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下駄を履いた天狗

一本歯の下駄

天狗は一本歯の下駄を履いています。
「ただでさえ下駄なんて歩きにくそうなのに、一本歯でバランスもとりにくかろうなぁ」
くらいに思ってました。
わざわざ歩きにくい履き物で山道を飛び回って、
「俺はこんだけ身体能力が高いのだ!」
と、「テング」になって鼻が伸びてるんじゃなかろうか、と思っていました。
 

ところが、一本歯の下駄というのは、山道では普通の下駄よりかえって都合がいいそうです。
山伏や修行僧も履いていたそうな。


比喩としての天狗

比喩として、「天狗になる」というと、調子に乗るとか、鼻にかけるとか、慢心するという意味があります。

そういえばピノキオも調子に乗って(嘘をついて)鼻が伸びてたなぁ。

顔の真ん中に位置するパーツ、鼻というのは古今東西で一番「目にかかる」ところだったのでしょうなぁ。


比喩としての下駄

下駄もまた、比喩として「下駄を履かせる」「下駄を履く」と使われます。
実際よりも高く見える、つまり、例えばテストの点数に特定の人だけ最初から加点しておいたり、誤魔化して実際より高く評価されようとしたり、といったニュアンスでも多いですし、
必ずしも悪い意味だけではなく、勝負が面白くなるように、一方が不利にならないように「ハンディキャップ」としての意味で使われる場合もあります。しかしこれも、褒めるときには使わないですね。


塾講師のアルバイトで気づいたこと

もう20年も前(え?!そんなに経つの?!)、塾講師のアルバイトをしました。
地域では有名な進学塾で、
◯◯高校 〇〇人合格!
といった張り紙やチラシが賑やかな塾でした。僕もそこの卒業生でした。
 
生徒のときには気づきませんでしたが、その塾では(全てとは言わないが傾向として)、経験豊富だったり、実績が大きかったりする講師が成績上位のクラスを担当していました。

アルバイトとして入った大学生の僕たちは、そうではないクラスの授業を受け持つことが多かったです。
 
上位クラスではどんどん発展問題にも進んで点数を競い合っているのに対して、そうではないクラスではどうすれば不合格にならないか、宿題をこなせるか、という雰囲気が対照的でした。

別にその是非については、ここで話すつもりはないですし、否定するつもりも全くありませんが、
その後、それらを含めて徐々に、個人の感覚として、
「自分は恵まれた環境の中にいたのだ」
と、気付かされました。

そもそも塾に通わせてもらっているという時点で恵まれた環境なのに、その中にもなお、成績を上げるという点ではさらに恵まれた環境があって、
その環境も実力のうち、といえばそれまでかもしれませんが、
そこで「成績優秀者」として名前が上がることをどこかで鼻にかけていた自分に気づきました。
進学校に合格したのは自分が精一杯勉強したからだ≒他の人はそうではない
と、どこかで思っていた自分に気づきました。

下駄を履いた天狗

自分が、下駄を履かせてもらって、それに気づかず天狗になっていたような気持ち。
 
誤解しないで欲しいのは、それは自分を卑下するつもりではなく、なんだか「それってフェアじゃないな」と、思うようになりました。

もちろん、完全にイーブン、五分と五分なんてことはこの世にはあり得ないのだけど、
マラソン大会に例えると、
一方は前日からコースの下見をし、スタート地点付近のホテルで1晩休んでからスタートを迎え、
一方は仕事終わりに駆け込んだ夜行バスでゆっくり眠れないままギリギリスタート地点に辿り着いたような。

早くゴールしたことは立派だしすごいんだけど、
「じゃあ夜行バスの人たちが同じホテルに泊まってたらどうなってたの?」
って考えると…と、いうような。
上手く言えないけど。有利不利が大きいんだな、と。


スタート地点に立てること

それでも、たとえ徹夜明けでもスタート地点に立てるのならまだしも。
 
スタート地点に立てるということさえもまた、とても恵まれたことになってしまっているのが現状だと思います。

それぞれ事情は違うわけですから、全員に最新のランニングシューズ、全員に専任のコーチ、全員1週間前に現地入りして、全員トレーナーに身体をほぐしてもらって…なんてことは、マラソン大会ではあり得ないわけです。

そしてそれが本当に「フェア」なのかどうかも疑わしい。否、フェアかどうか、とはまた違うでしょう。

でも、スタート地点に立つことくらいは、全員が「当たり前」にならないと、やっぱりそれはおかしいんです。

徹夜明けだとしても、専属トレーナーがいたとしても、スタートラインにすら立てない人にとったら、負けることさえできない。

言いたいことは勝ち負けじゃないんだけどね。

でも、まだまだ、今の世の中で天狗になってる人たちの多くは、相当な下駄を履いてるんだって気づいてないんじゃないかな、と。

そんなことを考えるのであるフィ



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