値と価値の交換」という話題の中の、このセリフがその骨頂と思うので引いておく。

困ったもんで、一方的にもらうのも息苦しいけど、一方的に与えるばっかりってのは、聖人でもない限り、さらに息苦しい。僕には奉仕だの犠牲だのという高邁な精神が欠けてる。善人じゃないんです。

「第十一章 家庭とは何か」より 

本作と双子のような関係の伊藤整『女性に関する十二章』は読んだことがないけど、酒井順子のあとがきによると、章立ても同じになっているというから、オマージュという側面もあるのだろうか。
ひんぱんに引用されるあちらの本も、これは読まないわけにいかない。

いろんな問題提起がされているこの本で特に、人は一人では生きていかれないという強いメッセージが感じられた。